RNFL厚
測定原理:内境界膜(ILM)とRNFL境界の間の厚さを定量化する
TSNITマップ:視神経中心の3.4 mm円上のRNFL厚をT(耳側)→S(上側)→N(鼻側)→I(下側)→T(耳側)の順に表示する
正常パターン:上下方向に二峰性のピークを示す(弓状線維束の解剖学的分布を反映)1)
象限・時計軸表示:四半画分および時計軸ごとのRNFL厚を表示する

スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT:Spectral Domain Optical Coherence Tomography)は、反射レーザー光の干渉パターンを解析して網膜の層構造を可視化する画像診断技術である。1991年に初めて報告され、2002年にタイムドメインOCT(TD-OCT)が市販されて広く普及した。SD-OCTは2006年以降に登場した次世代技術であり、TD-OCTを大幅に改良している。
| 項目 | SD-OCT | TD-OCT |
|---|---|---|
| 軸方向解像度 | 約5 µm | 約10 µm |
| スキャン速度 | 26,000 Aスキャン/秒以上 | 約400 Aスキャン/秒 |
SD-OCTは深さ方向の分解能が向上し、スキャン速度が飛躍的に高速化した。断面のみならず面と体積による形状解析が可能である。自動セグメンテーションアルゴリズムにより網膜神経線維層(RNFL)を精密に描出する1)。
代表的な市販SD-OCTデバイスとして以下がある。
近年ではより深達度の高いスウェプトソースOCT(SS-OCT)も開発され、視神経乳頭篩板や脈絡膜の解析に応用されている1)。
緑内障診断において、SD-OCTによる判定法の高い有用性が認識されている1)。ただし測定精度には限界があり、緑内障眼と正常眼の数値のオーバーラップがあるため、最終的な判断は臨床所見を総合して行う必要がある1)3)。
TD-OCTは1軸方向のAスキャンを重ね合わせて網膜断面像を得る方式で、検査に時間を要した。SD-OCTはフーリエドメイン方式を採用し、スキャン速度が26,000 Aスキャン/秒以上に高速化された。軸方向解像度も約5 µmに向上し、RNFL厚・視神経乳頭・黄斑部神経節細胞複合体の高速解析が可能となった。面と体積による形状解析も実現している1)。
SD-OCTでは以下の3パラメータで緑内障性変化を評価する。すべての数値は正常眼データベースと比較され、白・緑・黄・赤で色分け表示される3)。黄色は5%未満、赤色は1%未満の出現確率を示す。
RNFL厚
測定原理:内境界膜(ILM)とRNFL境界の間の厚さを定量化する
TSNITマップ:視神経中心の3.4 mm円上のRNFL厚をT(耳側)→S(上側)→N(鼻側)→I(下側)→T(耳側)の順に表示する
正常パターン:上下方向に二峰性のピークを示す(弓状線維束の解剖学的分布を反映)1)
象限・時計軸表示:四半画分および時計軸ごとのRNFL厚を表示する
ONHパラメータ
視神経乳頭解析:視神経乳頭・陥凹・乳頭縁を自動描出する
ブルッフ膜基準:乳頭の縁をブルッフ膜終点で定義し、ILMまでの最短距離を算出する
診断能の高い指標:垂直リム厚・リム面積・垂直C/D比が最も高い診断能を有する3)
BMO-MRW:ブルッフ膜開口部を基準としたリム幅評価で再現性に優れる1)
神経節細胞解析(GCA):黄斑周囲の神経節細胞層(GCL)と内網状層(IPL)の複合体厚を測定する。Cirrusでは GCL+IPL(GCIPL)、Optovueでは RNFL を加えた神経節細胞複合体(GCC)を評価する1)3)。最小値・耳下側セクター・平均値が診断上最も有用なパラメータである。
SD-OCTの緑内障検出能に関する主な知見は以下の通りである。
前視野緑内障において、SD-OCTのRNFL測定は視野欠損出現前の構造変化を検出するために特に有用である1)4)。OCTを用いて初めて診断できる緑内障も増えている1)。
患者側の要因
測定側の要因
セグメンテーションエラー:傾斜乳頭・強膜ブドウ腫・乳頭周囲萎縮・網膜前膜がある場合に生じやすい。SD-OCTではTD-OCTより頻度が低い
