眼局所因子
垂直C/D比の増大:陥凹乳頭径比が大きいほどリスクが高い2)
薄い中心角膜厚(CCT):OHTSの13年間分析でリスク因子として特定された2)
乳頭周囲萎縮(PPA):βゾーンPPAの存在および面積がDHと有意に関連
乳頭周囲脈絡膜血管密度の低下:OCTA研究で乳頭出血部位と空間的に一致する脈絡膜微小血管脱落が確認されている
低い平均動脈眼灌流圧:正常眼圧緑内障患者における乳頭出血発症のリスク因子

視神経乳頭出血は、視神経乳頭縁に対して垂直方向に配向した破片状(splinter)または火炎状(flame-shaped)の出血である。篩状板前(prelaminar)の視神経乳頭に位置し、乳頭周囲帯を横切って隣接する表層の網膜神経線維層(RNFL)まで伸展する。より深層の出血は円形で斑点状に見えることもある。
乳頭出血は緑内障性変化を持つ視神経乳頭に特異的に生じ、正常眼圧緑内障で頻度が高い。好発部位は乳頭の耳下側・耳上側であり、約80%はリムのノッチング(局所的陥凹)や網膜神経線維層欠損の存在部位と一致する。
乳頭出血は緑内障の兆候がない眼にも起こりうるが、緑内障眼では疾患進行の指標となる1)。臨床検査において乳頭出血を積極的に探すことが推奨される3)。
自覚症状はないため、自分で気づくことは困難である。眼底検査で偶然発見されることがほとんどであり、定期的な眼科検査が重要である。OHTS研究では、臨床診察で検出された乳頭出血は全体の16%にとどまり、84%は読影センターでの眼底写真レビューで初めて発見された2)。
乳頭出血自体による自覚症状はない。視力低下や視野異常を自覚する場合は、乳頭出血そのものではなく背景にある緑内障の進行によるものである。
一般集団での有病率は0.6〜1.4%である。Blue Mountains Eye Studyでは1.4%、Beaver Dam Eye Studyでは0.9%、日本の大規模スクリーニングでは0.6%であった。
緑内障タイプ別では頻度が異なる。Blue Mountains Eye Studyで開放隅角緑内障(OAG)参加者の13.8%に乳頭出血を認めた。内訳は高眼圧緑内障8%、低眼圧緑内障25%であった。正常眼圧緑内障(NTG)では20.5〜33.3%と高頻度である。全体として、進行期よりも初期の緑内障で、また高眼圧緑内障よりもNTGでより頻繁に観察される。
乳頭出血の正確な発生機序は未解明であるが、「機械的仮説」と「血管性仮説」の2つが主に提唱されている。病態生理の詳細は「病態生理学・詳細な発症機序」の項を参照。
眼局所因子
垂直C/D比の増大:陥凹乳頭径比が大きいほどリスクが高い2)
薄い中心角膜厚(CCT):OHTSの13年間分析でリスク因子として特定された2)
乳頭周囲萎縮(PPA):βゾーンPPAの存在および面積がDHと有意に関連
乳頭周囲脈絡膜血管密度の低下:OCTA研究で乳頭出血部位と空間的に一致する脈絡膜微小血管脱落が確認されている
低い平均動脈眼灌流圧:正常眼圧緑内障患者における乳頭出血発症のリスク因子
全身因子
加齢:複数の住民調査で一貫して有意な関連1)
女性:Healey、Yamamoto、Bengtssonらの研究で有意3)
血管疾患:狭心症・心筋梗塞・脳卒中との関連が報告2)
全身高血圧:関連を示す報告と否定する報告の両方がある
季節的気温変化:低温が眼圧上昇と眼血流低下を引き起こし、冬期に発生率が上昇する可能性
乳頭出血は緑内障の危険因子の代表であり、出現後の視野障害の進行が速い。原発開放隅角緑内障よりもNTGで頻度が高く、中心10°内の視野障害の頻度も高い。より積極的な治療を必要とするサインと考えられている1)。
| 全身因子 | 主な報告 |
|---|---|
| 加齢・女性 | 複数の大規模研究で一貫 |
| 血管疾患 | Healey、Budenz |
| 片頭痛 | Healey、Furlanetto |
必ずしもそうではない。Blue Mountains Eye Studyでは乳頭出血の70%が緑内障のない眼で観察された。しかし、乳頭出血の存在は緑内障発症リスクの上昇と関連しており2)、発見時に緑内障の診断基準を満たさなくても、その後に進行する可能性がある。乳頭出血を認めた場合は、必ず緑内障の精密検査を受けることが重要である。
視神経乳頭および乳頭周囲網膜の観察は、高倍率の前置レンズ(78D・90Dなど)と細隙灯顕微鏡を用いて行う4)。所見を記述し、乳頭出血の部位を図示し、眼底写真を撮影する。
臨床検査のみでは見逃しが多い。OHTSでは臨床現場での検出率が16%にとどまり、読影センターでの年次写真レビューで84%が検出された2)。乳頭出血を積極的に探す姿勢が重要である3)。
乳頭出血の記録と経過観察に最も有効な方法の一つである4)。立体写真の撮影が望ましい。乳頭を中心とし、画角30°程度での撮影が適している。
