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緑内障

モーニンググローリー乳頭異常(朝顔症候群)

1. モーニンググローリー乳頭異常とは

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モーニンググローリー乳頭異常(Morning Glory Disc Anomaly: MGDA)はKindlerによって報告された視神経乳頭の先天異常である。灰白色を呈した乳頭領域の拡大と漏斗状陥凹、陥凹底の乳頭前白色組織、乳頭周囲の網脈絡膜色素異常、網膜血管の異常走行を特徴とする。朝顔(モーニンググローリー)の花に形態が類似していることからこの名がつけられた。全身的な徴候を伴う場合はモーニンググローリー症候群と呼ばれる。

片眼性が多いが、両眼性の報告もある。遺伝性は明らかでない。女性に多く、アフリカ系アメリカ人では稀とされる。緑内障との鑑別を要する先天性視神経乳頭異常の一つとして位置づけられている3)

Q モーニンググローリー異常は緑内障ですか?
A

モーニンググローリー異常は緑内障ではなく、視神経乳頭の先天異常である。ただし乳頭陥凹の拡大が緑内障性変化と紛らわしい場合があり、緑内障の鑑別診断として重要な疾患に挙げられている3)

視力は正常に近いものから手動弁まで幅広い。陥凹の大きさや黄斑の位置(陥凹との関係)、網膜剥離合併の程度による。出生時から視力不良であることも多い。小児では片眼の視力不良や斜視で気づかれることが多い。白色瞳孔(leukocoria)を契機に受診する場合もある。

  • 乳頭領域の拡大と漏斗状陥凹:視神経乳頭が大きく漏斗状に見える。乳頭周囲にぶどう腫様の陥凹が存在し、超音波・CT・MRIで判定可能
  • 陥凹底の白色組織:グリアの増殖または第1次硝子体過形成遺残と考えられている。乳頭の形態はこの白色組織に覆われて不明瞭
  • 網膜血管の異常走行:白色組織の下から始まり、通常より本数が多く狭細で、放射状・直線状に走行する
  • 乳頭周囲の色素異常:網脈絡膜色素沈着が認められる。多くの症例で乳頭下方に舌状の網脈絡膜萎縮病変がある
  • 黄斑巻き込み(macular capture):黄斑が陥凹方向に牽引され観察できない場合がある
  • 瞳孔求心路障害(APD):片眼性のため認められることがある
  • 網膜剥離の合併:乳頭近傍から始まる網膜剥離がしばしば合併する。約30%で漿液性黄斑病変を伴う

MGDAの胚発生学的な起源は明確ではない。胎生裂(fetal fissure)の閉鎖不全、あるいは一次的な間葉系(mesenchymal)の異常によるとする仮説が提唱されている。多くの症例で乳頭下方に眼杯裂閉鎖不全との関連を示す舌状の網脈絡膜萎縮病変が認められる。後部強膜の形成不全が関与する症例もある。

MGDAは中枢神経系を含む全身的な合併症を伴うことがある。

頭蓋内構造異常

経蝶形骨基底部脳瘤:蝶形骨の欠損部を通じて髄膜が突出する先天異常。視交叉や視床下部を含むことがある1)。幅広の頭部・扁平な鼻・両眼隔離症・上唇中央裂など中正線欠損を認める

脳梁欠損:経蝶形骨脳瘤患者の多くに合併する

下垂体茎重複(PSD):稀であるが、MGDAやもやもや病を呈する患者で報告されている

脳血管異常

もやもや病:脳動脈の進行性狭窄・閉塞を特徴とする脳血管疾患

脳動脈の低形成:MGDAとの合併が報告されている

PHACE症候群:後頭蓋窩奇形・巨大顔面血管腫・動脈異常・心血管異常・眼異常の合併

Q モーニンググローリー異常に脳の検査は必要ですか?
A

必要である。経蝶形骨基底部脳瘤やもやもや病などの頭蓋内構造・血管異常を合併する可能性がある1)。特に小児では脳MRIやMRA検査による評価が推奨される。

眼底検査で特徴的な視神経乳頭所見(漏斗状陥凹、白色グリア組織、放射状血管走行、乳頭周囲色素異常)を確認することで臨床診断が可能である。

  • OCT:乳頭上のグリア組織や神経感覚網膜剥離の評価に有用。乳頭周囲脈絡膜新生血管膜(PPCNVM)の検出にも使用できる2)
  • 超音波検査:乳頭陥凹の深さと網膜剥離の有無を非侵襲的に評価可能
  • 脳MRI・MRA:経蝶形骨基底部脳瘤やもやもや病などの頭蓋内異常の検索に必須
疾患MGDA との鑑別点
視神経コロボーマ下方の白い陥凹。中央グリア組織・周囲色素沈着を欠く
乳頭周囲ブドウ腫陥凹底に正常乳頭が認められる。正常血管走行
緑内障性乳頭陥凹後天性の進行性変化3)視野欠損パターンが異なる

