素材と寸法
素材:SIBS(ポリスチレン-ブロック-イソブチレン-ブロック-スチレン)。生体不活性であり冠動脈ステントにも使用される素材である。術後の強膜上瘢痕化・線維化のリスク軽減が期待される
全長:8.5 mm1)
外径:350 μm、内径:70 μm1)
フィン:1 mmのフィン(翼状突起)により遠位部(3 mm)と近位部(4.5 mm)に分割される。フィンは強膜トンネル内で固定の役割を果たす

PreserFloマイクロシャント(参天製薬)はab externo(眼外から)のアプローチで植え込む緑内障濾過デバイスである1)。前房から結膜下・テノン嚢下腔へ房水を導き、濾過胞を形成して眼圧を下降させる。
プレートを持たないブレブ形成デバイスに分類され、同カテゴリーにはXEN 45/XEN 63(AbbVie社)がある1)。従来のプレート付きチューブシャント(Baerveldt・Ahmed)やMIGS(線維柱帯バイパスデバイス)とは区別される1)。
| 項目 | PreserFlo | XEN 45 |
|---|---|---|
| 素材 | SIBS(シリコン系) | ブタゼラチン |
| アプローチ | Ab externo | Ab interno |
| 内径 | 70 μm | 45 μm |
理論的にはポアズイユの法則に基づく標準化された流出抵抗により、線維柱帯切除術と比較して術後眼圧がより予測可能であるとされている1)。術後の経過観察も従来の濾過手術より簡便である可能性がある1)。
適応は原発開放隅角緑内障(POAG)、偽落屑緑内障、色素緑内障など開放隅角を伴う緑内障である。中等度から進行期の緑内障で、MIGSでは眼圧下降が不十分と考えられる症例に考慮される1)。
禁忌は他のブレブ形成手術と同様であり、不良な結膜状態、結膜手術既往、強度近視、先天緑内障、続発緑内障が相対禁忌となる1)。
素材とアプローチが異なる。PreserFloはSIBS(合成ポリマー)製でab externo(眼外から)で植え込む1)。XEN 45はブタゼラチン製でab interno(眼内から)で植え込むが、ab externoアプローチも報告されている1)。PreserFloの内径は70 μm、XEN 45は45 μmである。両者ともプレートを持たないブレブ形成デバイスであり、濾過胞を形成して眼圧を下降させる点は共通している。
素材と寸法
素材:SIBS(ポリスチレン-ブロック-イソブチレン-ブロック-スチレン)。生体不活性であり冠動脈ステントにも使用される素材である。術後の強膜上瘢痕化・線維化のリスク軽減が期待される
全長:8.5 mm1)
外径:350 μm、内径:70 μm1)
フィン:1 mmのフィン(翼状突起)により遠位部(3 mm)と近位部(4.5 mm)に分割される。フィンは強膜トンネル内で固定の役割を果たす
設計原理
ハーゲン・ポアズイユの式:チューブの流出抵抗は内径・長さにより決定される。房水産生量が2 μL/分を超えていれば術後眼圧は5 mmHg以上に維持される設計である
濾過胞形成:遠位端は角膜輪部から約6 mm後方に位置し、結膜下・テノン嚢下腔に後方への房水流出と濾過胞形成を可能にする
予測可能性:標準化された流出抵抗により線維柱帯切除術と比較して術後眼圧の予測が容易とされる1)
手術はab externo アプローチで行う1)。主な手順は以下の通りである。
マイトマイシンC濃度は手術成績に大きく影響する。0.4 mg/mLの方が0.2 mg/mLより無投薬維持率が高いことが報告されている。ただし高濃度マイトマイシンCはブレブ漏出や低眼圧のリスクを伴う1)。
軸性近視眼など低眼圧が臨床的に問題となる症例では、一時的な管腔内ステント留置を考慮する1)。
| 研究 | 眼数 | 期間 | 眼圧下降 |
|---|---|---|---|
| Batlle | 23眼 | 3年 | 23.8→10.7 mmHg |
| Schlenker | 164眼 | 1年 | 完全成功76.9% |
| Beckers | 81眼 | 2年 | 21.7→14.1 mmHg |
