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緑内障

デクステンザ(Dextenza)— デキサメタゾン涙小管内インサート

デクステンザ(Dextenza、Ocular Therapeutix社)は、防腐剤フリーのデキサメタゾン0.4mgを含有する生分解性涙小管内インサートである。ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲルに薬剤を封入し、30日間にわたりデキサメタゾンを漸減放出(tapered release)するよう設計されている。

2018年および2019年に眼科手術後の疼痛・炎症治療としてFDA承認を取得し、2021年にはアレルギー性結膜炎に伴う眼掻痒の治療にも適応が拡大された4)

点眼療法では5%未満の薬剤しか眼内組織に到達せず、前角膜での喪失や角膜上皮バリアが原因とされる1)。また点眼薬のノンコンプライアンス率は約30%に達し、白内障術後患者の92%で不適切な点眼手技が報告されている1)。デクステンザはこれらのアドヒアランス上の課題を解消し、持続的かつ一定のステロイド供給を可能にする薬物送達システム(DDS)である1)

デクステンザの特徴

剤形:直径約0.5mm、長さ3mmの円筒形インサート

含有量:デキサメタゾン0.4mg

放出期間:30日間の漸減放出

素材:PEGハイドロゲル(フルオレセイン結合で可視化可能)

分解:加水分解により液状化し鼻涙管から自然排出

従来の点眼療法の課題

バイオアベイラビリティ:5%未満の薬剤が眼内に到達1)

アドヒアランス:ノンコンプライアンス率約30%1)

手技エラー:92%の患者で不適切な点眼操作1)

濃度変動:点眼直後のピークと次回点眼前のトラフの繰り返し1)

防腐剤毒性:眼表面への障害リスク1)

Q デクステンザとはどのような製品ですか?
A

デクステンザは涙点から涙小管内に挿入する小型のインサート(直径0.5mm、長さ3mm)で、デキサメタゾン0.4mgを30日間にわたり徐放します。PEGハイドロゲル製で防腐剤を含まず、約30日後に自然に分解・排出されるため除去手技が不要です。眼科手術後の炎症・疼痛とアレルギー性結膜炎の眼掻痒に対してFDA承認を受けています。涙小管を閉塞するため涙点プラグとしての潤滑効果も期待されます。

分類対象
適応眼科手術後の炎症・疼痛
適応アレルギー性結膜炎の眼掻痒
禁忌角膜・結膜・涙小管の活動性感染
禁忌真菌感染・涙嚢炎

点眼が困難な身体的・精神的制限のある患者、ぶどう膜炎などの炎症リスクが高い患者、重度のドライアイ患者にとって有用な選択肢となる。デクステンザは涙小管を閉塞するため涙点プラグとしても機能し、涙液の排出を抑制する。

デキサメタゾンは強力な副腎皮質ステロイドである。インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの炎症性サイトカインを抑制し、好中球遊走・毛細血管透過性・浮腫を減少させる。

デクステンザからの薬剤放出は持続的かつ漸減的であり、点眼の間欠投与による濃度のピーク・トラフの変動がない1)。健常ボランティアでの血漿中デキサメタゾン濃度は全サンプルの11%でのみ検出され(0.05〜0.81ng/mL)、全身への影響は最小限である。

  1. 眼瞼を耳側に牽引して涙小管の角度を広げる
  2. 眼科用拡張器で涙点を拡張する(穿孔を避ける)
  3. 涙点周囲を十分に乾燥させる(ハイドロゲルは吸水で膨張するため)
  4. 無鉤鑷子で遠位端が涙点開口部のわずか下方に達するまで挿入する
  5. フルオレセイン結合ハイドロゲルをイエローフィルター付きブルーライトで適切な配置を確認する

挿入前にハイドロゲルが吸水した場合は新しいインサートを使用する。約30日後に加水分解で液状化し、鼻涙管を通じて排出されるため通常は除去不要である。必要時は生理食塩水による洗浄または用手的圧出で除去可能である。

Q デクステンザはどのように挿入しますか?
A

涙点を拡張器で拡張した後、無鉤鑷子を用いて下涙点から涙小管内に挿入します。挿入前にハイドロゲルが膨張しないよう涙点周囲を乾燥させることが重要です。フルオレセイン結合ハイドロゲルのため、ブルーライトとイエローフィルターで配置を確認できます。約30日後に自然分解・排出されるため通常は除去不要ですが、必要時は生食洗浄や用手圧出で除去可能です。

白内障術後のドロップレスレジメン

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前向きランダム化対側眼比較試験(41例)で、ドロップレスレジメン(デクステンザ+前房内ケトロラク+前房内モキシフロキサシン)と従来の点眼療法を比較した1)。疼痛消失率・SOIS(前房内炎症スコア)・矯正遠見視力(CDVA)・IOPのすべてにおいて両群間に有意差はなかった1)

