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緑内障

ケステンバウム指数(Kestenbaum Index)

ケステンバウム毛細血管数指数(Kestenbaum capillary number index)は、視神経乳頭上で観察される毛細血管の数として定義される。1947年にAlfred Kestenbaumが視神経萎縮の程度を定量化する方法として初めて記述した。

正常なカウント数は約10本である。視神経萎縮では6本未満に減少し、12本を超える場合は乳頭充血が示唆される。

ケステンバウム徴候(Kestenbaum’s sign)は視神経乳頭の血管プロファイルを定量的に測定するものであり、以下の目的で使用される:

  • 視神経萎縮の程度の定量化
  • 境界領域の視神経萎縮の診断補助
  • 緑内障における視神経乳頭の簡便な臨床評価
Q ケステンバウム指数は散瞳なしで測定できますか?
A

はい。原法では散瞳させなくても通常9本の太い血管と約10本の小血管を観察できるとされています。ただし、より正確な評価のためには散瞳下での拡大立体視による観察が望ましいとされています。

ケステンバウム指数は診断指標であるため、指数そのものに伴う自覚症状はない。背景疾患である視神経萎縮の原因により、視力低下・視野異常・色覚異常などの症状を呈する。

計測法:12時の位置から開始し、乳頭縁を横切るすべての血管をカウントする。細動脈・静脈・小血管を個別に数える。「小血管」とは動脈とも静脈とも識別できない血管を指す。

正常眼の所見:散瞳なしで通常9本の太い血管(静脈4〜5本、動脈4〜5本)と約10本の小血管が観察される。乳頭表面の細動脈から乳頭周囲網膜毛細血管への走行が明瞭である。

スコア臨床的意義
9〜10正常
6〜8軽度萎縮の疑い
6未満視神経萎縮
12超乳頭充血

重症萎縮例:スコア1は重度の視神経萎縮を示す。境界領域例:乳頭が正常に見えても小血管が2〜3本しかカウントできない場合は、正常レベルの9〜10本を大幅に下回っており萎縮を示唆する。

視神経萎縮は視神経乳頭における軸索変性の結果として発生する。ケステンバウム指数の低下をきたす代表的疾患は以下の通りである。

緑内障性視神経症

慢性開放隅角緑内障:最も一般的な原因の一つである。疾患進行は血管調節不全と関連する

緑内障性視神経障害の所見:垂直陥凹拡大、神経網膜リムの菲薄化、NFLD、乳頭出血、乳頭血管の鼻側偏位などが特徴的である2)

診断基準:垂直C/D比0.7以上、R/D比0.1以下で精査推奨。C/D比0.9以上は視神経所見のみで緑内障と診断しうる4)

その他の原因疾患

視神経炎:視神経萎縮の主要原因の一つである。多発性硬化症との関連が知られる

虚血性視神経症:前部虚血性視神経症(AION)による視神経萎縮

圧迫性視神経症:頭蓋内腫瘍などによる視神経圧迫

外傷性視神経症:頭部外傷に伴う視神経障害

Q ケステンバウム指数が低い場合、必ず緑内障ですか?
A

いいえ。ケステンバウム指数の低下は視神経萎縮の存在を示唆しますが、原因は緑内障に限りません。視神経炎、虚血性視神経症、圧迫性視神経症、外傷性視神経症など多くの疾患で視神経萎縮は生じます。原因の鑑別には病歴・視野検査・画像検査などを組み合わせた総合的な評価が必要です。

検眼鏡(直像鏡または細隙灯顕微鏡+前置レンズ)で視神経乳頭を観察し、乳頭縁を横切る血管を12時から時計回りにカウントする。散瞳は必須ではないが、拡大立体視での観察が推奨される1)

ケステンバウム指数の測定は、視神経乳頭の総合評価の一部として行う。リム幅の評価ではISNT法則(リム幅が下方>上方>鼻側>耳側の順)が参考になるが、正常眼でもこの法則に従うのは45%未満との報告がある3)

緑内障性視神経障害の主な所見として、陥凹の垂直方向拡大、神経網膜リムのびまん性・局所的菲薄化、乳頭出血、乳頭血管の鼻側偏位、circumlinear vesselの露出、RNFLのびまん性・局所的菲薄化が挙げられる2)

SD-OCTでは乳頭周囲網膜神経線維層厚や黄斑部網膜内層厚を定量的に評価できる4)。正常眼データベースとの比較により、構造的変化の客観的評価が可能である。

緑内障性視神経萎縮と非緑内障性視神経萎縮の鑑別では、リムの蒼白化(非緑内障性)とリムの消失(緑内障性)が最も有効な鑑別点となる。非緑内障性視神経萎縮の乳頭陥凹は浅く比較的滑らかで、リムの色調低下が陥凹拡大よりも先行する。

5. 病態生理学・詳細な発症機序

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健康な視神経乳頭表面には、網膜細動脈の枝に由来し乳頭周囲網膜毛細血管へと続く多数の毛細血管が含まれている。これらは5〜40%の患者に存在する毛様網膜動脈がない限り、網膜中心動脈から供給される。

視神経萎縮では軸索変性に伴い乳頭表面の毛細血管が消失する。緑内障眼では乳頭陥凹拡大の進行に伴って乳頭内毛細血管の消失が生じ、NFLD領域と一致して放射状乳頭周囲毛細血管の脱落が観察される。

慢性開放隅角緑内障の進行は、局所的な血管攣縮や全身性高血圧といった血管調節不全と関連する。ケステンバウム指数は、視神経萎縮の末期に血管性の病因が関与するという主張を支持する所見を提供する。

OCTAにより緑内障眼の乳頭内・乳頭周囲血管構造を非侵襲的に観察することが可能である4)。進行した緑内障ほど網膜表層血流が低下していることが知られる4)。ケステンバウム指数はこれらの定量的画像技術との相関はまだ検証されていないが、簡便な予備的評価としての位置づけが期待される。

高性能画像診断技術の役割が増大するなかでも、ケステンバウム毛細血管数のカウントは境界領域の症例において乳頭異常の疑いを強めたり弱めたりするために導入することが可能である。特に画像機器が利用できない環境での視神経の迅速な予備的評価として有用性を保つ。

Q ケステンバウム指数はOCTの代わりになりますか?
A

ケステンバウム指数はOCTの代替にはなりません。OCTは網膜神経線維層厚を客観的かつ定量的に測定でき、正常眼データベースとの比較も可能です。しかし、ケステンバウム指数は特別な機器を必要とせず、検眼鏡のみで実施できる簡便な評価法です。画像機器が利用できない場面や、スクリーニングの補助として意義があります。

  1. European Glaucoma Society. Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition. PubliComm; 2025.

  2. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Preferred Practice Pattern. 2020.

  3. American Academy of Ophthalmology. Primary Open-Angle Glaucoma Suspect Preferred Practice Pattern. 2020.

  4. 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.

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