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角膜・外眼部疾患

アッシャー・リング

アッシャー・リング(Ascher ring)は、角膜中間周辺部の実質に出現する両眼性・対称性の環状混濁である。1964年にドイツのAscher博士が、片眼性の虹彩炎の既往を有する39歳の患者において両眼性の7mmの前部実質環を認め、初めて報告した。

報告例は世界的にもわずか数例にとどまり、極めて稀な所見である。1998年にMellesらが25歳の健康な患者における両眼性の中間周辺部環状混濁を報告し、過去の文献で報告された6名の症例もあわせて検討した。

無症状かつ非進行性であり、関連する遺伝形式や全身疾患は認められていない。除外診断として扱われ、治療の必要はない。

アッシャー・リングは無症状であり、細隙灯顕微鏡検査で偶然発見される。

臨床所見(医師が確認する所見)

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  • 環状混濁:角膜中間周辺部に出現する直径7〜8mmの灰白色・顆粒状の連続した環状実質混濁。幅は0.5mm未満と薄い。
  • 深度:実質内の様々な深さに位置する。断面は「V字型」を呈し、Descemet膜に近い部位で最も幅が広い。前方の頂点は角膜中央側にわずかに偏位する。
  • 両眼性・対称性:すべての報告例で両眼性・対称性に認められている。
  • 角膜透明性:環状混濁の中央部および周辺部の角膜は透明に保たれる。

アッシャー・リングの病因は完全には解明されていない。

当初はWessely免疫環に類似した免疫反応の結果と考えられていた。これは一部の患者に片眼性の虹彩炎や辺縁部浸潤の既往があったためである。しかし、近年では向心性勾配に沿って沈着した細胞外物質である可能性が示唆されている。

角膜実質の環状混濁として以下を鑑別する。

  • Wessely免疫環:抗原抗体反応により角膜実質に生じる環状浸潤。感染性角膜炎や角膜移植後に認められる。炎症所見を伴う点で異なる。
  • 感染性角膜炎の環状浸潤:真菌やアカントアメーバ角膜炎でみられる。疼痛や充血などの炎症症状を伴う。
  • 角膜ジストロフィ:遺伝性の角膜混濁。家族歴や進行性の経過で鑑別される。
  • LASIKフラップ辺縁:LASIK術後の角膜に類似した環状所見がみられることがあるが、手術歴の有無で容易に鑑別できる。
Q Wessely免疫環とアッシャー・リングの違いは何か?
A

Wessely免疫環は抗原抗体反応により形成される環状浸潤であり、感染性角膜炎や角膜移植後に炎症所見を伴って出現する。一方、アッシャー・リングは炎症所見を伴わない無症状の環状混濁であり、細胞外物質の沈着と考えられている。

アッシャー・リングは除外診断であり、他の原因による角膜実質混濁を除外した上で診断する。

  • 細隙灯顕微鏡検査:中間周辺部の実質内に両眼性・対称性の環状混濁を確認する。
  • 前眼部光干渉断層計AS-OCT:角膜実質内の混濁の深さと範囲を可視化する。
  • 共焦点顕微鏡:反射性の細胞外沈着物を細胞レベルで描出する。

角膜の中央部と周辺部が透明であること、炎症所見がないこと、両眼性・対称性であることが診断の手がかりとなる。

Q アッシャー・リングはどのくらい稀な疾患か?
A

世界的にも報告例はわずか数例にとどまる極めて稀な所見である。1964年の初報告以降、文献上で記載された症例は10例程度にすぎない。


アッシャー・リングは視機能に影響を及ぼさず、治療の適応はない。進行性もないため、経過観察のみで管理する。

予後は極めて良好であり、視力障害を生じた報告はない。

Q アッシャー・リングに治療は必要か?
A

治療は不要である。アッシャー・リングは視機能に影響を及ぼさない無症状の所見であり、進行性もない。経過観察のみで管理し、予後は極めて良好である。

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