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緑内障

虹彩成形術(Iridoplasty / ALPI)

虹彩成形術(iridoplasty)は、低エネルギーのアルゴンレーザーを周辺虹彩に照射し、虹彩実質のコラーゲンを熱収縮させることで物理的に隅角を開大するレーザー手技である。正式にはアルゴンレーザー周辺虹彩成形術(argon laser peripheral iridoplasty: ALPI)と呼ばれる。

1977年にKrasnovがレーザーエネルギーによる眼圧下降法を初めて開発した。初期は隅角の90度のみを対象としていたが、その後Kimbroughが隅角鏡レンズを用いた360度全周照射法に改良し、現在のALPIの基礎が確立された。

レーザー虹彩切開術(LPI)は虹彩に孔を開けて前後房の圧較差(瞳孔ブロック)を解消する手技である。一方、ALPIは虹彩そのものを収縮させて物理的に隅角から引き離す。瞳孔ブロック以外のメカニズムによる隅角閉塞に対してはLPIでは不十分であり、ALPIが選択される4)

Q ALPIとレーザー虹彩切開術(LPI)はどう違いますか?
A

LPIは虹彩に小さな穴を開けて瞳孔ブロックを解除する手技です。ALPIは虹彩に穴を開けるのではなく、周辺虹彩にレーザーを照射して虹彩組織を収縮させ、隅角を広げます。LPI後も隅角が狭い場合や、プラトー虹彩のように瞳孔ブロック以外の原因による閉塞に対して用いられます。

ALPIの主な適応は、LPI後にも接触性隅角閉塞が残存する病態である4)5)

急性原発閉塞隅角(APAC)

角膜浮腫でLPI困難な場合:急性発作時は角膜浮腫によりLPIの視認性が得られないことがある。周辺虹彩が1象限以上視認できればALPIは安全に施行できる4)

薬物療法より迅速な眼圧下降:ALPI群は全身投与薬群と比較し、15分・30分・1時間の各時点で有意に眼圧を低下させた4)

LPI後の残存閉塞:LPI後も接触性閉塞が持続する場合に追加治療として使用される4)

プラトー虹彩症候群(PIS)

LPI後も狭隅角が残存:LPI後もプラトー虹彩症候群では54〜80%の症例で隅角閉塞が持続すると報告されている2)

長期隅角開大:レトロスペクティブ研究では、ALPI 1回施行後の平均79ヶ月の追跡で87%の眼で隅角開大が維持された1)2)

若年者にも適応:18歳のプラトー虹彩症例にもALPIが有効であった2)

小眼球症(nanophthalmos)眼軸長が短く、加齢に伴い水晶体前後径の相対的増大から隅角閉塞を生じる。LPI後の残存閉塞にALPIが有効である。

虹彩・毛様体嚢胞:接触性隅角閉塞を引き起こす嚢胞に対し、ALPIで隅角を開大できる。

UGH症候群眼内レンズの虹彩摩擦による虹彩炎緑内障前房出血症候群に対し、虹彩を眼内レンズ支持部から離すためのレーザー虹彩成形術が報告されている2)

重度の角膜浮腫・扁平前房・ぶどう膜炎新生血管緑内障ICE症候群は禁忌となる。

隅角の開放度評価の基準検査(gold standard)である1)。プラトー虹彩ではインデンテーション隅角鏡で”double hump sign”が特徴的に観察される1)2)

毛様体の前方位置を直接確認できる。プラトー虹彩の確定診断に有用である2)

18歳女性のプラトー虹彩症例において、超音波生体顕微鏡で両眼の毛様体前方偏位が確認され、診断確定に至った。2)

隅角形態の評価に用いられるが、プラトー虹彩の検出感度は超音波生体顕微鏡に劣る2)AS-OCTは超音波生体顕微鏡の代替とはならない。

Q プラトー虹彩はどのように診断しますか?
A

まずレーザー虹彩切開術後も狭隅角が残存するかどうかを確認します。隅角鏡で”double hump sign”(二重こぶ)が特徴的です。確定診断には超音波生体顕微鏡(超音波生体顕微鏡)で毛様体の前方偏位を確認することが推奨されます。前眼部OCTは超音波生体顕微鏡より診断精度が劣るため、代替にはなりません。

ピロカルピン点眼で縮瞳し、虹彩を伸展させて周辺部への到達性を高める。術後の眼圧スパイク予防としてブリモニジンまたはアプラクロニジンを術前に点眼する5)

直接法(アブラハムレンズ使用)

Section titled “直接法(アブラハムレンズ使用)”
項目設定値
スポットサイズ500 µm
照射時間0.5秒
出力200〜240 mWから開始

アブラハムレンズ越しに周辺虹彩へ垂直に照射する。虹彩実質の収縮が確認できなければ出力を徐々に上げる。1象限あたり5〜6スポットを等間隔に配置し、全周で20〜24スポットが目安となる。

隅角鏡レンズを用い、周辺虹彩に低入射角で照射する。スポットサイズ300〜500 µm、照射時間0.3〜0.5秒が適切とされる。線維柱帯への直接照射を避ける必要がある。間接法は手技中に隅角を直接視認できる利点がある。

