原発緑内障の評価
原発開放隅角緑内障の診断:閉塞隅角緑内障や二次性の眼圧上昇原因を除外するために、前房隅角の注意深い評価が必要である4)。
原発閉塞隅角疾患の評価:原発閉塞隅角疾患が疑われる患者では両眼の隅角検査が必須であり、虹彩角膜接触(ITC)および周辺虹彩前癒着の有無、プラトー虹彩形態を評価する5)。
高眼圧症:眼圧上昇の二次的原因を除外するための精査に不可欠である6)。

隅角鏡検査(gonioscopy)は、前房隅角を直接観察するための接触型検査である。房水流出路である隅角を観察し、緑内障の病型診断・治療方針決定・術後評価に不可欠な情報を得る3)。緑内障以外でも隅角に異常所見が出現する疾患は多く、眼科基本検査の一つである。
隅角の正常構造は角膜側から虹彩側に向かい、以下の順序で構成される3)。
Schwalbe線: Descemet膜の後端に相当し、前房内に突出する白い線状隆起としてみられる。落屑緑内障ではSchwalbe線前方に波状の色素沈着(Sampaolesi線)がみられることがある3)。
線維柱帯: Schwalbe線と強膜岬の間に位置する。中央から強膜岬側は機能的線維柱帯に相当し、色素帯として観察される。落屑緑内障・色素緑内障では著明な色素沈着を呈する3)。
強膜岬: 毛様体帯と線維柱帯の間の白い線として観察される。虹彩突起がその表面にみられることがある。小児緑内障眼では虹彩が強膜岬より前方に付着し、観察できないことがある3)。
毛様体帯: 毛様体の前面に相当し、灰黒色の帯として観察される。外傷性の隅角後退では毛様体帯の幅が広くなる3)。
隅角血管: 生理的にも毛様血管が観察されることがあるが、同心円状・放射状の規則的走行を示す。病的新生血管は不規則で曲がりくねった走行と多数の分枝を呈する3)。高眼圧時には血流が途絶えるため見逃すことがある。
隅角鏡検査は緑内障の分類に必須であり、治療方針を決定する上で極めて重要である。プラトー虹彩緑内障のように前房中心部の深度はほぼ正常であるにもかかわらず狭隅角や隅角閉塞がみられる病態が存在するため、前房深度の評価のみでは不十分である。すべての症例で隅角検査を行い、続発緑内障の原因となる偽落屑物質・色素散布・新生血管・炎症性沈着物・隅角後退・周辺虹彩前癒着などの有無を確認する必要がある。
隅角鏡検査は緑内障の評価を受けるすべての患者に実施すべきである2)。
原発緑内障の評価
原発開放隅角緑内障の診断:閉塞隅角緑内障や二次性の眼圧上昇原因を除外するために、前房隅角の注意深い評価が必要である4)。
原発閉塞隅角疾患の評価:原発閉塞隅角疾患が疑われる患者では両眼の隅角検査が必須であり、虹彩角膜接触(ITC)および周辺虹彩前癒着の有無、プラトー虹彩形態を評価する5)。
高眼圧症:眼圧上昇の二次的原因を除外するための精査に不可欠である6)。
その他の適応
隅角鏡検査には直接型隅角鏡による直接法と間接型隅角鏡による間接法がある3)。
直接型隅角鏡にはKoeppe・Barkan・Swan-Jacob・Hillレンズがあり、患者を仰臥位にして角膜に装着し手持ち細隙灯顕微鏡で観察する。主として小児や手術時に用いられる3)。
間接型隅角鏡にはGoldmann隅角鏡やZeiss四面鏡がある。座位で細隙灯顕微鏡とともに実施でき、日常診療で最も一般的に使用される3)。ミラーイメージである点に注意が必要である。Goldmann一面鏡は反射鏡の高さが高く角度が大きいため、狭隅角の隅角底の観察に適する。四面鏡は回さずに全周を観察でき、圧迫隅角検査にも使用可能である。
隅角閉塞の正確な診断には静的隅角鏡検査と動的隅角鏡検査の両方を行うことが望ましい3)。
静的隅角鏡検査: 暗室下で細隙灯顕微鏡の光量を極力下げ、瞳孔領に光を入れずに隅角鏡で眼球を圧迫しないようにして、第一眼位における自然散瞳状態での隅角開大度を評価する3)。非器質的閉塞と器質的閉塞は鑑別できない。
動的隅角鏡検査: 細隙灯顕微鏡の光量を上げて縮瞳させ、隅角鏡または眼位を傾けて軽度の圧迫を加え、隅角を開大させる3)。器質的閉塞の有無・範囲、結節・新生血管の有無を診断する。
圧迫隅角鏡検査: 角膜中央を圧迫して変形させ、房水が周辺虹彩を後方に押し下げることで隅角底を観察する3)。機能的閉塞(相対的瞳孔ブロック)と器質的閉塞(PAS)を鑑別できる唯一の方法である。プラトー虹彩形態では前方回旋した毛様体突起により虹彩根部が動かず、特徴的なS字状(double hump sign)を呈する。
| 分類 | 基準 | Grade 0 |
|---|---|---|
| Shaffer | 角度 | 閉塞(0°) |
| Scheie | 観察可能な構造 | 全構造が見える |
| Spaeth | 隅角形状 | 虹彩形状を記載 |
Shaffer分類: 線維柱帯と周辺部虹彩のなす角度により、広隅角のGrade 4(20〜45°)から完全閉塞のGrade 0(0°)まで5段階に分類する3)。
Scheie分類: 観察可能な組織により分類する。Grade 0は全構造が見え、Grade IVはSchwalbe線すら見えない最も狭い状態である3)。日本ではShaffer分類とともに一般的に使用される。
