①トレンドレンブルグ体位
適応:脊椎・首に変形があるが、体全体を後方に傾けることができる患者(強直性脊椎炎、脊柱後弯症など)。
方法:患者を椅子に座った状態で後方に傾け、足が頭よりも高くなるようにする。
注意点:頭部が下位になるため静脈怒張が生じうる。硝子体膨隆や後房圧上昇を灌流ボトル高で補正する。
前提条件:顕微鏡が前方回転不可の術者に有用。起坐呼吸を伴う患者には適さない。

白内障手術は通常、患者が仰臥位(supine position)をとった状態で行われる。しかし、多くの高齢患者や特定の疾患を有する患者は、様々な理由から仰臥位をとることができない。さらに、選択肢があれば大多数の患者は白内障手術中に少し上体を起こした状態を好む。
仰臥位困難の主な原因:
仰臥位困難の患者に対する手術は手術合併症リスクが高まる可能性があるため、患者と術者の双方が快適な状態を維持できるよう十分な準備が必要である。
可能である。適切な体位調整と顕微鏡の準備があれば、仰臥位がとれない患者に対しても安全な白内障手術が実施できる。ただし、標準の仰臥位手術と比較して合併症リスクが上昇する可能性があり、事前に患者へ十分な説明が必要である。
患者が訴える主な症状:
体位選択のために術前に評価すべき項目:
仰臥位困難患者への対処法は状況に応じて以下の3種類から選択する。
①トレンドレンブルグ体位
適応:脊椎・首に変形があるが、体全体を後方に傾けることができる患者(強直性脊椎炎、脊柱後弯症など)。
方法:患者を椅子に座った状態で後方に傾け、足が頭よりも高くなるようにする。
注意点:頭部が下位になるため静脈怒張が生じうる。硝子体膨隆や後房圧上昇を灌流ボトル高で補正する。
前提条件:顕微鏡が前方回転不可の術者に有用。起坐呼吸を伴う患者には適さない。
②直立座位(術者立位)
適応:胸部を平らにできないが頸部の伸展が可能な患者(起坐呼吸はあるが脊椎に柔軟性がある)。
方法:患者を直立して座らせ、ヘッドレストを調整して頸部を伸展させる。術者は立位で手術を行う。
アプローチ:通常「立位耳側アプローチ(standing temporal)」が最も行いやすい。
③対面直立座位
適応:胸部を平らにできず、かつ頸部の伸展もできない患者(最も一般的な仰臥位困難例)。
方法:患者を直立して座らせ、顕微鏡を垂直から40〜60度前方に傾けて眼と対面させる。術者は患者と向き合って座る(または立つ)。
切開部位:角膜の下半分に切開を置く。右利き術者では左眼に耳側切開(0度)、右眼に下方切開(270度)。
対面手術を実施するためには以下の条件が必要である。
**点眼・前房内麻酔(topical-intracameral anesthesia)**の使用が強く推奨される。患者が顕微鏡の方に視線を向けることができるため、眼を「光軸上(on axis)」に保つことができ、手術が容易になる。対面手術においてはこの原理が特に有用である。
対面手術では眼の位置が通常の仰臥位より床から高い位置にある。これを補正するために、灌流ボトル(infusion bottle)の高さを通常より高く設定する必要がある。トレンドレンブルグ体位でも同様に、静脈怒張による眼内圧上昇を補正するためボトル高を上げることで対処する。
角膜の下半分に切開を置くのが基本である。右利き術者の場合、左眼には耳側切開(0度)、右眼には下方切開(270度)を使用するのが最も行いやすい。ただし、患者がより仰向けに近い状態になれる、あるいは顎を顕微鏡の方へ向けられる場合はより柔軟に対応できる。
仰臥位困難患者の術後管理では通常の白内障手術と同様の観察を行うが、全身疾患(心不全、慢性閉塞性肺疾患)による術後全身管理にも注意を払う必要がある。
仰臥位困難患者における解剖学的・生理学的な問題点は以下の通りである。
脊椎・骨格変形による問題:
心肺疾患による問題:
トレンドレンブルグ体位での生理学的変化:
SohailらはFace-face直立座位ポジショニングによる白内障手術240症例の連続症例を報告しており、この術式が高齢・合併症を有する患者に対して実施可能であることを示している(2018年)。LeeらもこのアプローチをJ Cataract Refract Surg誌に報告している(2011年)。
近年、術者が手術用モニターを見ながら手術を行うHeads-up surgery(3D映像システムの活用)が導入されている。この技術により、顕微鏡の接眼部の角度に制約がなくなり、仰臥位困難患者への対面手術をより容易に行える可能性がある。