前眼部所見
前房深度:中央部は正常〜やや浅い。周辺部は極度に浅い。この「中央深度正常・周辺浅前房」がプラトーアイリスの特徴的パターンである
虹彩所見:虹彩面はフラットまたはやや前弯。虹彩根部が急峻に立ち上がる
隅角鏡所見:ダブルハンプサイン(二重こぶ徴候)が特徴的3)。LPI後の隅角鏡で、虹彩根部が毛様体突起に乗り上げて形成される二重の隆起を認める
急性発作時:角膜浮腫、毛様充血、浅前房、散瞳(中等度散瞳で固定)

プラトーアイリスは閉塞隅角の非瞳孔ブロック機序の代表的な病態である1)。毛様体突起が前方に位置・回旋し、虹彩根部を前方に押し上げることで隅角が狭小化する1)3)。
臨床的にはプラトーアイリス配置(PIC)とプラトーアイリス症候群(PIS)の2つに分類される1)3)4)。
| 項目 | PIC | PIS |
|---|---|---|
| 定義 | 解剖学的な虹彩根部前方位置 | LPI後も隅角閉塞が持続 |
| LPI後 | 隅角は開大する | 散瞳で隅角閉塞が再発 |
| 治療 | 経過観察 | 追加治療が必要 |
PICでは瞳孔ブロックを合併していることが多く、LPIにより隅角は開大する1)。一方PISではLPIで瞳孔ブロックを解除しても、毛様体突起による虹彩根部の押し上げが持続するため隅角閉塞が残る3)4)。
若年者(40歳未満)の急性閉塞隅角発作ではプラトーアイリスを疑う必要がある。
PICは虹彩根部が前方に位置する解剖学的特徴であり、LPIで瞳孔ブロックを解除すると隅角は開大する1)。PISはLPI後も散瞳負荷で2象限以上の虹彩線維柱帯接触(ITC)が残存する病態であり、追加治療が必要となる3)4)。PICの一部がPISに該当するため、LPI後に散瞳負荷試験を行って鑑別する。
急性閉塞隅角発作として発症する場合は、眼痛・頭痛・嘔気・嘔吐・霧視・虹輪視を呈する。慢性型では自覚症状に乏しく、眼圧上昇や視野障害の進行により初めて気づかれることがある。
前眼部所見
前房深度:中央部は正常〜やや浅い。周辺部は極度に浅い。この「中央深度正常・周辺浅前房」がプラトーアイリスの特徴的パターンである
虹彩所見:虹彩面はフラットまたはやや前弯。虹彩根部が急峻に立ち上がる
隅角鏡所見:ダブルハンプサイン(二重こぶ徴候)が特徴的3)。LPI後の隅角鏡で、虹彩根部が毛様体突起に乗り上げて形成される二重の隆起を認める
急性発作時:角膜浮腫、毛様充血、浅前房、散瞳(中等度散瞳で固定)
画像所見
毛様体突起の前方回旋・前方位置が根本的な原因である1)3)。毛様体突起が虹彩根部を前方に押し上げ、線維柱帯を覆うように隅角を閉塞させる。この解剖学的異常は先天的な要素が強い。
散瞳により虹彩根部の組織が隅角に集積し、毛様体突起による押し上げ効果と相まって隅角閉塞が増悪する。
プラトーアイリスの確定診断にはLPI後の評価が必須である1)3)4)。
| 検査 | 役割 |
|---|---|
| 隅角鏡 | ダブルハンプサインの確認 |
| 超音波生体顕微鏡 | 毛様体突起の前方位置の確認 |
| AS-OCT | 隅角パラメータの定量評価 |
PISの診断基準としては、LPI後に散瞳負荷で2象限以上の虹彩線維柱帯接触(ITC)が残存することが用いられる4)。
超音波生体顕微鏡は毛様体突起を直接描出できる唯一の臨床検査であり、プラトーアイリスの診断に最も重要である1)3)。AS-OCTは隅角の形態評価に有用であるが、毛様体突起の描出が困難であるため超音波生体顕微鏡の代替にはならない。
超音波生体顕微鏡がより有用である1)3)。プラトーアイリスの本態は毛様体突起の前方回旋であり、超音波生体顕微鏡は毛様体突起を直接描出できる唯一の臨床検査である。AS-OCTは隅角のパラメータ(AOD・TISA等)を非接触で定量評価できるが、虹彩後方の構造(毛様体突起)は描出困難である。両者を相補的に使用するのが理想的である。
プラトーアイリスの治療は段階的に行う1)2)3)。
まずLPIにより瞳孔ブロックを解除する1)。PICであればこれで隅角は開大し、以後は定期的な隅角鏡検査で経過観察する。PISであれば追加治療が必要となる。
