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緑内障

小児ぶどう膜炎続発緑内障

1. 小児ぶどう膜炎続発緑内障とは

Section titled “1. 小児ぶどう膜炎続発緑内障とは”

小児ぶどう膜炎は比較的まれな疾患であり、推定有病率は人口10万人あたり約30例である2)非感染性ぶどう膜炎が小児ぶどう膜炎の69〜95%を占める2)。特定可能な原因として最も多いのは若年性特発性関節炎(JIA)であり、全症例の41〜47%を占める2)

緑内障は小児ぶどう膜炎の重大な合併症である。小児ぶどう膜炎患者の5〜42%が緑内障または高眼圧症を発症し、全小児緑内障症例の5.3〜19%がぶどう膜炎に起因する。World Glaucoma Association(WGA)の分類では、ぶどう膜炎続発緑内障は「後天要因による続発緑内障」に分類される1)

白内障・緑内障・黄斑浮腫を含む眼合併症は小児ぶどう膜炎症例の最大76%に報告されている2)。Cannらの166例の研究では、若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎(JIA-U)の小児は特発性ぶどう膜炎と比較して緑内障の発症が有意に多かった(p=0.002)2)

Q 若年性特発性関節炎とぶどう膜炎続発緑内障はどのように関連しますか?
A

若年性特発性関節炎は16歳以下に発症する原因不明の慢性関節炎であり、小児ぶどう膜炎の最も多い原因である。ぶどう膜炎は少関節型若年性特発性関節炎の約20%に、多関節型の約5%に発症する。若年性特発性関節炎-Uでは慢性の前部ぶどう膜炎により線維柱帯の障害や虹彩癒着が生じ、続発緑内障は19〜25%に合併する3)。特発性ぶどう膜炎と比較して若年性特発性関節炎-Uでは緑内障発症率が有意に高い2)

小児ぶどう膜炎緑内障の細隙灯所見
小児ぶどう膜炎緑内障の細隙灯所見
Ioannis Halkiadakis; Kalliroi Konstantopoulou; Vasilios Tzimis; et al. Update on Diagnosis and Treatment of Uveitic Glaucoma. Journal of Clinical Medicine. 2024 Feb 20. Figure 1. PMCID: PMC10931771. License: CC BY.
角膜後面沈着物や前房炎症を伴う前眼部所見を示す細隙灯写真である。角膜内皮面の沈着物と前房炎症がぶどう膜炎関連緑内障の活動性を示している。

若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎は”white uveitis”と形容される。毛様充血や眼痛を伴うことが少なく、視力低下も自覚しにくい。そのため発見が遅れやすい。眼科受診は10歳前後となることが多いが、実際のぶどう膜炎発症は1〜6歳頃と推定される。

前眼部所見

帯状角膜変性:初診時にすでに合併していることが多い

併発白内障:最も発生率が高い眼合併症であり、発生率は0.05/眼年(EY)である2)

虹彩後癒着:初診時の最多合併症で18.4%にみられる2)

角膜後面沈着物:非肉芽腫性の微細な沈着物が典型的である

眼圧関連所見

眼圧上昇:若年性特発性関節炎-Uでは特発性ぶどう膜炎より眼圧上昇が有意に多い(p=0.05)2)

緑内障合併:若年性特発性関節炎-Uの緑内障合併率は9.4〜30%と報告により幅がある2)

視神経乳頭陥凹拡大:緑内障性変化は多くの場合ぶどう膜炎発症から10年以上経過して出現するが、急速に進行することもある

若年性特発性関節炎が最も重要な原因疾患である。若年性特発性関節炎は臨床的に全身型と関節型に分類され、関節型はさらに少関節型・多関節型に分類される。ぶどう膜炎は少関節型に最も多く約20%に発症する。抗核抗体(ANA)はぶどう膜炎を有する若年性特発性関節炎症例の約80%で陽性を示し、診断的価値が高い。

