前面高低図
正常:≤+12 µm
疑い:+13〜+15 µm
リスクあり:>+15 µm

角膜形状解析(corneal topography)は、角膜表面の幾何学的特性を測定・評価する技術である。「topos(場所)」と「graphein(描く)」というギリシャ語に由来する。
従来の角膜曲率計は角膜前面中央3〜4mmの曲率のみを測定するが、屈折矯正手術の評価にはこれでは不十分である。現在ではコンピュータ化された角膜形状解析が臨床現場における標準検査となっている。
屈折矯正手術の術前評価では、コンタクトレンズ休止期間を設けた上でトポグラフィとトモグラフィを施行する4)。不正乱視や角膜後面の異常は予測不能な屈折結果や術後拡張症と関連する4)。
角膜屈折力は眼屈折力の約2/3を占めており、屈折矯正手術は角膜形状の変化によって矯正を行う。術前に潜伏性円錐角膜を見逃すと、術後に角膜拡張症という重篤な合併症を引き起こしうる。トポグラフィは角膜全面の形状を評価し、通常の検査では検出困難な微小な異常を発見できるため、術前評価に不可欠である。
トポグラフィマップではジオプトリー値が色で表される。暖色は急峻な曲率(高いD値)を、寒色は平坦な曲率(低いD値)を示す。正常角膜は周辺部で平坦化し寒色で表される。両眼は鏡像対称のトポグラフィを持つ傾向がある。
Rabinowitzらは正常角膜390眼に基づき、以下のパターンを提唱した。
参照面(最適適合球面:BFS)との高さの変動を表示する。参照面より高い値は暖色、低い領域は寒色で示される。
前面高低図
正常:≤+12 µm
疑い:+13〜+15 µm
リスクあり:>+15 µm
後面高低図
正常:≤+17 µm
疑い:+18〜+20 µm
リスクあり:>+20 µm
後面高低差は円錐角膜の優れた予測因子であり、多くの研究で90%以上の感度・特異度が報告されている。
角膜厚の分布を全面的に表示する。中心角膜厚(CCT)500 µm未満がトポグラフィの非対称性と併せて初期円錐角膜の診断基準となる。
近視矯正LASIKでは角膜前面中央が平坦化し、角膜厚の中央が菲薄化するが、角膜後面には変化がない。術後の角膜形状解析は切削床の評価や拡張症の検出に有用である。
トポグラフィやトモグラフィの異常が潜伏性円錐角膜を示唆する場合、屈折矯正手術後に臨床的に有意な拡張症に進行しうる4)。
主なリスク因子は以下の通りである4)。
異常な術前トポグラフィと不十分なRSTが角膜拡張症の最も重要な寄与因子である5)。全体として、角膜拡張症のリスクはPRKおよびSMILEの方がLASIKと比較して低い4)。PRKでは残余角膜実質厚が厚く、角膜フラップがないことがその理由とされる4)。
LASIK後の増強手術(フラップリフト)では上皮迷入が32%と高頻度に報告されている。Li & Guは、増強手術後第1日目に急速に進行した上皮迷入の症例を報告した3)。角膜トポグラフィでは鼻下方象限の前方高低差の経時的増加と同部位の角膜肥厚を認め、不正斜乱視が第1日の0.6Dから第5日には2.0Dに増大した3)。
| 指標 | 基準値 | 特徴 |
|---|---|---|
| BAD-D | <1.6:正常、>2.6:異常 | 高低差+角膜厚の統合評価 |
| PTA | <40%で低リスク | (フラップ厚+切削深)/中心角膜厚 |
| KISA% | 潜伏性KCで60〜100% | 中心K+I-S+SRAX |
BelinとAmbrosioが開発した包括的スクリーニングツールである4)。前後面の高低差と角膜厚に基づく5つのパラメータ(dp, db, df, dt, dy)を統合した「D」スコアで評価する。各パラメータの標準偏差1.6未満が正常(白)、1.6〜2.6が疑い(黄)、2.6超が異常(赤)と表示される。
LASIKの切除深はムネリンの公式で推定される。
t = S²D / 3(t:切除深〔μm〕、S:光学帯径〔mm〕、D:矯正量〔等価球面度数〕)
残余角膜実質厚(RSB)= 中心角膜厚 − 切除深 − フラップ厚 として算出し、最低250μm(安全域300μm)を確保する。日本眼科学会ガイドラインでも残存角膜厚250μm以上が規定されており、−10Dを超す近視は角膜矯正の限界とされる。フェムトセカンドレーザーによるフラップ(100〜120μm)は機械式マイクロケラトーム(平均120μm、ばらつきあり)より均一で薄く、RSB確保に有利である。光学帯は従来6.5mmが標準であるが、瞳孔径を15%超上回る設定で術後高次収差を効果的に抑制でき、7mm光学帯では3.50Dの近視矯正でほぼ高次収差の増加がなかったと報告されている5)。光学帯の拡大は切除量の増加を意味するため、屈折量・角膜厚・瞳孔径を総合的に考慮する。
