レーザー設定
波長: 810 nm(半導体ダイオード)
出力: 2,000 mW2)
デューティサイクル: 31.3%(on 0.5 ms / off 1.1 ms)
照射時間: 上半球80秒+下半球80秒=合計160秒
装置: Cyclo G6 + MicroPulse P3プローブ(IRIDEX社)

毛様体破壊術(cyclodestructive procedures)は、毛様体上皮を物理的に破壊して房水産生を減少させ、眼圧を下降させる手術の総称である1)2)。1933年にVogtが毛様体の透熱凝固を報告して以来、冷凍凝固・超音波・レーザーなど多様なエネルギー源が試みられてきた。現在は810nmダイオードレーザーを用いた方法が主流である1)2)。
主な術式は以下に大別される1)2)3)。
従来、毛様体破壊術は他の治療法で眼圧コントロールが得られない難治性緑内障や、視力予後不良の有痛性緑内障眼に対する最終手段と位置づけられてきた1)2)3)。しかしMP-CPCの組織障害が軽微であること、HIFU-UCCCの標的選択性が高いことから、より早期の段階での使用も検討されている1)。
主に5種類あります。(1)経強膜毛様体光凝固術(TS-CPC)は強膜の外側からレーザーを連続波で照射する方法、(2)緩徐凝固連続波TSCPC(SC-TSCPC)は低出力・長時間照射で周囲組織損傷を軽減した手法、(3)マイクロパルス経強膜毛様体光凝固術(MP-CPC)はパルス照射で組織損傷を軽減した改良法、(4)眼内毛様体光凝固術(ECP)は内視鏡で眼内から直視下に毛様体を凝固する方法、(5)高密度焦点式超音波円状毛様体凝固術(HIFU-UCCC)は超音波で毛様体を選択的に凝固する方法です。いずれも房水産生を減少させて眼圧を下げます。
毛様体破壊術の主な適応は以下のとおりである1)2)3)。
ECPは白内障手術との同時施行が可能であり、有水晶体眼の緑内障に対して水晶体再建術+ECPの複合手術として行われることがある1)3)。
特殊な適応として、Boston KPro type II挿入眼における難治性緑内障に対するTS-CPCが報告されている12)。人工角膜挿入眼では通常の濾過手術が困難であり、TS-CPCが有用な眼圧管理手段となりうる12)。また、毛様体メラノーマに続発した緑内障に対し、腫瘍部位を避けた限定的なTS-CPCにより眼圧コントロールが得られた報告もある13)。
MP-CPCは安全性プロファイルの改善により適応が拡大している。視力予後が良好な眼にも使用可能であり、点眼治療への追加など早期の症例にも適応とされるが、その役割は十分に検討されていない。以下の病型で安全かつ有効であることが示されている。
| 適応病型 | 備考 |
|---|---|
| 原発開放隅角緑内障 | 最も多い適応 |
| 新生血管緑内障 | 再治療率高い |
| 閉塞隅角緑内障 | 慢性例に適応 |
そのほか偽落屑緑内障・正常眼圧緑内障・ぶどう膜炎性緑内障にも施行される。線維柱帯切除術やチューブシャント手術の既往がある眼にも使用可能である。
HIFU-UCCCは従来の毛様体破壊術と同様に難治性緑内障に適応される1)2)。近年の臨床試験では、濾過手術既往のない早期緑内障患者に対する有効性も報告されている。開放隅角・閉塞隅角の両病型に適用可能であるが、ナノフタルモスやメガロフタルモスはプローブサイズの制約から適応外となる。
810nmダイオードレーザーとGプローブを使用する1)2)。Gプローブは先端が強膜表面に沿うよう設計されており、角膜輪部から1.5mm後方に当てることで毛様体に焦点が合う2)。
照射条件は出力1500〜2000mW、照射時間2000msが標準である2)。270°の範囲を照射し、3時・9時方向(長後毛様体動脈・神経の走行部)は避ける2)。照射中に「pop音」が聴取された場合は過凝固の徴候であり、出力を250mW下げる2)。
SC-TSCPCは一定の低いダイオードレーザーエネルギー(1,250 mW)を長時間(4秒間)かけて照射し、制御された毛様体焼灼を行う手法である6)。従来のポップテクニック(1,750〜2,000 mW、2秒間)と比較して、低出力・長時間照射により周囲組織の損傷と炎症を最小限に抑え、合併症発生率の低減を目指す。