PIS確認後の初期治療として低濃度ピロカルピン(0.5〜1%)を使用する1)3)。縮瞳により虹彩根部を後方に牽引し、隅角を開大させる。ただし長期使用による副作用(調節けいれん・近視化・縮瞳による暗所視力低下)がある。
アルゴンレーザー周辺虹彩形成術(ALPI)はPISに対する有効な治療法である1)2)3)。周辺虹彩にアルゴンレーザーを照射し、虹彩実質を収縮させることで虹彩根部を中心方向に引き込み隅角を開大させる。
レーザー条件として、スポットサイズ200〜500 μm、出力150〜400 mW、照射時間0.3〜0.5秒、20〜40発程度を周辺虹彩に照射する2)。
レーザー治療
LPI:瞳孔ブロックの解除が目的1)。PICとPISの鑑別の第一歩でもある
ALPI:PISに対する追加治療1)2)3)。周辺虹彩を収縮させ隅角を開大させる。効果は経時的に減弱する可能性がある
手術治療
水晶体摘出術:水晶体を除去することで前房が深くなり隅角が開大する3)4)。EAGLE studyでは閉塞隅角に対する水晶体摘出の有効性が示されている3)
濾過手術:上記治療が無効で緑内障が進行する場合に考慮する1)。線維柱帯切除術またはチューブシャント手術が選択される
ALPIの効果は症例により異なるが、経時的に減弱する可能性が報告されている2)。レーザーによる虹彩実質の収縮効果が徐々に緩和されるためである。定期的な隅角鏡検査で隅角開大の維持を確認し、効果不十分の場合はALPIの追加照射や水晶体摘出術を検討する。長期的には水晶体摘出術がより確実な隅角開大効果をもたらす3)。
プラトーアイリスの病態は非瞳孔ブロック機序による隅角閉塞である1)3)。
閉塞隅角の機序は大きく4つに分類される1)。
プラトーアイリスでは毛様体突起が通常より前方に位置し、かつ前方に回旋している1)3)。この異常な毛様体突起の位置関係により、虹彩根部が前方に押し上げられ線維柱帯に接触する。
散瞳時には虹彩根部の組織が周辺部に集積する。通常の眼では毛様体溝にこの余剰組織が収納されるが、プラトーアイリスでは毛様体突起が溝を占拠しているため虹彩組織が隅角方向に押し出され、急性隅角閉塞が発生する。
LPIは虹彩を貫通する孔を作成し瞳孔ブロックを解除するが、毛様体突起の前方位置という根本原因には影響しない1)。このためPISではLPI後も隅角閉塞が持続する。
LPIは虹彩と水晶体の間の圧差(瞳孔ブロック)を解除する治療である1)。プラトーアイリスでは瞳孔ブロックに加えて、毛様体突起の前方回旋による虹彩根部の機械的な押し上げが隅角閉塞の原因となっている3)。LPIは瞳孔ブロックのみを解除し、毛様体突起の位置異常には影響しないため、PISでは隅角閉塞が残存する。ALPIによる虹彩実質の収縮や水晶体摘出による前房深化が追加治療として必要になる。
閉塞隅角の治療においてEAGLE study(Effectiveness of early lens extraction for the treatment of primary angle-closure glaucoma)が大きな転機をもたらした3)4)。この研究では原発閉塞隅角症/原発閉塞隅角緑内障に対して早期水晶体摘出がLPIより眼圧コントロール・QOL・費用対効果に優れることが示された。
プラトーアイリスに対しても水晶体摘出の有効性が注目されている。水晶体除去により前房が深化し、毛様体突起と虹彩根部の位置関係が改善することで隅角が開大する3)。
AS-OCTと超音波生体顕微鏡の技術進歩により、閉塞隅角の機序別分類がより精密になりつつある3)。毛様体突起の定量的評価やAI支援による隅角評価の自動化が研究されている。
今後の課題として、PISに対する水晶体摘出単独と水晶体摘出+ALPI併施の長期比較や、若年PIS患者に対する最適な治療戦略の確立が挙げられる。
- 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition. 2020.
- European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.
- American Academy of Ophthalmology. Primary Angle-Closure Disease Preferred Practice Pattern®. 2020.