Spaeth分類: 隅角の形態を虹彩付着部位・虹彩の挿入角度・周辺虹彩形状(凹状q・平坦r・凸状s)の3要素で記載する。超音波生体顕微鏡との高い相関が報告されている4)。
van Herick法: 角膜厚と周辺部前房深度を比較し隅角の広さを推定するスクリーニング法である3)。Grade 2以下(前房深度が角膜厚の1/4以下)では隅角閉塞の可能性があり、隅角鏡検査が必要となる。非接触で簡便に実施できるが、隅角鏡検査の代替にはならない。
隅角が非常に狭く、通常の動的隅角鏡検査では非器質的閉塞と器質的閉塞の鑑別が困難な場合に行う。角膜との接触面積が小さい隅角鏡を使用し、角膜中央を圧迫して房水を移動させ、周辺虹彩を後方に押し下げて隅角底を観察する。周辺虹彩前癒着がある部位では虹彩は押し下げられず、線維柱帯や隅角底は観察できない。過度に圧迫するとDescemet膜皺襞により視認性が低下し、隅角変形により器質的閉塞と誤認する危険がある。
隅角検査では以下の異常所見を見落とさないことが重要である。十分に拡大し、全周を丹念に観察する。
周辺虹彩前癒着(PAS): 隅角部と周辺虹彩の癒着であり、テント状・台形・広範な面状など形状は多様である3)。原発閉塞隅角症のほか、血管新生緑内障・ぶどう膜炎・ICE症候群・鈍的外傷後・レーザーや内眼手術後に形成される。
病的新生血管: 眼虚血性病変に続発し、虹彩根部から立ち上がり細かい枝分かれを形成する3)。開放隅角期を過ぎて閉塞隅角期に移行すると眼圧コントロールは困難となる。高眼圧時には血流途絶により見逃されやすい。
色素沈着: 落屑緑内障ではSchwalbe線を超える色素帯(Sampaolesi線)、色素緑内障では線維柱帯全体の均一な高度色素沈着が特徴的である3)。
隅角後退: 鈍的外傷後にみられ、毛様体帯の幅が広くなる所見である3)。外傷の程度により範囲や幅が異なる。
隅角形成不全: 発達緑内障では虹彩高位付着を呈する。Axenfeld-Rieger症候群では索状ぶどう膜遺残やSchwalbe線の肥厚(後部胎生環)を認める。
術後所見: MIGS後の凝血塊付着・癒着・周辺虹彩前癒着形成、線維柱帯切除術後の術創への凝血塊や虹彩嵌頓の鑑別に隅角検査は必須である。
前眼部OCT
長所:非接触的に隅角部を観察可能であり、患者負担が少ない。解像度はUBMより優れ、定量性・再現性にも優れる。広範囲の断層像を取得可能である1)。
限所:周辺虹彩前癒着の評価が困難であり、色素沈着や微細な異常所見を捉えられない。強膜岬の同定が困難な症例がある1)。隅角鏡検査より多くの虹彩角膜接触を検出し、偽陽性を生じうる1)。
位置づけ:隅角鏡検査の補助として有用であるが、代替にはならない2)。狭隅角の虹彩形状の特定や水晶体の影響評価に有用である2)。
超音波生体顕微鏡(UBM)
長所:隅角・虹彩・毛様体の一部を含む前眼部組織の微細構造を断面として観察可能である3)。毛様体の描出に優れ、完全な暗室での観察が可能である。角膜混濁時にも隅角評価が可能である。
限所:接触式であり患者負担が大きい。解像度はOCTより劣る。任意位置の1断層像で平面的な評価にとどまる。
位置づけ:毛様体の評価やプラトー虹彩の機序解明に有用である。隅角鏡検査で評価困難な症例の補助的手段として活用される。
隅角鏡検査は色調の評価・圧迫隅角検査による動的評価・周辺虹彩前癒着の直接的な確認が可能であり、これらの点において画像診断では代替できない2)。一方、画像診断は定量的・客観的な記録に優れ、経時的な比較に適している。両者を相補的に活用することが重要である。
代替することはできない。前眼部OCTは非接触的で定量性・再現性に優れ、患者負担も少ないが、周辺虹彩前癒着・色素沈着・微細な異常所見(新生血管・結節など)の評価は困難である。また隅角鏡検査より多くの虹彩角膜接触を検出するため偽陽性を生じうる。EGS(欧州緑内障学会)のガイドラインでも、前眼部画像診断は隅角鏡検査を代替すべきではないと明記されている。
ニデック社のGS-1は据置型の接触式隅角撮影装置であり、16面鏡の隅角レンズを使用して360度の隅角写真を撮影・つなぎ合わせることが可能である。複数焦点での撮影により、異なる隅角組織への焦点調整が事後的に行える。
GonioPenはシンガポールで開発された手持ち式の隅角撮影デバイスであり、高解像度の虹彩角膜角写真を提供する。小型・コンパクトで、最小限のトレーニングを受けた技術者でも使用可能である。
スリットランプアダプターを装着したスマートフォンカメラにより、隅角鏡写真や動画の撮影が可能である。また、スリットランプを使用せずにスマートフォンの直接撮影による隅角イメージングも報告されている。医療資源の限られた地域での活用が期待される。
従来の直接型手術用隅角鏡では頭部や顕微鏡を傾ける必要があったが、ダブルミラー型隅角鏡は2つの内蔵ミラーにより直像として隅角を観察でき、頭部や顕微鏡を傾けることなく全周の隅角を観察・操作可能である。MIGSの発展に伴い、このような手術用隅角鏡の進化が続いている。