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角膜・外眼部疾患

涙点プラグ

涙点プラグ(punctal plugs)は、涙液排出系を閉鎖して眼表面の涙液量と保持時間を増加させるための小型医療デバイスである。涙液は涙腺から分泌された後、上下の眼瞼内側縁に位置する涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管を経て鼻腔へと排出される。涙点プラグはこの排出経路を閉鎖することで、いわば「排水口を塞いで涙液を溜める」役割を果たす。

ドライアイや各種眼表面疾患の治療において、局所点眼薬の補助療法として広く使用されている。

涙道閉鎖デバイスは挿入部位と素材により分類される。

涙点プラグ

挿入部位:涙点に留置する。

視認性:細隙灯顕微鏡で容易に確認・除去が可能。

特徴:深部への迷入リスクは低いが、脱落リスクがやや高い。

涙小管プラグ

挿入部位:垂直または水平涙小管に挿入する。

視認性:位置特定や回収がやや困難。

特徴:脱落リスクは低いが、深部への迷入リスクがある。

  • シリコン型:長期的な閉鎖を提供する。日本ではスーパーイーグル™プラグ(Eagle Vision社)とパンクタルプラグ®F(FCI社)が主に使用される
  • アテロコラーゲン型(キープティア®):2〜10°Cでは液体、体温付近で白色ゲルとなる。涙点径測定や涙点拡張が不要で挿入が容易だが、効果持続は約2ヶ月とシリコン型より短い
  • 感温性アクリル型(SmartPlug):涙小管内で温度上昇により短縮・拡幅して適合する
  • 吸収性ハイドロゲル型(Form Fit):涙液に触れると膨張しゼラチン状になる
  • コラーゲン型:一時的閉鎖用。挿入後1〜2週間で溶解する。永久的閉鎖の前の試験的導入に使用
Q 涙点プラグにはどのような種類がありますか?
A

大きく分けてシリコン型(長期使用)とアテロコラーゲン型(液体プラグ、約2ヶ月持続)がある。シリコン型は涙点に留置する涙点プラグと涙小管に挿入する涙小管プラグに分かれる。永久的プラグの前に一時的なコラーゲンプラグで試験的導入を行うのが一般的である。

涙点プラグの基本的な適応は、点眼治療では症状改善が不十分なドライアイ症例である。

  • 涙液減少型ドライアイシェーグレン症候群(SS)、移植片対宿主病(GVHD)、Stevens-Johnson症候群(SJS)に伴うドライアイが特に良い適応
  • 角膜糸状物を伴う重症ドライアイ
  • 上輪部角結膜炎
  • 後天性涙点狭窄:有孔涙点プラグにより涙液の流れを維持する
  • 局所薬の眼表面滞留時間の延長緑内障治療薬などの効果増強

ドライアイ治療における位置づけ

Section titled “ドライアイ治療における位置づけ”

日本のドライアイ研究会が提唱するTFOT(涙液層別治療)の概念に基づき、涙液層のどこに異常があるかを診断して治療方針を決定する。涙液減少型(area break)の重症ドライアイにおいて、点眼薬(人工涙液、ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウム、レバミピド)のみでは水分量を確保できない場合に涙点プラグの適応となる。

コクランレビュー(18のRCT)では、涙点プラグによるドライアイの症状・徴候の改善について結論は決定的ではなかった。プラグの種類やDEDのサブタイプ、重症度にばらつきがあり、標準化された試験方法が不足していた1)

涙点プラグの挿入は外来の細隙灯顕微鏡下で施行可能である。安定した体位がとれない場合や上涙点への挿入時は仰臥位で行うとよい。

患者への説明事項

  • 流涙や霧視が生じうること(特にBUT短縮型ドライアイでは注意)
  • 眼脂の増加
  • プラグによる異物感
  • 自然脱落の可能性(平均1年半で約半数が脱落)
  • 合併症(涙点腫脹・拡大、瘻孔など)
  1. ゲージング:涙点ゲージ(Eagle Vision社製プラグゲージ、大高式プラグゲージ等)で涙点径を測定する。平均的な涙点径は0.5〜0.8 mmで、上涙点は下涙点より小さい傾向がある。パンクタルプラグ®Fはワンサイズ設計のため測定不要
  2. 涙点拡張:必要に応じて涙点拡張器で涙点を拡張する。プラグによっては装填済みインサーターの反対側に拡張器が付属
  3. 挿入:インサーターを用いてプラグを涙点に挿入する。下涙点では下眼瞼を外下方に牽引し、上涙点では上眼瞼を翻転外上方に牽引しながら挿入する。プラグ全体が涙点に埋没していないことを確認してからハンドル部分を押して留置する