94.7%の患者がドロップレスレジメンを好み、患者報告による自己負担費用は平均$158の節約であった1)。コントロール群では1ヶ月間に250滴以上の点眼が必要であったのに対し、ドロップレス群では点眼ゼロであった1)

白内障術後試験

デザイン:前向き対側眼RCT、41例1)

疼痛消失率(1ヶ月):両群とも100%1)

患者選好:94.7%がドロップレスを好む1)

費用差:平均$158の節約(ドロップレス群)1)

アレルギー性結膜炎Phase 3試験

デザイン:多施設二重盲検RCT、96例4)

主要評価項目:Day 8の掻痒スコア4)

結果:3・5・7分後すべてでP<0.00014)

結膜充血:18評価時点すべてでDEX優位4)

Phase 3ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(96例)では、結膜アレルゲン誘発(CAC)モデルを用いてデクステンザの有効性を評価した4)。挿入7日後のDay 8における掻痒スコアは、3分・5分・7分後すべての時点でプラセボに対して有意に低く(差 -0.86〜-0.98、P<0.0001)4)、結膜充血も18評価時点すべてでDEX群が優位であった4)。IOP上昇、涙小管炎、レスキュー薬使用はいずれも報告されなかった4)

実臨床での比較試験(30例)では、デクステンザは点眼ステロイド(ロテプレドノール)より掻痒・充血の改善が有意に優れ(P=0.009、P=0.0004)、66.7%の患者が好んだ2)。一方、点眼抗ヒスタミン薬(オロパタジン)との比較では有効性は同等であり、明確な選好差は認められなかった2)

全層角膜移植・DSEK・DMEK後の30眼を対象としたランダム化前向き試験では、デクステンザ+低頻度点眼レジメンと従来の高頻度点眼レジメンを比較した3)。疼痛スコア、前房内炎症、IOP上昇、角膜拒絶反応、嚢胞様黄斑浮腫(CME)のいずれにおいても両群間に有意差はなかった3)。ステロイドレスキューを必要とした患者はいなかった3)

適応デザイン主要結果
白内障術後1)対側眼RCT、41例点眼と同等、94.7%が選好
アレルギー性結膜炎4)Phase 3 RCT、96例掻痒スコア P<0.0001
角膜移植3)前向きRCT、30眼標準治療と同等の安全性
Q デクステンザは点眼薬と比べてどのような利点がありますか?
A

デクステンザの主な利点は、30日間にわたる持続的な薬剤放出によりアドヒアランスの問題を解消できる点です。白内障術後の臨床試験では、従来の点眼レジメン(1ヶ月間に250滴以上)と同等の消炎・鎮痛効果を示しながら94.7%の患者に好まれました。防腐剤フリーのため眼表面毒性が軽減され、涙小管閉塞による涙液保持効果も得られます。患者の自己負担費用も平均$158の節約が報告されています。一方、IOP上昇や涙小管炎のリスクがあるためモニタリングは必要です。

角膜移植後は高頻度のステロイド点眼が必要であり、特に高齢患者ではアドヒアランスが課題となる3)。デクステンザと低頻度点眼レジメンの併用が従来の標準治療と同等の安全性を示したことは、術後のステロイド管理負担を軽減しうる有望な知見である3)。初回インサート分解後に追加挿入を行い、術後1ヶ月以降の点眼負担もさらに軽減する方法が今後検討される3)

緑内障における点眼薬のノンアドヒアランスは視野障害の進行と相関することが知られている2)。デクステンザのような持続放出DDSの概念は、将来的に緑内障治療薬の送達システムにも応用される可能性がある2)

  1. Donnenfeld ED, Hovanesian JA, Malik AG, Wong A. A Randomized, Prospective, Observer-Masked Study Comparing Dropless Treatment Regimen Using Intracanalicular Dexamethasone Insert, Intracameral Ketorolac, and Intracameral Moxifloxacin versus Conventional Topical Therapy to Control Postoperative Pain and Inflammation in Cataract Surgery. Clin Ophthalmol. 2023;17:2349-2356.
  2. Reich S, Lopez M, Leff J, Herman J. DEXTENZA versus Topical Steroid or Antihistamine Therapy for Treatment of Allergic Conjunctivitis. Clin Ophthalmol. 2024;18:473-480.
  3. Alsetri H, Fram N, Shiler O. Evaluating a Sustained-Release Dexamethasone Insert as Adjunctive Therapy for Inflammation and Pain Post-Corneal Transplantation. Clin Ophthalmol. 2024;18:2083-2091.
  4. Kenyon K, McLaurin EB, Silverstein SM, et al. A Randomized, Multicenter Phase 3 Clinical Trial Evaluating Intracanalicular Dexamethasone Insert for the Treatment of Allergic Conjunctivitis. Clin Ophthalmol. 2024;18:2671-2684.

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