| 項目 | SC-TSCPC | 従来のポップテクニック |
|---|---|---|
| レーザー出力 | 1,250 mW(一定) | 1,750〜2,000 mW(可変) |
| 照射時間 | 4秒 | 2秒 |
球後麻酔またはテノン嚢下麻酔で施行する。プローブを強膜に対して垂直に配置し、垂直から10度以上逸脱するとエネルギー伝達が20%以上変動する。3時と9時方向を避けて照射し、照射回数は眼圧上昇の程度・治療薬数・患者背景・手術歴に基づいて決定する。
血管新生緑内障においてほぼ全周の周辺虹彩前癒着を有する症例で有効性が報告されており、8例中5例(63%)が追加のチューブシャント手術を要さず眼圧コントロールが得られた6)。
術後はテノン嚢下トリアムシノロン注入、結膜下デキサメタゾン注入、プレドニゾロン点眼、ケトロラク点眼を併用する。ステロイド点眼は2〜3週間ごとに漸減する。急激な中止はリバウンド虹彩炎のリスクがある。
連続波と同じ810nmダイオードレーザーを使用するが、ON時間0.5ms・OFF時間1.1ms(duty cycle 31.3%)のパルス照射を行う2)。
レーザー設定
波長: 810 nm(半導体ダイオード)
出力: 2,000 mW2)
デューティサイクル: 31.3%(on 0.5 ms / off 1.1 ms)
照射時間: 上半球80秒+下半球80秒=合計160秒
装置: Cyclo G6 + MicroPulse P3プローブ(IRIDEX社)
照射手技
プローブ位置: 角膜輪部から3 mm後方(毛様体扁平部)に凹面を角膜輪部に合わせて垂直に当てる
掃引法: 上半球4往復(片道10秒)・下半球4往復で照射する
回避部位: 3時・9時方向(長後毛様体動脈・毛様体神経)を避ける
接触圧: 結膜/強膜に押し込みつつ、輪部に沿って滑らせながら連続照射する
OFF期間中に組織が冷却されるため、連続波と比較して毛様体への不可逆的損傷が軽減される2)14)。組織学的にも、MP-CPCでは毛様体上皮の部分的・限局的な壊死にとどまるのに対し、連続波TS-CPCでは毛様体上皮・間質の広範な凝固壊死が生じることが確認されている14)。
球後麻酔(2%リドカイン5 mL)またはTenon嚢下麻酔(2%リドカイン3〜5 mL)で施行する。照射前にドロキシエチルセルロースを滴下し、結膜とプローブ先端を十分に湿潤させる。術後は眼帯を装着し、ステロイド・抗菌点眼薬を1日4回、1〜2週間投与し適宜漸減する。緑内障点眼薬は翌日以降の眼圧を確認後に減量や中止を検討する。
810nmダイオードレーザー、光源、ビデオカメラを一体化した内視鏡プローブを前房または硝子体腔から挿入し、毛様体突起を直視下に凝固する1)3)。白化と収縮が凝固のエンドポイントであり、過凝固(爆発・破裂)を避ける3)。
ECPはメラニン色素への依存度が低く、直視下に照射量を調整できるため、過凝固のリスクが連続波TS-CPCより低い1)3)。一方、眼内操作を要するため侵襲性はTS-CPCより高い。
1985年にColemanらが毛様体破壊への高密度焦点式超音波(HIFU)の使用を初めて報告した。当時のデバイスは大型で手技に2時間を要し、周波数が低く(5 MHz)焦点領域が広いために重篤な合併症がみられ、1990年代に臨床使用が中止された。
2010年にAptelらが小型化トランスデューサーを用いた新しいHIFUシステム(EyeOP1デバイス)を開発し、「超音波円状毛様体凝固術(UCCC/UC3)」と命名した。21 MHzの高周波で動作し、焦点領域が0.1×1 mmと小さいため、毛様体を選択的に凝固しつつ隣接組織への熱損傷を最小限に抑えることが可能となった。
EyeOP1デバイスの構造
円状プローブ:直径30 mm・高さ15 mmのリングに6つの圧電セラミックトランスデューサーを等間隔に配置。上部3つ・下部3つの超音波ビームにより毛様体の最大45%を治療可能