涙点径より大きいプラグを無理に挿入すると涙道内への迷入リスクがあり、小さいプラグでは脱落を繰り返す。適切なサイズ選択が重要である。

液体プラグ(キープティア®)の充填

Section titled “液体プラグ(キープティア®)の充填”

キープティア®は涙洗と同様の方法で充填する。注入針を涙小管の半分程度まで挿入し、上下涙点に注入する。針を深く押しすぎると涙嚢にまで入り閉塞効果が得られないため注意する。注入後は閉瞼してホットパックで10〜15分温め、ゲル化を促進する。40°C以上に上昇するとゲルが再液化し効果が失われるため、過度の加温を避ける。

涙点プラグはピンセットで容易に除去できる。深部へ移動した場合は生理食塩水による加圧洗浄を行う。涙小管炎や肉芽腫を合併した涙小管プラグの除去には涙小管切開術が必要になることがある。

涙点プラグ挿入による涙液量の増加は挿入後すぐに実感できる。1週間後の受診で涙液メニスカスの改善がなければ効果不十分と判断する。

片方の涙点のみへの挿入で開始することが多く、効果不十分な場合は上下両涙点への挿入を検討する。

TFOS DEWS IIIによると、涙点プラグは中等度〜重度の涙液減少型ドライアイに対する介入的治療として位置づけられている。30名に非吸収性涙点プラグを両下涙点に挿入した前向き研究では、3週間後にグルタチオン合成酵素やIL-1などの涙液タンパク質が上方制御された1)

Q 涙点プラグの費用はどのくらいですか?
A

日本の診療報酬では「K200-2 涙点プラグ挿入術・涙点閉鎖術(760点)」が適用される。上下涙点に実施した場合も含め1回のみの算定である。涙点プラグの材料費は1涙点ごとに393点である。両眼4涙点に挿入した場合は3,092点(3割負担で約9,300円)となる。

涙点プラグによる重篤な合併症は少ないが、以下が報告されている1)

  • 自然脱落:最も頻度の高い合併症。平均1年半で約半数が脱落するとの報告がある
  • プラグの迷入:涙道内へプラグが落下する。改良されたデザインにより減少しているが注意が必要
  • 流涙(epiphora):涙液貯留過多による。試験的導入で確認することで予防可能
  • 肉芽形成:プラグ周囲の炎症反応。ステロイド点眼で対応するが、消退しない場合は抜去する
  • 涙点拡大:脱落・再挿入の繰り返しにより涙点が拡大し、プラグの適合が困難になる
  • 涙小管炎・涙嚢炎:稀。プラグを除去し抗菌薬の全身投与を行う
  • 角膜上皮障害:プラグの接触による

合併症を認めた場合はまずプラグを除去する。肉芽に対しては涙点閉塞効果を期待する場合は経過観察、消失を期待する場合はステロイド点眼を行う。


6. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

Section titled “6. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”

Khannaらはオープンソースの3D設計ソフト(FreeCAD)を用いて、薬剤送達システムを内蔵した涙点プラグを設計し、LCD方式3Dプリンターで造形した。中空円筒部に薬剤を貯留可能な構造であり、患者個々の涙点径に合わせた個別化が可能である2)

現時点では使用素材がレジン(非生体適合性)であるため臨床使用はできないが、将来的にポリエチレングリコール(PEG)などの生体適合性素材を用いた涙点プラグの開発が計画されている2)

薬剤送達プラットフォームとしての涙点プラグ

Section titled “薬剤送達プラットフォームとしての涙点プラグ”

点眼治療のアドヒアランス不良(非遵守率約40%)への対策として、持続的薬剤送達システムの研究が進んでいる。プロスタグランジン含有涙点プラグは、緑内障・高眼圧症に対する点眼療法に代わる選択肢として検討されている。

Q 涙点プラグは永久的に使用するものですか?
A

シリコン型の涙点プラグは長期使用を目的としているが、自然脱落が起こりうるため永久的ではない。脱落した場合は再挿入が可能である。涙点プラグの保持が困難で繰り返し脱落する場合は、涙点焼灼術による永久的閉鎖が検討される。コラーゲン型は1〜2週間、アテロコラーゲン型は約2ヶ月で効果が消失する一時的なものである。


  1. TFOS DEWS III Management and Therapy Report. Am J Ophthalmol. 2025.
  2. Khanna T, Akkara JD, Bawa V, Sargunam EA. Designing and making an open source, 3D-printed, punctal plug with drug delivery system. Indian J Ophthalmol. 2023;71:297-299.

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