開放隅角機序の所見
粘弾性物質残留:術後早期に前房内に粘弾性物質の残留を認める。分散型は除去が困難で凝集型より眼圧上昇を起こしやすい
炎症:前房内炎症細胞・フレアの増加。過剰な炎症は線維柱帯の閉塞と線維化を引き起こす2)3)
色素分散:虹彩透照欠損・線維柱帯の色素沈着。ワンピースIOLの毛様体溝配置で特に問題となる
水晶体粒子:前房内の水晶体皮質・核破片の残留

眼内レンズ挿入眼緑内障(pseudophakic glaucoma)は白内障手術後のIOL挿入眼に生じる緑内障であり、無水晶体眼緑内障(aphakic glaucoma)はIOLを挿入していない無水晶体状態で生じる緑内障である。いずれも眼内手術に伴う続発緑内障に分類される2)3)。
術後の眼圧上昇は通常一過性であり、粘弾性物質・炎症性デブリ・硝子体・水晶体粒子・プロスタグランジン放出などが原因となる2)3)。術後1日目の一過性眼圧上昇は29〜50%に認められる。標準的な嚢外摘出術後の慢性緑内障の有病率は2.1〜4%と報告されている。無水晶体眼における術後慢性緑内障の有病率は約3%である。
小児白内障術後の緑内障は重要な合併症であり、生後9ヶ月未満での白内障手術では発生率が最大50%に達することがある2)。治療が困難であり、長期的な眼圧管理にロングチューブドレナージデバイスを要することが多い2)。
現代の小切開超音波乳化吸引術でも術後眼圧上昇は生じうる。ただし一過性であることが多く、慢性緑内障への移行率は低い。粘弾性物質の確実な除去・愛護的な組織操作・術後早期の眼圧モニタリングにより、リスクを最小限に抑えることができる。既存の緑内障を有する患者では術後早期の眼圧上昇が視神経障害を進行させる可能性があるため、より注意深い管理が必要である4)。
術後早期の一過性眼圧上昇では眼痛・霧視・角膜浮腫による視力低下を認めることがある。慢性の経過では緑内障一般と同様に初期は無症状であり、進行すると視野欠損を自覚する。急性瞳孔ブロックでは激しい眼痛・頭痛・嘔気を伴うことがある。
開放隅角機序の所見
粘弾性物質残留:術後早期に前房内に粘弾性物質の残留を認める。分散型は除去が困難で凝集型より眼圧上昇を起こしやすい
炎症:前房内炎症細胞・フレアの増加。過剰な炎症は線維柱帯の閉塞と線維化を引き起こす2)3)
色素分散:虹彩透照欠損・線維柱帯の色素沈着。ワンピースIOLの毛様体溝配置で特に問題となる
水晶体粒子:前房内の水晶体皮質・核破片の残留
閉塞隅角機序の所見
白内障手術後の眼圧上昇を引き起こす機序は多岐にわたる2)3)。
| 時期 | 主な機序 |
|---|---|
| 術後1〜7日 | 粘弾性物質・炎症・出血 |
| 術後1〜7週 | ステロイド・ゴースト細胞 |
| 2ヶ月以降 | UGH・色素分散・周辺虹彩前癒着 |
主なリスク要因として以下が挙げられる。
眼圧上昇の機序を特定するために以下の検査を行う。
| 鑑別疾患 | 特徴的所見 |
|---|---|
| 粘弾性物質残留 | 術後数時間〜1日で発症 |
| UGH症候群 | 再発性前房出血・色素分散 |
| 悪性緑内障 | 前房全体が浅い |
UGH症候群はぶどう膜炎・緑内障・前房出血の三徴を特徴とする2)3)。再発性の前房出血が最も特徴的な所見である。UBM検査でIOLの支持部と虹彩・毛様体の接触を確認することが重要である。前房IOLや毛様体溝配置のIOLで生じやすいが、落屑症候群に伴うZinn小帯不安定がある場合はin-the-bag IOLでも発生しうる。虹彩の新生血管や他の出血原因を除外する。
眼圧上昇の機序に応じた治療選択が重要である2)3)。