プローブサイズ:11・12・13 mmの3種類。超音波生体顕微鏡生体計測データに基づき術前に決定
動作パラメータ:周波数21 MHz、音響出力2.0〜2.45 W。各トランスデューサーの起動時間は4秒・6秒・8秒から選択
手術手順
球後(または球周囲)麻酔下で施行する。カップリングコーンを眼表面に直接接触させ、低レベルの真空(70 mmHg)で保持する。生理食塩水約4 mLを注入し音響伝搬を確保する
トランスデューサーは上部セクターから時計回りに順次起動される。各セクター間に20秒の間隔を置く。セクター間の移行は完全に自動化されている
術後はフルルビプロフェンまたはデキサメタゾン・トブラマイシン併用薬を1か月間1日4回点眼する
| 術式 | 出力 | 照射時間 |
|---|---|---|
| TS-CPC | 1500–2000mW | 2000ms/shot |
| SC-TSCPC | 1250mW | 4000ms/shot |
| MP-CPC | 2000mW | 80–100秒/半周 |
| ECP | 200–300mW | 直視下調整 |
| HIFU-UCCC | 2.0–2.45W(音響) | 4–8秒/セクター |
TS-CPC / MP-CPC / SC-TSCPC
アプローチ:経強膜的(外部からの照射)
麻酔:球後麻酔またはテノン嚢下麻酔2)
照射範囲:270°(3時・9時を避ける)2)
特徴(TS-CPC):手技が簡便。広範な組織破壊のリスクあり14)
特徴(SC-TSCPC):低出力・長時間照射で周囲損傷を軽減。ポップ音を回避6)
特徴(MP-CPC):パルス照射で組織障害を軽減。反復施行が比較的容易2)
ECP / HIFU-UCCC
ECP:眼内から内視鏡下の直視照射。白内障手術との同時施行が可能1)。過凝固を視覚的に回避できる
HIFU-UCCC:超音波により毛様体を選択的に凝固。自動化されたコンピュータ支援型の処理で術者依存性が低い。焦点0.1×1 mmで標的選択性が高い
最大の違いは照射方式です。従来のTS-CPCは連続波で照射するため毛様体に広範な凝固壊死を生じますが、MP-CPCはON/OFFを繰り返すパルス照射で、OFF期間中に組織が冷却されるため損傷が限局的です。組織学的研究でも、MP-CPCでは毛様体上皮の部分的壊死にとどまることが確認されています。このため低眼圧や眼球癆のリスクが低く、反復施行も比較的安全とされています。
最大の違いはレーザー照射の方法です。従来のポップテクニックは1,750〜2,000 mWの高出力から開始し、組織破壊に伴うポップ音を指標にエネルギーを調整します。SC-TSCPCは1,250 mWの一定低出力を4秒間照射します。SC-TSCPCは周囲組織への損傷が少なく、術後炎症や合併症の頻度が低いとされます。眼圧下降効果は両者で同等と報告されています。
原発開放隅角緑内障(POAG)PPPによれば、TS-CPCの成功率は34〜94%と報告により幅が大きい3)。術後眼圧が21 mmHg以下に保たれる症例は54〜93%と報告されている。
| 対象 | 成功率 | 眼圧変化 |
|---|---|---|
| 一次手術(高眼圧群) | 58.3%(1年) | 30.6→低下 |
| 偽水晶体緑内障 | 60.6%(1年) | 27.5→15.8 |
| 新生血管緑内障 | 64.2%(2年) | 40.7→18.4 |
| 硝子体手術(PPV)・シリコーンオイル注入後 | 72.2%(12か月) | 29.7→14.6 |
| 角膜移植後緑内障 | 68.1%(1年) | — |
| 無水晶体緑内障 | 63.4%(1年) | 29.6→19.0 |
一次手術としてのSC-TSCPCでは、高ベースライン眼圧群(平均30.6 mmHg)の1年成功率は58.3%であった一方、低ベースライン眼圧群(平均16.2 mmHg)では28.1%にとどまった。角膜移植後緑内障では角膜移植の術式(PKP/DSAEK)は成功率に有意な影響を及ぼさなかった。