18歳のプラトー虹彩症例では、Pascal固体レーザー(532 nm倍周波数Nd:YAG)を用い、スポットサイズ400 µm・出力300 mJで360度に計48スポットを照射し、良好な隅角開大を得た。2)

UGH症候群に対しては、透照欠損部位を結膜マーキングで標識し、Pascal固体レーザー600 mWで虹彩成形術を施行する手法が報告されている3)

術直後にブリモニジンを点眼する。1%酢酸プレドニゾロンなどのステロイド点眼を1日4〜6回、短期間投与する。術後眼圧を注意深くモニタリングする。

APAC発作時のALPIは、薬物全身投与と比較して15分・30分・1時間の各時点で有意に眼圧を低下させる4)。ただし術後15ヶ月ではALPI群と全身投与薬群の間に眼圧コントロールの統計的有意差は認められなかった4)

プラトー虹彩症候群に対するALPIでは、87%の眼が1回の治療後の平均79ヶ月追跡で隅角開大を維持し、濾過手術が不要であった1)

59歳女性のプラトー虹彩症候群症例では、両眼LPI後2ヶ月で左眼IOPが49 mmHgまで再上昇した。アルゴンレーザー虹彩成形術施行後、前房は深化し、6ヶ月後のIOPはOD 16 mmHg・OS 13 mmHgと安定した。1)

Urrets-Zavalia症候群:縮瞳薬に反応しない固定散瞳を特徴とする稀な合併症。光過敏や美容上の問題を引き起こすが、通常1年程度で自然軽快する。

角膜内皮熱傷:周辺虹彩と角膜が近接する場合に生じうる。浅前房症例では特に注意を要する。

虹彩壊死:凝固斑を密集照射した場合に稀に報告される。

一過性眼圧上昇:術後に一過性の眼圧上昇を認めることがあり、術前後のアプラクロニジン点眼で予防する5)

Q ALPIの効果はどのくらい持続しますか?
A

プラトー虹彩症候群に対するALPIでは、1回の施行で平均79ヶ月(約6.5年)にわたり87%の眼で隅角開大が維持されたと報告されています。ただし長期的には効果が減弱する場合もあり、縮瞳薬の継続投与や白内障手術の追加が必要になることがあります。定期的な隅角検査による経過観察が重要です。

ALPIの作用機序は二段階に分かれる。

短期的効果(コラーゲン熱収縮)

Section titled “短期的効果(コラーゲン熱収縮)”

レーザーの熱エネルギーにより周辺虹彩実質のコラーゲン線維が変性・収縮する。この即時的な収縮が虹彩を線維柱帯から引き離し、隅角を開大させる。

長期的効果(線維芽細胞膜収縮)

Section titled “長期的効果(線維芽細胞膜収縮)”

照射部位に形成される線維芽細胞膜の収縮が、長期的な虹彩位置の維持に寄与すると考えられている。

レーザー照射部位の虹彩断面が菲薄化することで隅角の開大に寄与する2)。ただし毛様体そのものの前方偏位は改善されないため、プラトー虹彩では根本的な解剖学的異常は残存する。

従来ALPIの対象は中高年であったが、18歳のプラトー虹彩による急性閉塞隅角に対してPascal固体レーザーを用いた虹彩成形術が有効であった症例が報告されている2)。若年者においてもプラトー虹彩を鑑別に含め、早期にALPIを検討すべきとされる。

透照欠損部位を結膜マーキングで標識し、Nd:YAG固体レーザーで局所的に虹彩成形術を施行する新手法が報告された3)。眼内レンズ支持部と虹彩の接触を軽減し、7ヶ月間UGHの再発を認めなかった。眼内レンズ摘出という侵襲的手技の前に試みる選択肢として注目される。

最新のコンセンサス声明では、ALPI・前房穿刺・早期水晶体乳化吸引術を含む代替治療アルゴリズムが提案されている4)。従来のLPI後待機的管理に比べ、慢性閉塞隅角緑内障への移行リスクを減少させる可能性がある。

  1. Shakoor T, Sadhar BS, Sharma P, et al. Seeing Beyond the Expected: An Uncommon Case of Plateau Iris Syndrome in the Outpatient Setting. Cureus. 2024;16(5):e59575.

  2. Sheth S, Lagrew M, Blake CR. Acute Angle Closure in an 18-Year-Old Due to Plateau Iris. Cureus. 2024;16(5):e60608.

  3. Dhillon B, Duff-Lynes SM, Blake CR. A novel method of using transillumination, conjunctival markings and Pascal solid state laser to treat Uveitis-Glaucoma-Hyphema syndrome. Am J Ophthalmol Case Rep. 2022;25:101296.

  4. Chan PP, et al. Management of Acute Primary Angle Closure Attack: Asia-Pacific Angle-Closure Glaucoma Club Consensus Statement. Asia Pac J Ophthalmol. 2025;14:100223.

  5. 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日眼会誌. 2022;126:85-177.

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