臨床検査
視力検査:高コントラスト視力を測定。良好でも他の機能異常が潜在する場合がある。
瞳孔反応(RAPD):片側性・両側非対称例での重要な客観的所見。
眼球運動:合併損傷の除外に必要。
空間コントラスト感度検査:爆風誘発外傷性視神経症に特異的な障害を検出する。
ハンフリー視野計(HVF):視野欠損のパターンと範囲を定量評価する。
VEP(視覚誘発電位):視覚系の電気活動を評価。潜時延長が爆風誘発外傷性視神経症で確認されている。

爆風誘発外傷性視神経症(Blast-Induced Traumatic Optic Neuropathy; BON)は、外傷性視神経症(TON)の一亜型である。穿通性損傷や重大な鈍的外傷を伴わず、爆風過圧(blast overpressure)への曝露によって生じる衝撃波が眼構造を介して視神経に伝播し、損傷を引き起こす点が特徴である。
爆風誘発外傷性視神経症は軍事・工業・民間の各領域で問題となる疾患である。
外傷性視神経症は交通事故などの鈍的外傷や穿通性損傷を契機とすることが多いが、爆風誘発外傷性視神経症は穿通性損傷や重大な鈍的外傷を伴わず、爆風の衝撃波のみで視神経が損傷される点が特徴である。物理的な外傷痕がなくても視神経障害が生じうる。
爆風誘発外傷性視神経症の視覚障害は軽度から重度まで広範囲にわたる。
以下の所見が確認される。高コントラスト視力が保たれていても、複数の機能異常が潜在している可能性がある点に注意を要する。
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 視力低下 | 軽度〜高度、個人差が大きい |
| 色覚異常 | 色誤認・色識別の低下 |
| RAPD | 片側性・両側非対称例で重要な所見 |
| 視野欠損 | ハンフリー視野計で定量評価 |
| RNFL菲薄化 | OCTで検出される網膜神経線維層の変化 |
| VEP潜時延長 | 視覚系電気活動の伝導遅延 |
| 空間コントラスト感度低下 | 高コントラスト視力が正常でも異常を示すことがある |
視神経乳頭は初期に浮腫を呈し、最終的に視神経萎縮・OCTでのRNFL消失へと進行する。Cockerhamらは、高コントラスト視力だけでなく空間コントラスト感度・視野検査・色覚を包括的に評価すべきと推奨している。VFQ-25調査では、爆風曝露退役軍人のQOLは糖尿病・ドライアイ・緑内障・黄斑変性症患者より有意に低いことが示されている。
ある。高コントラスト視力が保たれていても、視野異常・空間コントラスト感度低下・色誤認が生じることがある。高コントラスト視力のみでの評価では障害を見逃すリスクがある。
爆風過圧(blast overpressure)による衝撃波が眼構造を介して視神経に伝播し、剪断力・ストレスが加わることで視神経線維が損傷される。穿通性損傷や直接的な鈍的外傷を伴わない点が他の外傷性視神経症との本質的な違いである。
保護具(特殊アイウェア・ヘルメット)の着用が基本となる。反復曝露は動物モデルで神経変性と用量反応関係があることが示されており、曝露回数の制限も重要な予防策である。
爆風誘発外傷性視神経症の診断には包括的な問診と多角的な検査が必要である。爆発地点への近さ・曝露時間・保護具の有無・既存眼疾患・外傷性脳損傷の有無を詳細に聴取する。
臨床検査
視力検査:高コントラスト視力を測定。良好でも他の機能異常が潜在する場合がある。
瞳孔反応(RAPD):片側性・両側非対称例での重要な客観的所見。
眼球運動:合併損傷の除外に必要。
空間コントラスト感度検査:爆風誘発外傷性視神経症に特異的な障害を検出する。
ハンフリー視野計(HVF):視野欠損のパターンと範囲を定量評価する。