MP-CPCにより半年間にわたり約50%の眼圧下降が得られ、薬剤使用数も約1剤の減量が可能となる。眼圧下降が不十分な場合は術後1ヶ月以上の間隔を空けて追加照射が可能である。
文献の系統的レビューでは、治療後18ヶ月時点でMP-CPC群の52%が6〜21 mmHgの眼圧維持に成功したのに対し、CW-TSCPC群では30%であった。病型により再治療率は異なり、原発開放隅角緑内障12%、偽落屑緑内障16%、二次緑内障41.2%と報告されている。
| 項目 | MP-CPC | CW-TSCPC |
|---|---|---|
| 18ヶ月成功率 | 52% | 30% |
| 重篤合併症 | 稀 | 比較的多い |
| 再治療必要 | 多い | 少ない |
| 研究 | フォローアップ | 眼圧降下率 | 成功率 |
|---|---|---|---|
| Aptelパイロット | 3か月 | 35.7% | 83.3% |
| EyeMUST1 | 12か月 | 36.0% | 57.1% |
| De Gregorio | 12か月 | 45.7% | 85%(薬剤なし) |
Aptelらの初期パイロット研究では平均術前眼圧37.9 mmHgから3か月で26.3 mmHgへ低下した。EyeMUST1研究では12か月時点で57.1%の成功率であったが、原発開放隅角緑内障では二次性緑内障に比べ高い成功率を示した(78.6% vs 45.0%)。第2世代プローブ(8秒)は第1世代(6秒)より有意な眼圧降下改善を示した(35% vs 25.6%)。De Gregorioらは反復治療プロトコル(平均2.35回)で12か月時点で85%の成功率を報告した。
ECPでは眼圧下降率34〜57%が報告されている3)。
毛様体破壊術に共通する合併症として、疼痛、結膜充血、前房内炎症(フィブリン反応)、一過性眼圧上昇がある2)3)。最も重大な合併症は低眼圧と眼球癆であり、過凝固が主因である1)2)3)。交感性眼炎は極めて稀であるが報告がある3)。
連続波TS-CPCでは強膜の熱損傷による強膜菲薄化・穿孔が報告されている5)。78歳の原発開放隅角緑内障患者でTS-CPC後に強膜穿孔を生じ、分層角膜パッチグラフトで修復した症例が報告されている5)。
SC-TSCPCの術後合併症は概して軽微である。術後前房炎症(虹彩毛様体炎)9〜17%、嚢胞様黄斑浮腫2.7〜8.3%、一過性前房出血2〜6%、白内障進行(水晶体眼の18.8%)が報告されている。持続的な低眼圧・眼球癆・脈絡膜出血の報告は極めて稀である。ステロイド点眼の急激な中止によるリバウンド虹彩炎に注意が必要であり、2〜3週間ごとの漸減が推奨される。
MP-CPCは連続波TS-CPCより合併症が少ないとされるが、特有の合併症も報告されている。MP-CPC施行5週間後にIOL偏位を生じた症例が報告されており、チン小帯への熱損傷が機序として推定されている9)。
36歳の糖尿病患者で血管新生緑内障に対するMP-CPC後に角膜輪状浸潤(神経栄養性角膜症)を生じた報告もある8)。三叉神経の長毛様体神経への熱損傷による角膜知覚低下が原因と考えられている8)。
MP-CPC後の稀な合併症として神経栄養性角膜症(neurotrophic keratopathy: NK)が報告されている15)。マルファン症候群の47歳男性にMP-CPCを施行した症例では、術後4日目に両眼に無痛性の角膜上皮欠損が出現し、角膜知覚の低下を認めた15)。左眼は10日で治癒したが、右眼は治癒が遅延し角膜瘢痕を残した15)。マルファン症候群の強膜菲薄化によりレーザーエネルギーの吸収が増大し、長後毛様体神経が損傷された可能性がある15)。
ECPでは眼内操作に伴う合併症がある。75歳の偽落屑緑内障患者で白内障手術+ECP後に水疱性脈絡膜剥離を生じ、外科的ドレナージを要した症例が報告されている10)。
また、ECP既往眼に対する線維柱帯切除術中に硝子体脱出を生じた2症例が報告されている11)。ECPによるチン小帯損傷が機序として推定されており、ECP既往のある患者に対する内眼手術時には硝子体脱出への備えが必要である11)。