粘弾性物質残留や術後炎症による一過性の眼圧上昇は、緑内障点眼薬や炭酸脱水酵素阻害薬内服による保存的治療で多くの場合軽快する。著しい眼圧上昇がある場合は前房穿刺による減圧を考慮する。
無水晶体眼の瞳孔ブロックにはレーザー虹彩切開術(LPI)が必要である2)。IOL挿入眼では散瞳療法からLPIまでの段階的治療を考慮する。悪性緑内障には硝子体切除術が必要となることが多い2)。偽水晶体眼ではNd:YAGレーザーによる後嚢切開後の前部硝子体破砕術が有効な場合がある。
慢性の色素分散や炎症が持続する場合はIOLの摘出または交換が適応となる2)3)。現代のIOLではUGH症候群のリスクは著しく低下している2)。
薬物療法として炭酸脱水酵素阻害薬・プロスタグランジン製剤・β遮断薬・α2作動薬が用いられる。薬物療法で管理不能な場合は緑内障手術を行う2)。
開放隅角機序では流出路再建術を考慮する。閉塞隅角機序では隅角癒着解離術・線維柱帯切除術を検討する。偽水晶体眼では線維柱帯切除術の成績が有水晶体眼より不良であることが知られている。緑内障ドレナージデバイスや毛様体光凝固術も選択肢となる2)。
まず眼圧上昇の機序を特定する。開放隅角機序であれば原発開放隅角緑内障に準じた薬物治療を行う1)。閉塞隅角機序ではLPIや隅角癒着解離術を考慮する。薬物療法で不十分な場合は手術治療に進むが、偽水晶体眼では線維柱帯切除術の成績が不良であるため、緑内障ドレナージデバイスの使用も検討する2)。IOL関連の問題(色素分散・UGH症候群)が原因の場合はIOLの交換が根本的治療となる。
白内障手術後の眼圧上昇は、房水流出路の一過性または持続性の障害によって生じる2)3)。
開放隅角機序では、粘弾性物質・炎症細胞・色素顆粒・水晶体粒子・ゴースト細胞などが線維柱帯を閉塞する。線維柱帯への持続的な刺激は線維化を引き起こし、慢性的な房水流出抵抗の増大につながる。Nd:YAGレーザー後嚢切開後の眼圧上昇は通常一過性であるが、既存の緑内障や近視眼ではリスクが高い2)3)。
閉塞隅角機序では、虹彩と硝子体前面の癒着(無水晶体眼)やIOLによる瞳孔ブロック(前房IOL・毛様体溝IOL・逆挿入IOL)が房水の前房への流出を阻害する2)。術後の浅前房・炎症は周辺虹彩前癒着形成を促進し、慢性閉塞隅角緑内障の原因となる。
UGH症候群ではIOLの機械的刺激による虹彩の擦過が炎症・出血を引き起こす2)3)。落屑症候群に伴うZinn小帯不安定によるIOL-嚢複合体の動揺が機序となりうる。
小児白内障術後の緑内障は、発達途上の隅角に対する手術侵襲の影響や、水晶体除去に伴う前眼部の解剖学的変化が関与すると考えられている2)。
近年の前眼部光干渉断層撮影(OCT)やUBMの進歩により、術後の隅角および虹彩-IOL関係の評価が精密化しつつある。小児白内障術後の緑内障に対しては、ロングチューブドレナージデバイスの長期成績が報告されており、薬物療法のみでは困難な症例における重要な治療選択肢となっている。IOL設計およびサジングアルゴリズムの改善により、色素分散やUGH症候群のリスクは著しく低下しているが、落屑症候群などの予測困難なリスク因子に対する対策が今後の課題である。
- 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition. 2020.
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
- European Society of Cataract & Refractive Surgeons. ESCRS Clinical Guidelines: Cataract Surgery.