原発開放隅角緑内障(POAG)は世界の不可逆的失明の主要原因であり、2020年時点で世界のPOAG患者は約5,300万人と推定されている4) 。アフリカ系集団ではPOAGの有病率が特に高く、アフリカ系アメリカ人では白人の約3倍の有病率を示す4) 。アフリカ系カリブ海集団ではさらに高い有病率が報告されている4) 。
アフリカ系集団のPOAGは進行が速く、従来の治療に抵抗性を示す傾向がある。緑内障 による失明の多くがアフリカで発生している。サブサハラ・アフリカでは緑内障治療薬の高額な費用と手術に対する恐怖が適切な管理の障壁となっており、中間的治療段階であるレーザー治療がほとんど普及していない。
若年発症の傾向
より高い眼圧を呈する
進行が速い
視神経 障害が重度になりやすい
失明の主要原因となっている4)
Q アフリカ系集団ではなぜPOAGが多いのですか?
A 複数の要因が関与している。遺伝的背景として、アフリカ系集団ではPOAGのリスクアレルが高頻度に存在する可能性がある4) 。解剖学的には薄い中心角膜 厚が報告されており、これは眼圧測定 の過小評価とPOAGのリスク因子の両方に関連する。社会経済的要因として、医療アクセスの制限により診断・治療が遅れ、進行した状態で発見されることが多い。これらの複合的要因がアフリカ系集団における高い有病率と重症化に寄与している。
原発開放隅角緑内障の主要なリスク因子として以下が挙げられる4) 。
高齢 :加齢は最も強いリスク因子である
人種 :アフリカ系およびラテン系/ヒスパニック系で有病率が高い4)
眼圧上昇 :最も重要な修正可能なリスク因子
家族歴 :緑内障の家族歴
低灌流圧 :低眼灌流圧
2型糖尿病
薄い中心角膜厚
AGIS(Advanced Glaucoma Intervention Study)ではアフリカ系患者はALT(アルゴンレーザー線維柱帯形成術)を先行した場合に30%の眼圧下降を示し、白人患者は線維柱帯切除術 を先行した場合に48%の眼圧下降を示した4) 。このように人種による治療反応の差異が報告されている。
原発開放隅角緑内障の治療の基本原則は眼圧下降である1) 4) 。薬物療法が第一選択として広く用いられてきた。しかしアフリカでは薬物のコスト・アドヒアランス不良・副作用が治療継続の障壁となっている。
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)
機序 :QスイッチNd:YAGレーザーで線維柱帯 の色素細胞を選択的に標的とし、細胞活動を刺激して房水 流出を促進する
一次治療としてのエビデンス :LiGHT試験でSLTは点眼薬と同等の眼圧下降効果を示し、より費用対効果が高かった3) 5) 。EGS・AAO のガイドラインでSLTが一次治療として推奨されている2) 3) 4)
アフリカ系集団の成績 :WIGLS(West Indies Glaucoma Laser Study)でアフリカ系カリブ海集団の78%に20%以上の眼圧下降を達成4) 5)
その他のレーザー治療
ALT(アルゴンレーザー線維柱帯形成術) :線維柱帯に機械的変化を生じさせるか細胞活性を刺激する。AGIS研究ではアフリカ系患者で良好な短期成績が報告された4)
マイクロパルスレーザー 線維柱帯形成術(MLT) :エネルギーを短いパルスに分割し周囲組織への熱損傷を軽減する。ナイジェリアでの研究でベースラインから17.2%の眼圧下降が報告されている
経強膜 毛様体 光凝固術 (TSC PC) :毛様体を破壊し房水産生を減少させる。難治緑内障に用いられるが低眼圧 ・眼球癆 のリスクがある
LiGHT試験(Laser in Glaucoma and Ocular Hypertension Trial)は開放隅角緑内障/OHTに対するSLTと点眼薬の初期治療を比較した多施設RCTである5) 。
項目 SLT群 点眼群 3年時点の無点眼率 74.2% — 6年時の疾患進行率 19.6% 26.8% 費用対効果 優れる —
6年時のフォローアップでは、SLT群の方が点眼群より視野進行が少なく(19.6% vs 26.8%、p=0.01)、安全で費用対効果が高いことが確認された5) 。SLT群の90%は最大2回のSLT治療で6年間の無点眼状態を維持し、55.5%は1回のSLTのみで十分であった5) 。
SLTは頻繁なモニタリング受診や治療変更が困難な状況においても理想的な治療アプローチであると報告されている5) 。この特性はアフリカにおける緑内障管理に特に適している。
薬物療法・レーザー治療で眼圧コントロールが不十分な場合に手術を考慮する。線維柱帯切除術が標準術式であるが、アフリカ系集団では創傷治癒反応が旺盛であるため成功率が低い傾向がある4) 。
Q SLTはPOAGの一次治療として推奨されていますか?
A LiGHT試験の結果を受けて、EGS・AAO・NICEのいずれもSLTを開放隅角緑内障/OHTの一次治療として推奨している2) 3) 4) 5) 。SLTは点眼薬と同等の眼圧下降効果を示し、費用対効果に優れ、6年間で視野進行が点眼群より少なかった5) 。特に点眼アドヒアランスが困難な患者やコストが問題となる環境では、SLTは理想的な選択肢となる。
高周波深部強膜切開術(HFDS)はab internoアプローチで線維柱帯に高周波電気焼灼プローブでチャネルを作成し房水流出を促進するMIGS である6) 。
Wangらは台湾でPOAG患者2例にHFDSを施行し、1年後にそれぞれ30%・33.3%の眼圧下降を報告した6) 。術後の角膜内皮 細胞減少は軽度(7〜13%)であり、重大な合併症は認められなかった6) 。先行研究ではHFDS後9ヶ月で平均39.2%、72ヶ月で平均42.5%の眼圧下降が報告されている6) 。
HFDSはインプラントやシャントを使用せず繰り返し施行可能であるため、アフリカの医療環境に適する可能性がある6) 。
SLT一次治療のアフリカ集団における大規模長期データの蓄積
アフリカにおけるレーザー治療機器のアクセス向上
遠隔医療を活用した術後モニタリングの標準化
人種間の治療反応の差異を考慮した個別化治療戦略の確立
HFDSなど新規MIGS技術のアフリカでの導入評価
日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition. 2020.
European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
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Gazzard G, Konstantakopoulou E, Garway-Heath D, et al. LiGHT Trial: six-year results of primary selective laser trabeculoplasty versus eye drops for the treatment of glaucoma and ocular hypertension. Ophthalmology. 2023;130:139-151.
Wang WX, Ko ML. Taiwan’s first clinical reports on the surgical effect of high-frequency deep sclerotomy for treating primary open-angle glaucoma. BMC Ophthalmology. 2025;25:84.
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