小型化HIFU-UCCCは良好な安全性プロファイルを示す。結膜充血(最大100%)、点状表層角膜炎(33〜45%)、一過性前房内炎症、一過性角膜浮腫、一過性低眼圧(脈絡膜剥離を伴うことがある)、一過性黄斑浮腫、眼圧スパイクが報告されている。EyeMUST1研究では12名が二次的な緑内障手術を要した。低眼圧・眼球癆・持続的視力低下などの重篤合併症の頻度はUCCCでは著しく低い。
TS-CPC / MP-CPC / SC-TSCPCの合併症
疼痛:術後数日間持続しうる。鎮痛薬で管理2)
強膜穿孔:連続波での過凝固により報告あり5)
IOL偏位:MP-CPC後5週で発生した報告。チン小帯への熱損傷が推定機序9)
角膜輪状浸潤:長毛様体神経損傷による神経栄養性角膜症8)
神経栄養性角膜症:マルファン症候群患者でMP-CPC後に発生15)
低眼圧・眼球癆:過凝固が原因。MP-CPC・SC-TSCPCでは頻度が低い2)14)
ECP / HIFU-UCCCの合併症
フィブリン反応:術後の前房内炎症。ステロイド点眼で管理3)
水疱性脈絡膜剥離:Phaco-ECP後に報告。外科的ドレナージを要した10)
硝子体脱出:ECP後の線維柱帯切除術中に発生。チン小帯損傷が推定機序11)
HIFU-UCCC:結膜充血・点状表層角膜炎が高頻度。重篤合併症は著しく低い
| 合併症報告 | 術式 | 機序 |
|---|---|---|
| 強膜穿孔5) | TS-CPC | 熱による強膜損傷 |
| IOL偏位9) | MP-CPC | チン小帯熱損傷 |
| 神経栄養性角膜症15) | MP-CPC | 長後毛様体神経損傷 |
| 脈絡膜剥離10) | ECP | 毛様体過凝固 |
共通の合併症として疼痛、結膜充血、前房内炎症、一過性眼圧上昇があります。最も重大なのは過凝固による低眼圧と眼球癆です。TS-CPCでは強膜穿孔、MP-CPCではIOL偏位や角膜輪状浸潤・神経栄養性角膜症、ECPでは水疱性脈絡膜剥離や後の手術時の硝子体脱出が報告されています。SC-TSCPCやMP-CPCは連続波TS-CPCと比較して組織障害が軽度であり、重篤な合併症の頻度は低いとされています。HIFU-UCCCでは重篤合併症の頻度は著しく低いですが、結膜充血や点状表層角膜炎は高率に認められます。
ダイオードレーザー(波長810nm)は毛様体色素上皮のメラニン色素に選択的に吸収され、光エネルギーが熱に変換される4)。この熱により毛様体上皮が凝固壊死を起こし、房水産生能が低下する。
連続波TS-CPCとMP-CPCの組織学的差異を比較した研究では、連続波TS-CPCを受けた眼では毛様体上皮・間質の広範かつ全層性の凝固壊死が認められたのに対し、MP-CPCを受けた眼では限局的・部分的な壊死にとどまっていた14)。MP-CPCではOFF期間中の組織冷却により、照射部位周囲への熱拡散が抑制されると考えられている14)。
SC-TSCPCでは低出力・長時間照射により毛様体の熱凝固がより緩徐に進行するため、周囲の非色素組織への熱拡散と損傷が軽減される。
TS-CPCの作用がメラニン色素に依存することは、眼皮膚白皮症1A型(OCA1A)患者でのTS-CPC無効例により実証されている7)。OCA1Aではチロシナーゼ活性が完全に欠損しメラニンが産生されないため、810nmレーザーが毛様体に吸収されず、眼圧下降効果が得られなかった7)。
一方、ECPでは内視鏡下に毛様体突起を直視しながら照射するため、メラニン色素への依存度がTS-CPCより低いとされる1)。
MP-CPCはon期間(0.5 ms)にメラニンを含む有色素毛様体上皮が選択的にエネルギーを吸収する。off期間(1.1 ms)に周辺組織が冷却されるため、無色素毛様体上皮への熱損傷が最小限に抑えられる15)。
MP-CPCの眼圧下降機序はCW-TSCPCとは異なると考えられている。毛様体扁平部の細胞を刺激し、ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進することが主な機序である可能性がある。房水産生の抑制ではなく流出促進が主体であるため、低眼圧・眼球癆のリスクが低いと考えられている。