続発緑内障は19〜25%の患者にみられ、予後不良因子の1つである3)。緑内障の発症機序は以下の3つに大別される。

  • 全周性の虹彩後癒着からの急性緑内障発作
  • 慢性虹彩毛様体炎による隅角の虹彩前癒着形成
  • 長期間のステロイド投与によるステロイド緑内障
因子詳細
若年性特発性関節炎少関節型緑内障リスクが最も高い
ANA陽性ぶどう膜炎合併の~80%で陽性
ステロイド長期使用約20%でステロイド誘発性高眼圧

ステロイド誘発性の眼圧上昇は副腎皮質ステロイド治療を受けた小児の約20%に生じる。小児ではステロイド誘発性高眼圧を放置した場合、成人より急速に緑内障が進行する傾向がある。

Q ステロイド誘発性の高眼圧とぶどう膜炎続発の高眼圧はどう鑑別しますか?
A

活動性の炎症がある状態での眼圧上昇は通常ぶどう膜炎に続発するものである。この場合はステロイド投与頻度を増やし炎症を抑制すれば眼圧は低下する。一方、炎症がコントロールされているにもかかわらず眼圧が高い場合はステロイドレスポンスの可能性が高く、ステロイドの減量・中止が必要となる。

小児緑内障の診断にはWGAの診断基準を用いる1)。眼圧21 mmHg超、C/D比増大の進行、角膜所見(Haab線・角膜径拡大)、眼軸長の異常伸長、緑内障性視野欠損の5項目のうち2項目以上を満たすものとされている1)

検査においては以下の点に注意する。

  • 眼圧測定:反跳式眼圧計(iCare)が有用。全身麻酔薬は眼圧を下降させる
  • 隅角検査:開放隅角か閉塞隅角かの鑑別が治療方針に直結する
  • 前房の炎症評価:前房細胞・フレアの程度を評価する
  • 炎症性vs.ステロイド性の高眼圧の鑑別

乳幼児・低年齢児では全身麻酔下での検査が必要となることが多い1)。若年性特発性関節炎-U患者では三次医療機関への紹介患者はlogMAR 0.3超の視力障害を発症する可能性が有意に高く(p=0.03)、初診時の虹彩後癒着もlogMAR 1.0以上の視力障害のリスク因子であった(p=0.01)2)

全身性炎症性疾患の治療とぶどう膜炎のコントロールが、続発緑内障の予防と進行抑制の基盤となる。リウマチ科との共同管理が不可欠である。小児ぶどう膜炎続発緑内障では点眼薬のみによる成功率は17〜26%と低い。

小児では点眼薬であっても体重・体表面積に比して投与量が多くなることに注意が必要である1)。涙点閉鎖やゲル製剤の使用が副作用軽減に有用である。

第一選択薬

β遮断薬(チモロール):第一選択の単剤療法。ゲル化液は1日1回投与でアドヒアランスが良好。喘息・不整脈・無呼吸の小児には禁忌

炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド):β遮断薬との併用療法として最も多く使用。経口アセタゾラミドも有効だが副作用が多い

その他の薬剤

プロスタグランジン関連薬:ぶどう膜炎・嚢胞様黄斑浮腫のリスク増加はないとされる。1日1回投与

α2作動薬(ブリモニジン):2歳未満は絶対禁忌。6歳未満・体重20 kg未満は相対禁忌1)4)

縮瞳薬(ピロカルピン):活動性ぶどう膜炎では禁忌

薬物治療が不十分な場合は手術治療に移行する1)。隅角手術が第一選択であり、不成功の場合は濾過手術やGDDが考慮される1)4)

術式成績の要約
隅角切開術72%成功(98.9ヶ月)
線維柱帯切開術81.8%成功
濾過術+MMC+TNF阻害薬5年成功率73%

隅角切開術は線維柱帯を内側から切開し房水流出を改善する。小児ぶどう膜炎続発緑内障40眼の検討では、最終フォローアップ時に72%で手術的成功が達成された。成功群の平均眼圧は35.8→14.7 mmHgに低下した。有水晶体眼と10歳未満が成功の予測因子であった。