VEP(視覚誘発電位):視覚系の電気活動を評価。潜時延長が爆風誘発外傷性視神経症で確認されている。
画像検査
OCT:RNFL(網膜神経線維層)菲薄化・視神経乳頭変化を非侵襲的に検出する。
OCT-A:間接的外傷性視神経症で時間依存的な網膜層菲薄化と微細血管減衰が報告されており、爆風誘発外傷性視神経症でも同様のパターンが示唆される。
眼窩CT:視神経・視神経管の骨折・骨片・視神経鞘血腫を除外する。
MRI:外科的に治療可能な病変(管骨折、鞘血腫)の除外に用いる。
視覚的QOL評価(VFQ-25 + NOS):Lemkeらが爆風曝露退役軍人の視覚関連QOLを評価するために使用。健常者・糖尿病・ドライアイ・緑内障・黄斑変性症患者より有意に低いQOLが報告されている。
以下の疾患との鑑別が重要である。
爆風誘発外傷性視神経症に特化したガイドラインは存在しない。外傷性視神経症の医学的治療に関するコンセンサスも不十分であり、現時点では支持療法が治療の中心となる。
外傷性視神経症症例で使用されるが、爆風誘発外傷性視神経症における治療的役割は議論がある。デキサメタゾンとメチルプレドニゾロン静脈内投与の比較では、視覚的アウトカムに有意差は認められていない。
予後は多様であり、初期損傷の重症度・治療介入の有効性・個人の反応に依存する。
本疾患特化のガイドラインは存在しない。外傷性視神経症の治療に関するコンセンサスも不十分であり、現時点では支持療法(眼圧管理・炎症管理・視覚リハビリテーション)が中心となる。副腎皮質ステロイドは使用されることがあるが、その有効性は議論中である。
爆風過圧が発生させる衝撃波は眼構造を介して伝播し、視神経線維に剪断力・ストレスを生じる。これが剪断性軸索損傷を引き起こし、神経炎症・機能障害へと進行する。肉眼的な損傷は認めないが、組織レベルでは軸索損傷・グリオーシス・炎症が生じる。
感受性の高い細胞として神経節細胞層・内顆粒層の細胞、および視神経が挙げられる(Wangら)。
RexとBernardo-Colonのマウスモデル(眼に直接加圧空気を当てた実験)では以下が明らかになった。
緑内障
軸索変性の方向:遠位→近位への変性。
組織変化:アストロサイトリモデリングが生じる。
炎症:多様なサイトカインが上昇する。
直接的外傷性視神経症
損傷部位:明確な損傷部位が存在する。
進行:急速かつ進行性の軸索変性・細胞死。
機序:直接的な機械的圧迫・剪断が主体。
爆風誘発外傷性視神経症
損傷部位:肉眼的損傷なし。衝撃波による広範な影響。
炎症:IL-1αおよびIL-1βに限定した上昇パターン。
特徴:緑内障・直接的外傷性視神経症とは異なる独特の神経病理を示す。
研究段階の治療候補を以下に示す。
| 治療法 | 研究状況 | 備考 |
|---|---|---|
| エリスロポエチン(EPO) | パイロット研究 | 外傷性視神経症患者でのアウトカム改善が報告(Kashkouliら) |
| 硝子体内注射(抗VEGF含む) | 動物モデル | 急性期に害の可能性あり(下記参照) |
| カスパーゼ-2 siRNA | 動物モデル | 空気爆風誘発眼外傷モデルで調査中(Thomasら) |
Kashkouliらのパイロット研究では、外傷性視神経症患者にEPOを投与し、視覚的アウトカムの改善が報告されている。爆風誘発外傷性視神経症への直接的な適用については今後の研究が必要である。
Naguibらのマウスモデルでは、損傷1日後の硝子体内注射が変性軸索を増加させることが示された。急性期の投与が害を及ぼす可能性があり、投与タイミングには注意が必要である。
神経保護・神経再生因子の強化、神経変性・炎症因子の抑制を標的とした研究が現在進行中である。