UCCCの眼圧降下作用には2つの機序が関与する。
毛様体破壊による房水産生抑制: 超音波は組織内に最大80℃の熱上昇を引き起こし、凝固壊死を誘発する。動物実験では毛様体突起の中間および遠位部の二層上皮が消失し、浮腫と血管充血が生じた。突起基底部の上皮は保存され、間質の線維化は認められなかった。治療領域と非治療領域の境界は極めて明瞭であった。
ぶどう膜強膜流出路の増加: 超音波生体顕微鏡を用いたヒト生体内研究では、治療された12眼中8眼で脈絡膜上腔の液体貯留が形成され、これが眼圧低下と相関した。前眼部OCTで新しい強膜内低反射腔の形成が記録されており、熱誘発性の強膜線維層間剥離がその機序と示唆されている。生体共焦点顕微鏡では照射部位の結膜マイクロシストの増加が示されており、房水の経強膜・経結膜流出の証拠と考えられている。
毛様体破壊術後の眼圧下降は主に房水産生量の減少による。しかし一部の研究では、ぶどう膜強膜流出路の促進も眼圧下降に寄与している可能性が示唆されている1)。プロスタグランジン放出を介した機序が推定されているが、詳細は未解明である。
TS-CPCでは810nmダイオードレーザーが毛様体色素上皮のメラニンに吸収されて熱に変換されることで凝固壊死が生じます。OCA1A型アルビノではチロシナーゼ活性が完全に欠損しメラニンが産生されないため、レーザーが吸収されず眼圧下降効果が得られません。実際にOCA1A患者でTS-CPCが無効だった症例が報告されており、メラニンがこの術式の作用に不可欠であることが証明されています。
MP-CPCは組織障害が軽微であることから、従来の「最終手段」としての位置づけを超え、より早期の緑内障への適応拡大が議論されている1)。反復施行が比較的安全であるため、段階的な眼圧コントロールが可能である2)。小児緑内障への応用も試みられているが、成人(成功率72%)と比較して小児(成功率22%)では有効性が低いとの報告がある。出力・照射時間・治療範囲・掃引速度など、修正可能なパラメータの最適値は確立されていない。
MP-CPC施行前の角膜知覚検査によるリスク層別化が提唱されている15)。強膜菲薄化を伴う結合織疾患(マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群など)や糖尿病患者では、レーザー出力と照射時間の調整により神経栄養性角膜症のリスクを軽減できる可能性がある15)。
SC-TSCPCとMP-CPCの直接比較RCTの実施、最適な照射パラメータの標準化、長期成績(5年以上)のデータ蓄積、一次手術としての適応基準の確立が今後の課題として挙げられる。低ベースライン眼圧群(21 mmHg未満)では成功率が低い傾向があるため、適応の判断には術前眼圧レベルを考慮する必要がある。
UCCCは早期緑内障への適用拡大が検討されている。Aptelらは濾過手術既往のない早期緑内障患者を対象とした前方視的研究で、12か月時点で37%の眼圧降下率と63%の条件付き成功率を報告した。Graberらは慢性閉塞隅角緑内障患者を対象としたパイロット研究で、術前18.4 mmHgから6か月後に14.8 mmHgへの有意な低下を報告した。報告されている最長フォローアップは12か月であり、長期成績は未確立である。
Boston KPro type II挿入眼では通常の緑内障手術が困難であり、TS-CPCが有用な代替手段として報告されている12)。毛様体メラノーマに続発した緑内障に対しても、腫瘍部位を避けた限定的TS-CPCが眼圧コントロールに成功している13)。
血管新生緑内障に対するslow-burn CPC(1250mW、4000ms)は、従来のTS-CPCで問題となるpop音(過凝固の徴候)を回避しつつ眼圧下降を達成する手法である6)。ほぼ全周の周辺虹彩前癒着を有する血管新生緑内障症例において、63%がチューブシャント手術を回避できたことから、特に血管新生緑内障管理における新たな選択肢となる可能性がある6)。
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