現在のOCT等の視神経乳頭イメージング技術は、乳頭出血を確実に特定することはできない。イメージングは臨床検査の補助として位置づけられる。
人工知能(AI)・ディープラーニングを用いた眼底写真からの乳頭出血検出が研究されている。一部のモデルでは臨床医と同等の感度・特異度が報告されているが、現時点では臨床使用には至っていない。
乳頭出血は緑内障と強く関連するが、他の原因も考慮する必要がある。
詳細な病歴聴取と非緑内障性視神経症の除外が重要である。
乳頭出血自体を治療する方法はない。出血は平均6〜12週間で自然消退する。
乳頭出血の発見は以下の臨床的対応を促す。
乳頭出血の存在は、より低い目標眼圧の設定を正当化する因子の一つである1)。視神経損傷の重症度、進行速度、家族歴、年齢などとともに総合的に判断する。
乳頭出血そのものに対する治療法はなく、出血は数週間から数ヶ月で自然に消退する。重要なのは背景にある緑内障の管理である。乳頭出血が見つかった場合は緑内障の精密検査を行い、必要に応じて眼圧下降治療を開始または強化する1)。
篩状板における機械的な剪断力、あるいはRNFL欠損の拡大境界部における毛細血管網の損傷により出血が生じるとする仮説である。一次的な障害は神経変性であり、結合組織の変化・篩状板のリモデリング・グリア瘢痕形成による牽引が微小血管網を損傷し、二次的に出血が発生する。
眼圧に関連した結合組織への圧迫と緊張(stress and strain)が、篩状板・軸索・血管内皮細胞などの視神経乳頭構成組織に病態生理学的な影響を与えるという理論が基盤にある。
視神経頭部における虚血性微小梗塞や血液網膜関門の破綻など、一次的な血管障害が出血の原因であるとする仮説である。
OCTアンギオグラフィ(OCTA)を用いた研究では、乳頭出血のある眼の46.3%に出血部位における乳頭周囲脈絡膜微小血管脱落が認められ、出血のない眼の29.4%と比較して高頻度であった。さらに濃度測定研究により、乳頭出血の血液は動脈由来である可能性が示唆されている。
乳頭出血を伴う開放隅角緑内障眼は、出血のない開放隅角緑内障眼と比較して乳頭周囲脈絡膜血管密度が有意に低い。脈絡膜の欠損領域は局所的であり、しばしば乳頭出血部位と空間的に一致する。
乳頭出血は緑内障の眼圧非依存性危険因子の代表である。最も代表的でエビデンスが示されている局所・全身の循環障害と密接に関連し、乳頭周囲萎縮(PPA)、低い眼灌流圧、低い拡張期・収縮期血圧などと同列の因子として位置づけられる。
33眼の研究では、既存の神経縁ノッチがあるすべての眼において、その後にノッチ部位またはその隣接部位に乳頭出血が発生した。リムのノッチが乳頭出血に先行し(平均21.5ヶ月)、出血がノッチ部位またはその近傍で発生するという観察結果は、緑内障性損傷が出血の出現前から始まっているという理論を裏付ける。
OHTS(高眼圧症治療研究)
13年間の追跡分析2):乳頭出血のある眼の原発開放隅角緑内障累積発症率は25.6%(出血なし12.9%)。多変量解析でDHの存在は原発開放隅角緑内障発症リスクを3.7倍に高めた
DH検出率:臨床現場での検出は16%にとどまり、読影センターでの写真レビューで84%が検出された2)
OHT患者の発生率:0.5%/年と低いが、原発開放隅角緑内障発症後は1.2%/年に倍増
その他の大規模試験
近年のレビューでは、乳頭出血は発症の原因となるリスク因子というよりも、進行中の緑内障性損傷の指標である可能性が議論されている。乳頭出血が発生する前に検出不可能な早期の軸索消失が起こっており、出血は緑内障進行の結果として発生するとする見解がある。一方、RNFL欠損の拡大中に毛細血管が破壊されるために出血が生じるとする説もある。
眼底写真の質を向上させ乳頭出血の検出を支援するAI手法が研究されている。一部のモデルでは臨床医と同等の感度・特異度が報告されているが、臨床実装には至っていない。
まず緑内障の精密検査(眼圧測定・隅角検査・視野検査・OCTなど)を受けることが重要である2)。既に緑内障と診断されている場合は、視野検査の頻度を増やし、眼圧下降治療の強化を検討する。乳頭出血自体は数週間〜数ヶ月で自然消退するが、緑内障の進行を示唆する可能性があるため、定期的な経過観察を継続する必要がある。
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Salvetat ML, Pellegrini F, Spadea L, et al. Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy (NA-AION)—A Comprehensive Review. Vision. 2023;7:72.