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緑内障

緑内障における標準化開発戦略

1. 緑内障における標準化開発戦略とは

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電子健康記録(EHR)の広範な普及に伴い、臨床データ標準(clinical data standards)の役割に対する関心が急速に高まっている。データ標準は臨床システムの**相互運用性(interoperability)**に不可欠であり、国内・国際規模での大規模かつ多様なデータセットを用いた臨床研究を可能にする。

緑内障診療では視野検査OCT眼圧測定眼底撮影など多様な検査データが生成される1)2)。これらのデータをシステム間で正確に交換・整合化するためには、臨床領域と情報学(インフォマティクス)領域の両方にまたがるデータ標準の開発と適切な運用が必要である。

本戦略は、どの臨床的・技術的ニーズに対してどの標準が最適であるかを示すガイドである。特定の標準を不適切に使用したり、2つの異なる標準で一つの問題を重複して解決しようとする事態を避けることを目的とする。

Q 臨床データ標準はなぜ重要ですか?
A

臨床データ標準は、異なるEHRシステム間でデータを正確に交換・共有するための共通規格である。標準化がなければ、施設ごとに異なる形式でデータが記録され、多施設共同研究や大規模データ解析が困難となる。緑内障診療では視野検査・OCT・眼圧など複数の検査データを長期的に管理する必要があり、相互運用性の確保は診療の質向上と研究推進に直結する。

標準主な役割緑内障との関連
DICOM医療画像の保存・交換OCT・視野・眼底写真
SNOMED医学用語の表現診断名・検査所見
FHIRシステム間データ交換EHR間の情報共有

DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)

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DICOMは最も成熟した医療画像標準であり、数十年にわたり医療画像のニーズに応えてきた。1999年に眼科標準化のためのDICOM Working Group 9が設立された。

既存の眼科DICOMサプリメント

サプリメント146:自動視野計検査データの標準化

サプリメント91:眼科撮影(視神経乳頭黄斑RNFL写真)

サプリメント110:眼科断層撮影(RNFLおよび黄斑のOCT)

サプリメント144/130/168:生体計測・屈折測定・角膜形状解析

推奨される新規開発

DICOM構造化レポート:視神経乳頭・乳頭周囲RNFL・黄斑部網膜厚の測定値に関する標準化されたレポート形式

新規測定法への対応:視神経の構造と機能に関する新しい測定法が広く使用される見込みがある場合、DICOMサプリメントとして評価すべきである

普及促進:既存サプリメントの多くは、さらなる普及促進の取り組みが必要である

DICOMは緑内障診療で使用される院内検査データの保存と交換に最適な選択肢である。

SNOMED(Systematized Nomenclature of Medicine)

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SNOMEDは医学用語の概念とその関係性を体系化した成熟した標準である。EHRにおいて検索の向上やデータ要素間の連携を組織化する手段として広く実装されている。

米国眼科学会(AAO)は2000年代初頭からSNOMEDへの用語追加に取り組んでおり、SNOMEDを公式用語集として採用している。2022年にはEye Care Clinical Reference Groupの下で眼科用語の更新作業が開始された。

推奨される更新事項

  • 検査所見に関連する用語の標準化
  • より具体的な診断名の追加(例:高眼圧症の追加)
  • 臨床所見の記述の標準化

2023年には眼圧測定法の定義、最大眼圧・目標眼圧の概念作成、隅角鏡検査所見の用語作成が完了した。

FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)

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FHIRはHealth Level 7(HL7)が作成した最新のデータ交換標準である。現代的なウェブベースAPIを活用してシステム間の臨床データ交換を促進する。米国においてEHR間のデータ交換標準として採用されている。

FHIRを使用して交換された情報は、CDS HooksやSMARTアプリケーションと組み合わせて臨床意思決定支援を提供できる。

USCDI+Eyeの推奨項目

視力(visual acuity):医療全般でも重要な眼科関連データ

眼圧(intraocular pressure):緑内障管理の基本指標1)2)

屈折異常(refractive error):幅広い眼科診療に関連するデータ

USCDI+の位置づけ:義務的ではないがEHRベンダーに重要性を示すシグナルとなる

眼科FHIRの課題

構造化プロセスの不足:DICOMに見られるような体系的アプローチがまだ確立されていない

眼科固有データの限界:多くの眼科データは他の専門分野と無関連であり、USCDIの義務的標準に大量採用されにくい

実装ガイダンス:あるワークグループが眼科ケアのいくつかの側面に関する実装ガイダンスを提案している段階

EHRとの統合:FHIRの追加要素はEHRとのデータ交換における役割に焦点を当てるべきである

LOINC(Logical Observation Identifiers Names and Codes)

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LOINCは健康に関する観察値や測定値を表現するための標準である。眼科ケアにおいて視力や眼圧の表現に頻繁に使用される。

LOINCにおける視力の表現には現在かなりのばらつきがあり、左右性・測定距離・矯正の有無・測定方法に関する情報の含め方が一定でない。国立眼科研究所(NEI)、AAOデータ標準ワークグループ、およびOHDSI眼科ケア・視覚研究ワークグループが、重複の削減と一貫性向上のための体系的分析に着手している。

OMOP(Observational Medical Outcomes Partnership)

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OHDSI(Observational Health Data Sciences and Informatics)プログラムが運用するOMOP共通データモデルは、複数施設にわたるEHRデータの共有と整合化を促進する。眼科ケア・視覚研究ワークグループが眼科データ要素に関するOMOPのギャップ特定に取り組んでおり、初期分析では相当な欠落が特定されている。

ICD(国際疾病分類):WHOが維持するコード体系であり、更新の際に意見が募集される。現時点では緑内障関連の修正に取り組む具体的な活動は行われていない。

CPT(Current Procedural Terminology):米国医師会が維持する診療報酬請求用コードである。閉鎖的な性質と国際的適用性の低さから、データ標準の観点での拡張は行われていない。

Q 緑内障データにはどの標準を使うべきですか?
A

用途に応じた使い分けが重要である。院内検査データ(OCT・視野・眼底写真)の保存と交換にはDICOMが最適である。診断名・検査所見の用語表現にはSNOMEDを使用する。EHR間のデータ交換にはFHIRが推奨される。検査測定値の表現にはLOINCを、多施設データの整合化にはOMOP共通データモデルを使用する。一つの標準で全てをカバーしようとせず、それぞれの標準の強みを活かした使い分けが重要である。

緑内障の臨床データ標準化は急速に進展しているが、以下の課題が残されている。

  • 既存DICOMサプリメントの普及促進と新規測定法への対応
  • SNOMEDにおける検査所見用語と具体的診断名の充実
  • FHIRの眼科固有データへの体系的アプローチの確立
  • LOINCにおける視力・眼圧表現の標準化
  • OMOP共通データモデルにおける眼科データ要素の欠落の解消
  • 各標準間の連携と、重複のない運用戦略の策定

臨床データ標準の整備は、緑内障の大規模臨床研究・レジストリ研究・AIベースの診断支援システムの基盤となる。臨床専門家とインフォマティクス専門家の継続的な協働が不可欠である。

  1. 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
  1. European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.

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