Batlleらの3年成績では眼圧が55%低下し、点眼数は2.4剤から0.7剤に減少した。条件付き成功率は95%であった。
Schlenkerらの164眼の検討では1年後の完全成功率76.9%、条件付き成功率92.5%であった。マイトマイシンC低濃度(0.2 mg/mL)と二次性開放隅角緑内障が手術失敗の独立したリスク因子であった。
Beckersらの前向き多施設研究では2年後の全体成功率74.1%であった。マイトマイシンC 0.4 mg/mL使用群は0.2 mg/mL群より無投薬維持率が高かった(90.3% vs 51.9%)。
Bakerらの無作為化多施設共同試験(395眼 vs 132眼)では、1年後の手術成功率は線維柱帯切除術群が高かった(72.7% vs 53.9%)。一方、一過性低眼圧の発生率は線維柱帯切除術群で高かった(49.6% vs 28.9%)。眼圧は線維柱帯切除術群でやや低かった(11.1 vs 14.3 mmHg)。
主な合併症
一過性低眼圧:最も多い合併症。28.9%(Baker RCT)で報告されている。多くは自然軽快する
浅前房:低眼圧に伴い発生する。虹彩とチューブの接触がチューブ閉塞の原因となりうる3)
脈絡膜剥離:低眼圧に伴う合併症として報告されている
チューブ閉塞:虹彩嵌頓やIOL capture により発生する3)。YAGレーザーまたは手術的介入で解除する
日本からの症例報告
Iwasakiら(PMC10772340):プラトーアイリス症候群に続発したCACGに対するPMS植え込み後、術後8日目にIOL captureによるチューブ閉塞が発生した3)
経過:術後2日目に一過性低眼圧(6 mmHg)と浅前房が出現。術後8日目に眼圧42 mmHgに上昇し、虹彩・IOLによるチューブ先端の閉塞を確認3)
治療:前房メンテナーを使用しSinskey hookでIOLを整復・虹彩を除去。術後眼圧14 mmHgに改善3)
Baker らのRCTでは、1年後の手術成功率は線維柱帯切除術群の方が高かった(72.7% vs 53.9%)。しかし一過性低眼圧の発生率はPreserFlo群で低く(28.9% vs 49.6%)、術後管理がより簡便である可能性がある1)。最近の研究では中期的な眼圧下降効果においてPreserFloは線維柱帯切除術と同等であることが示されている。デバイス選択は個々の症例に応じた判断が必要である。
チューブ閉塞は虹彩嵌頓・血餅・硝子体などにより発生する3)。YAGレーザーによる閉塞解除が第一選択となることが多い。IOL captureを伴う場合はSinskey hookを用いた手術的介入でIOLを整復しチューブ内腔を開通させる3)。術後早期の低眼圧時にアトロピン点眼を使用することで、虹彩-チューブ接触によるチューブ閉塞を予防できる可能性がある3)。
PreserFloマイクロシャントは日本では2022年2月に承認され、臨床使用が始まっている3)。今後の日本における使用経験の蓄積が期待される。
難治性小児緑内障に対する有効性も報告されており、Brandtは12眼を対象に1年以上のフォローアップで75%の成功率を報告した。小児への適応拡大の可能性がある。
毛様体溝(sulcus)を介したデバイス挿入法も報告されており、角膜内皮障害リスクの高い症例に対する代替アプローチとして注目されている。
今後の課題として以下が挙げられる。
濾過手術の術後管理は手術成績を左右する重要な要素であり、標準化された術後管理プロトコルの確立も課題である2)。
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
- 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
- Iwasaki K, Arimura S, Inatani M. Tube obstruction caused by intraocular lens capture following PreserFlo MicroShunt implantation. Am J Ophthalmol Case Reports. 2024;33:101951.