線維柱帯切開術では術後の平均眼圧が31.4→15.0 mmHgに低下し、緑内障治療薬は4.2→0.4剤に減少した。

濾過手術ではミトマイシンC(MMC)併用が標準的である。注目すべきはTNF阻害薬併用の効果であり、MMC単独の5年成功率がわずか16%であったのに対し、MMCとTNF阻害薬の併用では73%であった。

**緑内障ドレナージデバイス(GDD)**手術では、Molteno GDDの27眼の検討で90%が成功(眼圧6〜22 mmHg)を達成した。Ahmed緑内障バルブでも全眼で眼圧7〜18 mmHgが維持された。

毛様体破壊術は上記治療が無効な場合に考慮するが、成功率は32%と低く、炎症を増悪させるリスクがある1)

Q 小児ぶどう膜炎続発緑内障の手術成績はどの程度ですか?
A

術式により大きく異なる。隅角切開術は72%(98.9ヶ月)、線維柱帯切開術は81.8%の成功率が報告されている。濾過手術ではMMC単独の5年成功率が16%と低いが、TNF阻害薬併用では73%と大幅に改善する。GDD手術ではMolteno GDDで90%の成功率が報告されている。毛様体破壊術は32%と最も低い。全般に成人のぶどう膜炎続発緑内障より手術成績が劣る傾向がある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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ぶどう膜炎続発緑内障の発症機序は開放隅角型と閉塞隅角型に大別される3)

線維柱帯(TM)閉塞が最も多い機序である3)。血液房水関門(BAB)の破綻により炎症細胞が房水中に流入し、正常な血清成分とともに房水流出路に捕捉される3)。さらに線維柱帯板の膨化や炎症性残渣の沈着がTMの通過性を低下させる。線維柱帯炎(trabeculitis)は直接的にTM機能を障害する。

慢性炎症により線維柱帯に永久的な瘢痕化が生じると、不可逆的な流出障害となる。ぶどう膜炎患者の約20%に緑内障がみられる3)

周辺虹彩前癒着(PAS)の形成、虹彩後癒着による瞳孔ブロック、または線維性膜の形成により隅角が機械的に閉塞される。全周性の虹彩後癒着は急性緑内障発作を引き起こすことがある。

長期間のステロイド投与によりTMの細胞外マトリックスが変化し、房水流出抵抗が増大する。小児ではステロイド誘発性高眼圧を放置した場合、より早期かつ急速に緑内障が進行する傾向がある。

生物学的製剤の導入により小児ぶどう膜炎の視力予後が改善している2)。Cannらの研究では生物学的製剤使用率は34.9%であり、過去の報告と比較して視力障害率・眼合併症率の改善が示された2)。特にアダリムマブは31.3%の患者に使用され、最も多い生物学的製剤であった2)

TNF阻害薬のぶどう膜炎続発緑内障に対する手術成績への影響は注目に値する。MMCとTNF阻害薬を併用した濾過手術の5年成功率は73%であり、MMC単独の16%と比較して大幅に良好であった。

低侵襲緑内障手術(MIGS)の小児への応用も進んでいる。隅角鏡補助下経管腔的線維柱帯切開術(GATT)の若年性特発性関節炎関連緑内障に対する有望な結果が報告されており、3眼で眼圧が40〜66%減少した。

今後の課題として、小児ぶどう膜炎続発緑内障に特化したRCTの実施、生物学的製剤の長期的な眼圧への影響の評価、MIGSの小児における安全性・有効性データの蓄積が挙げられる。

  1. 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.
  1. Cann M, Ramanan AV, Crawford A, et al. Outcomes of non-infectious paediatric uveitis in the era of biologic therapy. Pediatr Rheumatol. 2018;16:51.
  1. Bodh SA, Kumar V, Raina UK, et al. Inflammatory glaucoma. Oman J Ophthalmol. 2011;4(1):3-9.
  1. European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. Br J Ophthalmol. 2025.

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