眼球運動・瞬き:Aスキャンの整列が乱れRNFL厚の誤測定につながる。アイトラッキング機能で改善される
信号強度:6未満のスキャンは再検査すべきである。デフォーカスによりRNFLが偽性に薄く測定される
正常眼データベースの限界にも留意する必要がある3)。Cirrusの正常眼データベースは284名(18〜84歳)で構成され、屈折誤差は−12.00 D〜+8.00 Dの範囲である。データベースに含まれない特性を持つ患者では「レッド・ディジーズ」(実際には病気でないのに赤く表示される)に注意が必要である。
強度近視眼では正常眼データベースとの比較に限界がある。RNFL束が耳側にシフトするため正常でも「菲薄化」と判定されうる。このような症例では、各患者自身をベースラインとした経時的比較が有効である。一連のSD-OCTスキャンで進行性菲薄化を評価する。ただし健常者でもRNFL厚は加齢により年間約0.52 µm減少するため、この自然減少を考慮する必要がある。
緑内障では網膜神経節細胞(RGC)障害に伴い、その軸索であるRNFLが脱落する1)。全RGCの約50%は黄斑部の中心20°領域に集中している。早期緑内障であっても約50%のRGCが消失している場合がある1)。
RGCの細胞体と視神経乳頭(ONH)の軸索は異なるレベルのストレスを受ける5)。IOPによるストレスは網膜よりONHで顕著に大きい。篩板での機械的応力は、乳頭周囲強膜からのフープストレスと、IOPと髄鞘化視神経組織圧の圧較差によるtrans-LC圧差から成る5)。
RGC死の上流メカニズムは多因子的であり、以下が関与する5)。
| RGCの特性 | SD-OCTでの評価 |
|---|---|
| RNFL(軸索) | 乳頭周囲RNFL厚 |
| GCL+IPL(細胞体) | 黄斑部GCIPL厚 |
SD-OCTはRNFL厚でRGC軸索の脱落を、GCA(GCIPL)で細胞体を含む内層の菲薄化を評価する1)3)。黄斑パラメータはRNFL厚よりフロア効果の発現が遅いため、進行期の評価に有用である1)。
緑内障の進行判定にはイベント解析とトレンド解析の2つのアプローチがある。
CirrusのGPA(Guided Progression Analysis)は両方のアプローチを統合している3)。ベースラインとフォローアップのRNFL厚マップをピクセル単位で比較し、テスト・再テスト変動を超える変化を検出する。全体的なトレンドプロットの作成には2回のベースラインスキャンと3回のフォローアップスキャンが必要である。
平均RNFL厚の受診間許容限界は3.89 µmであり、4 µm以上の再現性のある減少は統計的に有意な変化を示唆する。
SD-OCTで検出される進行パターンは以下の3つである。
耳下側象限がRNFL進行の最も頻度の高い部位である。
進行期緑内障ではRNFL厚が横ばいとなり、グリア組織や血管などの非神経組織が残存するため50 µmを下回ることは稀である1)3)。この「フロア効果」により、末期段階ではSD-OCTの臨床的有用性が低下し、視野検査による進行判定が主体となる。黄斑パラメータの方がRNFL厚よりフロア効果の発現が遅い1)。
フロア効果とは、進行期緑内障においてRNFL厚がそれ以上減少しなくなる現象である。神経線維が高度に脱落した段階でも、グリア組織や血管などの非神経組織が残存するため、RNFL厚は通常50 µm以下にはならない。この段階ではSD-OCTによる進行検出が困難となり、視野検査による評価が主体となる1)3)。黄斑パラメータ(GCIPL)はRNFL厚よりフロア効果の発現が遅いため、進行期でも一定の有用性を保つ。
- 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
- American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern®. 2020.
- American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern®. 2020.
- Pitha I, Kimball E, Oglesby E, et al. Prog Retin Eye Res. 2024;99:101225.