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緑内障

視神経乳頭ドルーゼン(Optic Nerve Head Drusen)

視神経乳頭ドルーゼン(optic disc drusen; ONHD)は、視神経前部の篩状板に硝子様物質が沈着し石灰化した粒状の構造物である。先天性の疾患であるが、幼少期には目立たず、健診や他疾患を契機とした眼底検査で偶然発見されることが多い。

検眼鏡的には表在型と埋没型に分類される。

  • 表在型:乳頭面上に黄白色の結節として観察される。半透明で徹照法(retroillumination)で最もよく確認できる
  • 埋没型:乳頭浮腫状を呈し、生理的陥凹が不明瞭化する。偽乳頭浮腫(pseudopapilledema)との鑑別が重要となる

有病率は0.34%(臨床研究)〜2%(剖検研究)である。わが国での発生率は0.04%と欧米よりやや低い。3/4の症例が両眼性であり、常染色体優性遺伝(不完全浸透)の関与が示唆されている。

緑内障の鑑別診断において、視神経乳頭ドルーゼンは非緑内障性の視神経乳頭異常として考慮すべき疾患の一つである1)2)

Q 乳頭ドルーゼンは加齢黄斑変性のドルーゼンと同じものですか?
A

異なる疾患である。加齢黄斑変性ドルーゼン網膜色素上皮下に蓄積する沈着物であり、黄斑部に生じる。視神経乳頭ドルーゼンは視神経乳頭内の軸索変性に伴う石灰化沈着物であり、発生部位・成因・臨床的意義のすべてが異なる。

通常は無症状で経過する。緩徐に進行するため視野障害を自覚しにくい。まれに以下を訴えることがある。

  • 一過性視力障害(TVO):発生率は8.6%と報告され、一過性の乳頭虚血に続発すると考えられる
  • 突然の視力低下・視野欠損:視神経乳頭内の虚血が原因と考えられる
  • 視神経乳頭の隆起:陥凹を欠き境界が不鮮明または不整。乳頭の鼻側半分に多い
  • 視野障害:70〜90%に生じる。表在型より埋没型で高率。Mariotte盲点拡大・周辺視野狭窄・弓状暗点など多様なパターンを示す
  • 網膜神経線維層NFL)の菲薄化:ドルーゼンが可視化される眼で検出される。視野欠損に先行することが多い
  • 合併症網膜色素変性症網膜血管条紋(angioid streaks)との関連。小乳頭の合併が多い。まれに火炎状出血・NA-AION・乳頭周囲網膜下新生血管が発生する

表在型ドルーゼン

外観:乳頭面上に黄白色〜桃色の結節が見える

視野障害:可視ドルーゼンのある眼の71%に視野欠損

NFL変化:ドルーゼンが密集する象限に一致した局所的菲薄化。びまん性の場合もある

診断:眼底検査で比較的容易に同定可能

埋没型ドルーゼン

外観:乳頭浮腫状で境界不鮮明。偽乳頭浮腫を呈する

視野障害:偽乳頭浮腫のみを呈する眼の25〜30%に視野欠損

NFL変化:レッドフリー撮影ではNFL変化を示しにくい

診断:超音波Bモード・CT・OCTによる石灰化の検出が必要

正確な病因は不明であるが、軸索の変性副産物であると考えられている。

  • 小さな強膜管が正常な軸索流(axoplasmic flow)を妨げ、鬱滞を引き起こす
  • 異常な軸索代謝によりミトコンドリア内にカルシウム結晶が沈着する
  • 細胞外空間へ排出された微小体が継続的に石灰化し融合する

ドルーゼンは加齢とともに増大し、NFLの菲薄化と視野欠損の両方が経時的に緩徐に進行する。年1.6%程度の視野狭窄の悪化が報告されている。

  • 遺伝:常染色体優性遺伝(不完全浸透)。家族歴の聴取が重要
  • 小乳頭(crowded disc):小さな視神経乳頭では軸索が密集し、ドルーゼン形成のリスクが高まる3)

乳頭ドルーゼンは視神経乳頭の混雑(crowding)を誘発し、まれに50歳未満の患者でNA-AIONの発症と関連することが報告されている3)

視神経乳頭の隆起・陥凹欠如・境界不鮮明を確認する。充血の欠如、乳頭表面の微細血管異常がない点がうっ血乳頭との鑑別点となる。散瞳下での眼底検査を含む包括的な評価が必要である2)

