ゴールドマイクロシャント(GMS)
素材:医療用24金。金が眼内で良好に許容されるという知見に基づく
構造:2枚の長方形の融合リーフレット。近位端に100μmの穴60個と300μmの穴1個、遠位端に110μmの穴117個のグリッド
手技:円蓋部基底結膜フラップ→角膜輪部2〜3mm後方に強膜全層切開→脈絡膜上腔露出→前房内トンネル作成→デバイス挿入
改良版GMS+:フィンの位置変更とチャネルからポストへの設計変更で流出エリアを拡大

脈絡膜上腔デバイス(Suprachoroidal Devices)は、ぶどう膜強膜流出路(uveoscleral outflow pathway)を利用して前房水を脈絡膜上腔に誘導し、眼圧を下降させるMIGSデバイス群である1)4)。
ぶどう膜強膜流出路は1965年にAnders Billが動物実験で発見した。房水が毛様体・虹彩根部を横切り脈絡膜上腔へ流出する経路である。プロスタグランジン関連薬はこの経路の流出を増加させることで眼圧を下降させる。
1905年にHeineが難治性緑内障に対する毛様体解離裂隙(cyclodialysis cleft)の外科的作成を報告したが、術後低眼圧や裂隙閉鎖後の急激な眼圧上昇のため広く普及しなかった。デバイス設計と生体適合性の進歩により、制御された持続的房水流出を目指す新しいデバイスが開発されている。
MIGSの分類において脈絡膜上腔手術(suprachoroidal procedures)は線維柱帯手術・結膜下濾過デバイスと並ぶ独立カテゴリーとして位置づけられる1)3)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象疾患 | 軽度〜中等度開放隅角緑内障 |
| 流出路標的 | ぶどう膜強膜流出路 |
| アプローチ | 眼外・眼内 |
ぶどう膜強膜流出路を標的とするMIGSデバイスの総称である。前房と脈絡膜上腔を連結し、副経路である房水流出を増加させて眼圧を下降させる。線維柱帯バイパスステント(iStent・Hydrus)が主経路を標的とするのに対し、脈絡膜上腔デバイスは副経路を利用する点が異なる4)。眼外アプローチ(GMS・STARflo)と眼内アプローチ(CyPass・MINIject)の2種類があり、それぞれ手術侵襲度と眼圧下降効果が異なる1)。
眼外アプローチは経強膜切開を介して脈絡膜上腔にアクセスする。結膜と強膜の操作が必要であり、将来の濾過手術が困難になる可能性がある。一方でより広範な組織切開が可能であり、眼内アプローチと比較してより大きな眼圧下降が期待できる。
ゴールドマイクロシャント(GMS)
素材:医療用24金。金が眼内で良好に許容されるという知見に基づく
構造:2枚の長方形の融合リーフレット。近位端に100μmの穴60個と300μmの穴1個、遠位端に110μmの穴117個のグリッド
手技:円蓋部基底結膜フラップ→角膜輪部2〜3mm後方に強膜全層切開→脈絡膜上腔露出→前房内トンネル作成→デバイス挿入
改良版GMS+:フィンの位置変更とチャネルからポストへの設計変更で流出エリアを拡大
STARflo
素材:STAR Biomaterial(多孔質医療用シリコン)。組織統合を促進し線維化を抑制する設計
構造:ヘッド・ネック・ボディの3部構成一体型
手技:結膜フラップ→強膜分層フラップ→ヘッドを前房内に挿入→フラップ後縁で強膜全層切開→ボディを脈絡膜上腔に挿入
規制状況:2012年CEマーク承認
眼内アプローチは透明角膜切開と術中隅角鏡を用いる。結膜・強膜を温存できるため、将来の濾過手術への影響が少ない。
CyPass Micro-Stent
素材:ポリイミド。長さ6.35mm、外径0.5mm、内径300μm
構造:全長にわたり側孔(fenestrations)を配置。流出を促進
手技:透明角膜切開→粘弾性物質で前房深化→術中隅角鏡で可視化→強膜突起からの鈍的剥離で微小毛様体解離を作成→ステント挿入
現状:2018年に角膜内皮細胞減少のため市場から自主回収2)3)
MINIject
開発元:iSTAR Medical社(ベルギー)
分類:脈絡膜上腔MIGSとしてEGSガイドラインに記載1)
特徴:CyPass撤退後、唯一の眼内脈絡膜上腔MIGSデバイスとして位置づけられる
アプローチ:眼内アプローチ(ab interno)。角膜内皮への影響を低減する設計
従来のデバイスとは異なり、内因性の毛様体解離をぶどう膜強膜流出路への濾過経路として利用する新しい手法である。同種移植片(allograft)を裂隙内に配置し再閉塞を防ぐ。CycloPen™を用いて眼内アプローチによる毛様体解離(1〜2時計時間)を作成し、微小トレパンで加工された同種移植片(長さ5mm × 幅500μm)を裂隙内に完全配置する。前房内に突出しないため角膜内皮への影響を回避できる。

| デバイス | 主要成績 | 合併症 |
|---|---|---|
| GMS(Skaat) | 5年成功率73〜78% | 前房出血 |
| GMS+(Hueber) | 97%失敗(4年) | 71%が1年内に失敗 |
| STARflo | 45%が追加手術(2年) | 角膜内皮減少 |
GMS: Skaatらの3群RCTでは2種類のGMS(内部チャネル24μmまたは48μm)とアーメド緑内障バルブを比較した。5年時点の累積成功率はアーメド群77.8%、24μm GMS群77.8%、48μm GMS群72.7%であった。一方、Hueberらの第2世代GMS+の後ろ向き研究では4年で97%が失敗し、77%で二次手術が必要となった。