MGDA自体に対する直接的な治療法はない。弱視を防ぐための視力最適化が重要であり、6歳以下で黄斑が確認できた場合には弱視治療を検討する。

網膜剥離は乳頭近傍から始まり、乳頭周囲に限局していることが多い。限局例では網膜下液が髄液由来の可能性が高く、経過観察とする場合がある。自然軽快の報告もみられる。

進行した網膜剥離では、乳頭陥凹内に小さな裂孔を合併していることが多く硝子体手術を行う。術式は以下の通りである。

  • 硝子体ゲルの切除
  • 液空気置換と眼内網膜下液排液
  • 乳頭周囲の光凝固
  • 長期滞留ガスによるタンポナーデ

再発例・難治例ではブチルシアノアクリレート(網膜糊)の裂孔部塗布が試みられている。小児例ではシリコーンオイルタンポナーデが用いられることがあるが、くも膜下腔への迷入が危惧される。

Q 網膜剥離を合併した場合どのように治療しますか?
A

乳頭周囲に限局した網膜剥離は経過観察とすることがある。進行例では硝子体手術(液空気置換・乳頭周囲光凝固・ガスタンポナーデ)を行う。術後の網膜復位は非常にゆっくり進み、数ヶ月〜1年以上を要することがある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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陥凹底の白色組織の由来についてはグリアの増殖説と第1次硝子体過形成遺残説がある。乳頭下方の舌状の網脈絡膜萎縮病変は眼杯裂閉鎖不全との関連を示唆する所見である。後部強膜の形成不全が陥凹の形成に関与している可能性も指摘されている。

網膜下液の由来として複数の機序が考えられている。

  • 髄液由来:脊髄腔に投与した造影剤がくも膜下腔から網膜下腔に連続した所見が観察された症例があり、髄液と網膜下液の交流が示唆されている
  • 異常血管からの漏出:陥凹部の異常血管からの漿液漏出
  • 牽引性:乳頭前白色組織による牽引や後部硝子体皮質の牽引が乳頭周囲に小裂孔を二次的に誘発する
  • 裂孔性:進行例では乳頭前組織付近に裂孔を併発することが多い

初期には滲出性または牽引性剥離で自然軽快することがあるが、全剥離に進行して失明に至ることも少なくない。

Bassiら(2024)は、MGDA眼におけるOCT所見として、乳頭周囲脈絡膜新生血管膜(PPCNVM)と乳頭周囲高輝度卵形腫瘤様構造(PHOMS)の鑑別を報告した2)。PPCNVMは網膜色素上皮-脈絡膜複合体と連続する高輝度構造であり、網膜内嚢胞腔を伴う場合は活動性を示す。PHOMSは軸索流うっ滞のマーカーであり、より低輝度でシャドウイングを伴わない点でPPCNVMと鑑別される2)。PPCNVMに対しては抗VEGF薬硝子体内注射が治療選択肢となる。

Bhattiら(2024)は、20歳女性のMGDAに合併した経蝶形骨基底部脳瘤の症例を報告した1)。MRIにて蝶形骨欠損を通じた脳瘤が確認された。脳瘤内に視交叉、視床下部、前大脳動脈などが含まれる可能性があるため、外科的矯正は極めて困難であるか禁忌とされることがある。

  1. Bhatti MT. Morning Glory Disc Anomaly Associated Transsphenoidal Encephalocele. Ophthalmology. 2024.

  2. Bassi ST, Verma A. Optical Coherence Tomography in a Morning Glory Disc Anomaly with a Peripapillary Choroidal Neovascular Membrane. Neuro-Ophthalmology. 2024;48(1):27-29.

  3. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern. AAO; 2025.

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