  • 超音波Bモード検査:石灰化ドルーゼンの後方に音響陰影を伴う高輝度エコーを検出する。乳頭浮腫では眼窩内視神経の拡大を認めるが、ドルーゼンでは認めない
  • CT:骨窓設定で視神経乳頭レベルの石灰化を描出する。うっ血乳頭との鑑別にも有用
  • OCT:埋没・表在の両方を検出可能であり、現在のゴールドスタンダードと見なされている4)。乳頭周囲RNFL厚の定量評価が可能。断面画像でPHOMS(peripapillary hyperreflective ovoid mass structures)の同定にも有用
  • 自発蛍光(autofluorescence):共焦点レーザー走査型眼底検査装置のブルーライトで乳頭内に境界鮮明な過蛍光を認める4)
  • 蛍光眼底造影(FA):後期の局所的過蛍光と乳頭周囲血管壁の染色。乳頭浮腫ではびまん性の早期漏出を示す点が鑑別となる
所見乳頭ドルーゼンうっ血乳頭
色調黄白色赤色
生理的陥凹消失保存(初期)
出血まれあり
  • うっ血乳頭:頭蓋内圧亢進による。充血・出血・静脈拍動消失を伴う
  • 視神経炎:急性視力低下・眼痛を伴う
  • 緑内障性視神経乳頭陥凹:陥凹拡大とリム菲薄化。ドルーゼンでは陥凹がない1)
Q 乳頭ドルーゼンと乳頭浮腫はどう見分けますか?
A

乳頭ドルーゼンでは充血がなく、乳頭面上の毛細血管拡張や出血を認めず、乳頭上の血管を明瞭に追うことができる。確定診断には超音波Bモード検査での石灰化検出やOCTが有用である4)。蛍光眼底造影では乳頭からの色素漏出を認めない点がうっ血乳頭との鑑別点となる。経過観察で乳頭所見に変化がないことも偽乳頭浮腫の確定に重要である。

ドルーゼンそのものを治療する方法はない。合併症に対する管理・治療が主体となる。

  • 経過観察:定期的な乳頭ドルーゼンの形態変化の確認と視野検査を長期的に行う。慢性進行性疾患であるため、定期フォローが不可欠である
  • 眼圧管理:眼圧下降は神経保護として機能する可能性があるが、ONHDにおける有効性は確立されていない
  • 合併症治療脈絡膜新生血管が発生した場合は光凝固を考慮する。NA-AIONを合併した場合はそれに準じた管理を行う
Q 乳頭ドルーゼンは治りますか?
A

現時点で乳頭ドルーゼンを消失させる治療法はない。ドルーゼンは加齢とともに増大する傾向がある。ただし視覚障害は通常軽度であり、急激に視力が低下することは少ない。定期的な検査で合併症の早期発見と管理を行うことが最善の対応である。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

視神経乳頭ドルーゼンの超微形態学的研究では、以下の過程が示されている。

  1. 小さな強膜管が軸索流を物理的に妨げ、軸索内に鬱滞が生じる
  2. 軸索のミトコンドリア内に針状のカルシウム結晶が沈着する
  3. 形質膜が破壊され、軸索成分が間質空間に漏出する
  4. 細胞外ミトコンドリアに重度のカルシウム結晶沈着が蓄積する
  5. 微小体が継続的に石灰化・融合し、直径5〜1000μmのコロイド体を形成する

ドルーゼンは2〜3個の小結節から最大40〜50個の集合体まで様々である。

視野障害の原因として、ドルーゼンによる視神経線維への直接圧迫、視神経乳頭の虚血、軸索流障害が考えられている3)。乳頭ドルーゼンの大きさや局在と視野は必ずしも一致しない。

混雑した視神経乳頭(crowded disc)との関連

Section titled “混雑した視神経乳頭(crowded disc)との関連”

ドルーゼンは軸索輸送の変化により蓄積した石灰化物質の集合体であり、視神経乳頭の混雑を悪化させる。これがまれにNA-AIONの発症と関連し、特に50歳未満の患者でその傾向が強い3)。多施設後方視的研究では、50歳未満のNA-AION患者の50%以上にOCTで乳頭ドルーゼンが同定された3)

OCTは埋没ドルーゼンと表在ドルーゼンの両方を非侵襲的に検出できる画像診断法として、現在のゴールドスタンダードと位置づけられている4)。断面画像による埋没ドルーゼンの同定やPHOMSの検出が可能であり、従来の超音波Bモード検査では見逃されていた非石灰化の埋没ドルーゼンの検出にも有用である。

視神経乳頭ドルーゼンは慢性進行性の視神経疾患であり、年1.6%程度の視野狭窄の悪化が報告されている。NFLの菲薄化は臨床的に可視化されるドルーゼンの程度と相関し、多くの場合、視野欠損に先行して現れる。

乳頭ドルーゼンは、まれにNA-AIONの発症と関連する。特に50歳未満の患者では、ドルーゼンが視神経乳頭の過度な混雑を誘発し、虚血のリスクを高める可能性がある3)

  • 眼圧下降がONHDの視野進行を抑制するかどうかの検証
  • ペントキシフィリン等の血管活性療法の有効性評価
  • AI・ディープラーニングを用いた埋没ドルーゼンの自動検出システムの開発
  1. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2021;128:P51-P124.

  2. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2020;127:P97-P133.

  3. Salvetat ML, Pellegrini F, Spadea L, et al. Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy (NA-AION)—A Comprehensive Review. Vision. 2023;7:72.

  4. Mollan SP, Mytton J, Tsermoulas G, et al. Idiopathic intracranial hypertension: evaluation of admissions and emergency readmissions through the hospital episode statistic dataset between 2002-2020. Eye. 2024;38:1413-1419.

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