頻度の高い眼所見
強膜の青黒色色素沈着(オスラー徴候):瞼裂間の鼻側・耳側の角膜輪部付近に好発する。外直筋付着部に特にみられやすい。
油滴状角膜沈着:ボウマン膜レベルの斑点状沈着。経時的に進行する。
結膜の色素沈着:拡張した結膜血管を伴うことがある。
強膜色素沈着パターン:虫様型・瞼裂斑様型・点状型・層状型の4型が報告されている。

アルカプトン尿症(AKU: alkaptonuria)は、チロシン分解経路の中間体であるホモゲンチジン酸(HGA)の分解を触媒するホモゲンチジン酸1,2-ジオキシゲナーゼの欠損により、HGAが体内に蓄積する稀な常染色体劣性遺伝のアミノ酸代謝異常症である。原因遺伝子は第3染色体(3q2)に位置する。
1902年にアーチボルド・ギャロッド(Sir Archibald Garrod)が遺伝性疾患として報告し、「先天性代謝異常(inborn errors of metabolism)」の概念を初めて提唱した。世界的な発生率は25万〜100万人に1人と推定される2)。スロバキアとドミニカ共和国では約1.9万人に1人と高頻度である。日本ではきわめてまれな疾患である。
AKUは暗色尿・組織黒変症(ochronosis)・組織黒変性関節症を古典的三徴とする。HGAはベンゾキノン酢酸を介した酸化プロセスによりメラニン様重合体を形成し、結合組織に沈着して多系統疾患を引き起こす。眼の組織黒変症は平均30歳前後で出現し、しばしば疾患の初期徴候となる。
組織黒変症はHGA由来のメラニン様重合体が結合組織に沈着し、青黒色の変色を呈する状態である。名称はその色調に由来する。強膜・耳介軟骨・関節軟骨・心臓弁・腎臓など全身の結合組織に沈着する。眼では強膜・結膜・角膜が侵される。外因性組織黒変症(ハイドロキノンなどの外用薬による皮膚の変色)とは異なり、AKUの組織黒変症は内因性(遺伝性)である。

全身症状は年代とともに進行する。
| 年代 | 主な症状 |
|---|---|
| 小児期 | 暗色尿のみ |
| 20歳代〜 | 関節炎(膝・股・脊椎) |
| 30歳代〜 | 組織への色素沈着 |
| 40歳代〜 | 心弁膜症・腎結石 |
眼の組織黒変症は通常30歳前後から認められ、しばしばAKUの初期徴候となる。
頻度の高い眼所見
強膜の青黒色色素沈着(オスラー徴候):瞼裂間の鼻側・耳側の角膜輪部付近に好発する。外直筋付着部に特にみられやすい。
油滴状角膜沈着:ボウマン膜レベルの斑点状沈着。経時的に進行する。
結膜の色素沈着:拡張した結膜血管を伴うことがある。
強膜色素沈着パターン:虫様型・瞼裂斑様型・点状型・層状型の4型が報告されている。
比較的稀な眼所見
強膜・結膜の色素沈着自体は通常視力に直接影響しない。しかし角膜への沈着が進行した場合や、隅角への色素蓄積により緑内障が発症した場合は視力低下を招きうる。定期的な眼科検査による経過観察が推奨される。
AKUはHGD遺伝子(3q2)の変異によるホモゲンチジン酸1,2-ジオキシゲナーゼの活性欠損が原因である。この酵素は主に肝細胞で産生され、チロシン分解経路でHGAの分解を触媒する。酵素欠損によりHGAが体内に蓄積し、尿中に大量排出される(1日1〜8g)1)。
HGAはコラーゲン組織に沈着し、特に鼻・耳・頬・結膜・筋肉付着部・角膜・強膜に蓄積する。
ガスクロマトグラフィーが利用できない場合は、ベネディクト試験・水酸化ナトリウム試験・硝酸銀試験・塩化第二鉄試験で代用可能である1)。
AKUに対する根治療法は長らく存在しなかったが、ニチシノンの登場により疾患修飾療法が可能となった。
ニチシノンの副作用としてチロシン血症に起因する樹枝状角膜症が報告されている1)。チロシン値を500〜600μmol/L未満に維持することで副作用を予防できるとされる1)。
SONIA 2試験では10mg/日のニチシノンにより、関節痛・脊椎痛の減少、骨密度(T-score)の改善、眼色素沈着の進行抑制が48か月間にわたり示された2)。
ニチシノン(nitisinone)は4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素を阻害し、HGAの産生を抑制する薬剤である。もともと遺伝性チロシン血症1型の治療薬として承認されていた。SONIA 1試験で8mg/日投与により24時間尿中HGAを98.8%低下させることが示された2)。SONIA 2試験で関節症状・眼症状の進行抑制が確認され、2020年に欧州で成人AKU患者への使用が承認された2)。
ホモゲンチジン酸1,2-ジオキシゲナーゼは肝細胞で産生され、チロシン分解経路でHGAをマレイルアセト酢酸に変換する。この酵素が欠損するとHGAが体内に蓄積する。
HGAはベンゾキノン酢酸を介した酸化プロセスによりメラニン様重合体(組織黒変性色素)を形成する。この色素が結合組織に付着し、青黒色の変色と組織障害を引き起こす。
コラーゲン豊富な結合組織にHGA重合体が沈着する。眼では以下の部位に好発する。
HGAは軟骨細胞に対して直接毒性を示し、軟骨壊死と加速された関節破壊を招く2)。同様のプロセスが心臓弁膜にも生じ、大動脈弁狭窄症の有病率はAKU患者の22.2%に達する2)。尿中コラーゲンN-テロペプチド(NTx)が上昇しており、骨吸収亢進と骨粗鬆症の一因となる2)。
AKUは寿命そのものを短縮しないが、関節症・心血管合併症・腎結石により生活の質に重大な影響を及ぼす2)。ニチシノンの早期導入によりHGA蓄積を予防し、組織黒変症の進行を抑制できる可能性がある1)2)。しかし、すでに進行した組織黒変性関節症に対するニチシノンの効果は限定的であり、早期診断・早期治療が重要である1)。
眼の色素沈着は非進行性ではなく、経年的に拡大する。緑内障を合併しない限り視力予後は比較的良好である。