KLEx(SMILE)ではキャップが生体力学的強度を保持するため、LASIK式のPTA計算をそのまま適用すると過剰にリスクを見積もる可能性がある5)。KLExでは最小RST 220μm・総未切断実質厚300μmを保持する計画プロトコルが報告されている5)。
PTA =(フラップ厚 + 切削深)/ 術前中心角膜厚
PTA 40%以上は術前角膜形状が正常な眼においても角膜拡張症と有意に関連する7)。RSBのみでは検出できないリスクを捉えるため、構成する個々の要素よりも感度が高い5)。
年齢、角膜厚、トポグラフィパターン、RSB厚、矯正量を含むリスク要因層別化スケールである。累積スコア0〜2点が低リスク、3点が中等度、4点以上が高リスクと評価される。
OCTによる上皮厚マッピングは拡張症のスクリーニングに有用である。拡張性疾患では角膜の急峻化が上皮の菲薄化を伴い、「上皮ドーナツパターン」を呈する。一方、コンタクトレンズワーページでは急峻化部位に上皮の肥厚と正常角膜厚を認め、両者の鑑別が可能である。
トポグラフィ/トモグラフィは角膜浮腫や瘢痕による不正乱視の評価にも有用であり、角膜混濁の深さの評価は手術計画の立案に役立つ6)。
Belin-Ambrósio Enhanced Ectasia Total Deviation(BAD-D)は、角膜の前後面高低差と角膜厚の情報を統合した包括的な拡張症スクリーニング指標である。5つのパラメータの標準偏差に基づく最終「D」スコアで評価し、1.6未満が正常、2.6超が角膜拡張症の可能性ありと判定する。屈折矯正手術の術前スクリーニングにおいて広く使用されている。
TG-LASIKは角膜トポグラフィデータに基づくカスタム切削を行う屈折矯正手術である。角膜の自然な形状を改善し、高次収差を低減させる理論的利点がある。
Rush らの前向き研究では、Phorcides解析ソフトウェアを用いたTG-LASIKにおいて、PROWL質問票による全体的視覚満足度指数が術前4.07から術後5.00(最高値)に改善した2)。100%の患者が術後最高満足度を報告した2)。両眼裸眼視力は26週時に100%が20/16以上、87.0%が20/12.5以上を達成した2)。
夜間視力、グレア、ハロー、スターバースト、ドライアイ症状のすべてにおいて術後の有意な改善が認められた2)。角膜高次収差は6mm光学帯で有意に増加したが、暗所瞳孔条件下の総高次収差には有意な変化がなかった2)。
術後の角膜形状解析は以下の評価に有用である。
検査は術後少なくとも1週間後に施行する。角膜拡張症の進行の最小基準は、前面の急峻化、後面の急峻化、菲薄化のうち少なくとも2つの記録である4)。
異常に急峻または平坦な角膜曲率を評価することは重要である。急峻な角膜ではボタンホールのリスクが高く、平坦な角膜ではフリーキャップのリスクが高い。これらの合併症は機械的マイクロケラトームで報告されているが、フェムトセカンドレーザーでは稀である。
トポグラフィガイド下LASIKは角膜形状データに基づいて個別化された切削パターンを適用する。角膜の不正乱視の軽減や高次収差の低減が期待でき、従来のウェーブフロントガイド/最適化LASIKと比較して高い患者満足度が報告されている2)。Phorcides解析ソフトウェアにより客観的な治療パラメータの決定が可能となり、術者間の再現性も向上する。
角膜屈折力は眼屈折力の約2/3を占める。角膜には直乱視では前後面のelevation mapが水平の尾根パターンを示し、axial power mapでは縦の蝶ネクタイパターンを呈する。倒乱視では前面elevation mapが垂直の尾根パターンとなるが、前後面のパターンは非対称となる。
円錐角膜では角膜中央から下方が菲薄化し、前後面とも前方突出する。その結果、角膜中央から下方にかけて局所的な急峻化が生じる。
円錐角膜の角膜上皮は突出部で菲薄化し、周囲に厚い上皮の輪(上皮ドーナツパターン)を形成する。上皮の最薄点は実質の突出に対して耳側・下方に変位する。この上皮リモデリングにより、トポグラフィのみでは拡張症の程度が過小評価される可能性がある。