STARflo: 初期臨床試験では12ヶ月で眼圧37.0→14.5 mmHgの低下が報告されたが、ヨーロッパの前向き試験では24ヶ月時点で45%が追加手術を必要とし、角膜内皮細胞減少や角膜変性(12.5%)が認められた。
Figusらは難治性緑内障55眼のGMS報告で2年限定的成功67.3%、完全成功5.5%と報告した。失敗原因の66.6%はシャント前端の炎症性膜形成による流入遮断であった。
CyPass Micro-StentはFDA承認RCTであるCOMPASS試験で白内障手術併用時に良好な眼圧下降を示した2)。しかし術後5年の市販後調査で、白内障手術単独群と比較して有意な角膜内皮細胞密度の減少が判明した3)。前房内に突出する保持リングの数が角膜内皮細胞減少と負の相関を示した。この結果を受け2018年8月に市場から自主回収された2)3)。
MIGS全体では眼圧15〜50%の低下と0.4〜1.8剤の薬剤減少が報告されている4)。白内障手術との併用は単独MIGSと比較して追加的な眼圧下降効果(2〜2.8 mmHg)と低い再手術率(2年で3% vs 24%)が示されている4)。脈絡膜上腔MIGSは前房と脈絡膜上腔の間に人工的な毛様体解離を作成するものであり、ぶどう膜強膜流出を増加させる3)。
CyPass Micro-StentはFDA承認のCOMPASS試験で良好な眼圧下降を示したが、術後5年の市販後調査で白内障手術単独群と比較して有意な角膜内皮細胞密度の減少が判明した2)3)。前房内に突出する保持リングの数が角膜内皮減少と独立して相関していた。この安全性の問題を受け、2018年8月に製造元であるアルコン社が自主回収を決定した。この経験は脈絡膜上腔デバイスの設計において前房内構造の角膜内皮への影響を最小化する重要性を示した。
房水は毛様体ひだ部で産生され、2つの経路で眼外に排出される。主経路である線維柱帯-シュレム管経路が全流出量の80〜95%を担い、副経路であるぶどう膜強膜路が5〜20%を担う。
主経路の流出は眼圧依存性であり、眼圧上昇とともに増加する。副経路からの流出は非眼圧依存性である5)。房水は毛様体間質を通過して脈絡膜上腔に入り、強膜を経由して眼窩血管から排出される5)。
脈絡膜上腔デバイスは前房と脈絡膜上腔の間に人工的な連結路を作成する。これにより副経路であるぶどう膜強膜流出を増加させ、眼圧を下降させる3)。
実質的には微小な毛様体解離を作成するものであり、その原理は1905年のHeineの毛様体解離術と同一である。従来の毛様体解離術では裂隙の自然閉鎖や制御不能な低眼圧が問題であったが、現代のデバイスは制御された持続的な流出を実現することを目指している。
MIGSの眼圧下降限界は、従来の線維柱帯/シュレム管標的デバイスと同様に遠位の流出抵抗と上強膜静脈圧に制限される3)。軽度〜中等度の開放隅角緑内障が主な適応であり、高度な眼圧下降が必要な重症例ではブレブ形成手術が推奨される3)。
房水は前房から毛様体と虹彩根部の間質を通過し、脈絡膜上腔に流入する。そこから強膜血管や脈絡膜毛細血管に再吸収され、また強膜孔を通って上強膜へ排出される5)。この経路は主経路(線維柱帯-シュレム管)とは異なり非眼圧依存性であり、全房水流出の5〜20%を占める。プロスタグランジン関連薬はこの経路の流出を増加させることで眼圧を下降させる。脈絡膜上腔デバイスは人工的な毛様体解離を作成し、この副経路への流出を直接増加させる。
CyPass Micro-Stentの市場撤退後、脈絡膜上腔MIGSの領域は以下の方向で進展している。
今後の課題として以下が挙げられる。
CyPass Micro-Stentが2018年に市場撤退した後、眼内アプローチの脈絡膜上腔MIGSとしてはMINIject(iSTAR Medical社)が唯一のデバイスである1)。眼外アプローチのGMSは一部の国で承認されていたが、臨床成績にばらつきがあり広く普及していない。新しい手法としてバイオ介入毛様体解離術(CycloPen™による同種移植片補強)が開発されており、デバイスを留置しない脈絡膜上腔アプローチとして注目されている。
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
- American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern®. 2020.
- Fellman RL, Mattox CG, Ross C, et al. Reporting Clinical Endpoints in Studies of Minimally Invasive Glaucoma Surgery. Ophthalmology. 2025;132(2):141-159.
- Singh P, Sharma B, Sarma N, et al. Clinical Outcomes and Patient-Reported Outcomes of Minimally Invasive Glaucoma Surgery Techniques Over the Past Decade. Cureus. 2025;17(7):e87872.
- De Groef L, Bhatt DK, Bhatt AP, et al. The Role of Aqueous Humor Outflow Pathways in Glaucoma. Annu Rev Vis Sci. 2022.