Ambrosio Jrらは、AIが既存のトモグラフィおよびバイオメカニカル評価を補強し、角膜拡張症の検出を改善できる可能性を示した。正常角膜、疑わしい不整角膜、円錐角膜を識別する精度において、機械学習アルゴリズムが角膜専門医に迫る結果を示す報告もある。
Scheimpflugカメラによる角膜デンシトメトリは、角膜透明性の客観的測定法である1)。Balpardaらの前向き研究(110眼)では、10mm以下の領域で優れた再現性を示し、1.0 GSU以上の変化が真の透明性変化と判定できることが示された1)。10〜12mm帯域は分散が大きく、信頼性が不十分であった1)。PRK後の角膜ヘイズの定量評価に有用となる可能性がある1)。
角膜の剛性が低い患者ではKLEx(角膜屈折レンチキュール摘出術)後の残余屈折誤差リスクが2〜3倍高いことが報告されている5)。バイオメカニクスの測定は手術精度の向上に有意な価値を持つ可能性がある5)。角膜生体力学指標をトポグラフィパラメータと組み合わせることで、KLExの予測精度が25%以上向上したとの報告もある5)。
ノモグラム調整はレーザー手術の精度と予測可能性に直結する5)。術前等価球面度数が最も重要な因子であり、年齢・眼左右差・角膜曲率・角膜径・角膜生体力学特性なども関連する。調整戦略には単純な球面・円柱修正、多変量回帰分析、人工知能による個別化調整がある5)。
角膜デンシトメトリはScheimpflugカメラで角膜の後方散乱光を測定し、透明性を0〜100 GSUの数値で客観的に表す1)。PRK後の角膜ヘイズの経時的変化や角膜クロスリンキング後の反応を定量評価できる。10mm以下の領域では1.0 GSU以上の変化が臨床的に有意な変化とされる1)。
- Balparda K, MesaMesa S, MayaNaranjo MI, et al. Determination of the repeatability of corneal densitometry as measured with a Scheimpflug camera device in refractive surgery candidates. Indian J Ophthalmol. 2023;71:63-68.
- Rush SW, Pickett CJ, Wilson BJ, Rush RB. Topography-guided LASIK: a prospective study evaluating patient-reported outcomes. Clin Ophthalmol. 2023;17:2815-2824.
- Li X, Gu Y. Unusual visual impairment after enhancement refractive surgery. J Surg Case Rep. 2024;2:rjae074.
- American Academy of Ophthalmology Corneal Ectasia PPP Panel. Corneal Ectasia Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.
- Ang M, Gatinel D, Reinstein DZ, et al. Evidence-based guidelines for keratorefractive lenticule extraction. Ophthalmology. 2025;132(4):404-418.
- American Academy of Ophthalmology Corneal/External Disease PPP Panel. Corneal Edema and Opacification Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2019;126(1):P216-P285.
- Santhiago MR, Smadja D, Gomes BF, et al. Association between the percent tissue altered and post-laser in situ keratomileusis ectasia in eyes with normal preoperative topography. Am J Ophthalmol. 2014;158(1):87-95.