OCT-A
非侵襲・造影剤不要:繰り返し撮影に適する。
層別描出:SCP/ICP/DCP/CC を個別評価可能。
高解像度:毛細血管レベルの血管構造を静止画で捉える。
限界:漏出・灌流遅延は評価できない。

OCT-A(Optical Coherence Tomography Angiography;光干渉断層血管撮影)は、近赤外光の干渉信号を用いて網膜・脈絡膜の血流を非侵襲的に可視化する画像診断法である。造影剤を使用しないため、フルオレセイン蛍光造影(FA)やインドシアニングリーン蛍光造影(ICGA)と比べてリスクが低く、繰り返し撮影が容易である。
OCT-AはFAの代替ではなく補完的なモダリティである。FAが血管の透過性・漏出・灌流遅延を経時的に描出するのに対し、OCT-Aは層別の血管構造を高解像度で静止的に捉える点に特徴がある7)。
網膜中心動脈(CRA)は終動脈であり、吻合側副血行路を持たない1)。この解剖学的特性が、CRA閉塞時の急速かつ不可逆的な網膜虚血をもたらす。OCT-Aはこうした血管閉塞の範囲や虚血域の評価において重要な役割を果たす。
OCT-Aは血管内の赤血球の動き(血流)を干渉信号の変化として検出する。静止した組織は信号が安定しているのに対し、赤血球が通過する血管内では信号が変動するため、その差分を画像化することで造影剤なしに血管を描出できる。
網膜は異なる深度に位置する複数の毛細血管叢によって栄養される。各血管叢は独立した機能単位をなし、疾患によって障害される層が異なる。
以下に主要な血管叢をまとめる。
| 血管叢 | 略称 | 位置 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| 浅層毛細血管叢 | SCP | 神経線維層〜神経節細胞層 | 内網膜への主要栄養 |
| 中間層毛細血管叢 | ICP | 内核層上部 | 内核層の栄養 |
| 深層毛細血管叢 | DCP | 内核層下部〜外網状層 | 酸素供給の補完(10〜15%)3) |
| 放射状視乳頭周囲毛細血管叢 | RPCP | 視乳頭周囲神経線維層 | 視神経線維の栄養 |
| 脈絡膜毛細血管板 | CC | 脈絡膜最内層 | 外網膜・視細胞層の栄養 |
深層毛細血管叢(DCP)が網膜への酸素供給に占める割合は10〜15%であり3)、糖尿病網膜症(DR)の早期には毛細血管瘤や無灌流域がDCPに優先的に出現することが知られている。
無血管中心窩(FAZ;Foveal Avascular Zone)は中心窩視細胞直下の無血管領域であり、正常径は400〜500 μmとされる。FAZ面積・形状はOCT-Aで定量評価が可能であり、虚血性変化の早期指標として用いられる。
OCT-A
非侵襲・造影剤不要:繰り返し撮影に適する。
層別描出:SCP/ICP/DCP/CC を個別評価可能。
高解像度:毛細血管レベルの血管構造を静止画で捉える。
限界:漏出・灌流遅延は評価できない。
FA(蛍光造影)
造影剤使用:アナフィラキシーリスクがある。
経時的評価:血管透過性・漏出・灌流遅延を捉える。
広角撮影:周辺部無灌流域の評価に優れる。
限界:層別の血管構造は描出できない。
網膜静脈閉塞(RVO)では、OCT-Aにより無灌流域・FAZ拡大・毛細血管の消失を定量評価できる7)。無灌流域の範囲は新生血管形成・黄斑浮腫のリスクと相関する。
糖尿病網膜症初期のOCT-A所見として、毛細血管瘤・FAZ不整拡大・DCPの無灌流域が挙げられる3)。DCP虚血は視力予後に関わるため、層別評価が臨床的意義を持つ。
加齢黄斑変性(AMD)や類縁疾患で生じる黄斑新生血管の検出において、OCT-AはFA比87%・ICGA比97%という高い感度を有する12)。パキコロイド関連疾患では脈絡膜毛細血管板(CC)の消失・希薄化がOCT-Aで観察される12)。
ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)では、OCT-Aにより分枝血管網(BNN)の形態分類が可能である10)。BNNの形態(扇形・木の枝状・混合型)はポリープ病変との関係や予後に関連する。
内網膜系(CRA支配)
SCP/ICP/DCP/RPCP:網膜中心動脈から分岐。
終動脈:吻合なし。閉塞で即時虚血1)。
代表疾患:糖尿病網膜症・RVO・CRAO・BRAVO。
外網膜系(脈絡膜支配)
FAZ拡大は中心窩周囲の毛細血管が消失していることを意味する。網膜虚血(DRやRVOなど)だけでなく、アルツハイマー病などの神経変性でも報告されており、視力低下や中心暗点の原因となりうる。詳細は「6. 血管解剖の詳細」の項を参照。
OCT-Aは血流を間接的に検出するため、真の血管構造とは異なる偽信号(アーチファクト)が生じやすい。読影の際は以下の点に注意する。
以下に主要なアーチファクトをまとめる。
| アーチファクト | 原因 | 影響 |
|---|---|---|
| 低信号アーチファクト | 白内障・硝子体混濁 | 血管叢全体の信号低下 |
| モーションアーチファクト | 撮影中の眼球運動 | 血管の断裂・白線状ノイズ |
| セグメンテーションエラー | 浮腫・萎縮による層境界の誤認識 | 血管叢の誤分類 |
| プロジェクションアーチファクト | 表層血管の血流信号が深層に投影 | 深層血管の偽信号 |
OCT-Aは分割振幅感度(SSADA)や分割スペクトル振幅差(OMAG)などのアルゴリズムを用い、同一部位の連続スキャン間の信号変化を検出して血流マップを生成する。血流のある部位は高輝度(白色)、静止組織は低輝度(黒色)として表示される。
現在の主要な商用機器は6×6 mm または 3×3 mm の撮影範囲を持つものが多く、3×3 mm では10 μm 以下の横分解能が得られる。広角OCT-A(12×12 mm以上)の機器も普及しつつある。
網膜中心動脈(CRA)は眼動脈の分枝であり、篩板(lamina cribrosa)前後で内外の層に分岐する6)。CRAは終動脈であり、閉塞時に機能的な側副血行路が存在しないため、内網膜虚血は急速かつ不可逆的に進行する1)。
網膜内の動脈は視乳頭から4本の主要分枝として放射状に走行し、さらに上述の各血管叢を形成する。静脈は動脈に並走し、最終的にCRVとして視乳頭中央から流出する。
毛様網膜動脈(cilioretinal artery)は後毛様動脈から分岐し、CRAとは独立した経路で網膜黄斑部に血流を供給する変異血管である。出現率は約22.75%と報告されている2)。
Bhatt ら(2023)は CRAO(網膜中心動脈閉塞)症例において毛様網膜動脈の存在が中心視力の温存に寄与することを報告した2)。毛様網膜動脈の出現率は22.75%であり、CRAが閉塞しても中心窩の血流が保たれる場合、視力予後は相対的に良好となる。
CRA は篩板前で鼻側・耳側に分岐し、さらに上下に分かれて4象限に分布する6)。この分岐パターンは半側網膜動脈閉塞(hemi-CRAO)の発症様式に関係する。
DCP は内核層下部から外網状層上部に位置し、網膜全体の酸素需要のうち10〜15%を補完する3)。DCPの虚血・無灌流は糖尿病網膜症の早期変化として出現し、視力予後との関連が示されている。
Pillai ら(2023)は CRA の血流抵抗(RI)と 糖尿病網膜症との関係を検討し、DCPが網膜への酸素供給の10〜15%を担うことを報告した3)。糖尿病網膜症進行によってDCP 無灌流域が拡大し、黄斑虚血が視力低下をもたらすとしている。
FAZ拡大はアルツハイマー病(AD)等の神経変性疾患においても観察されている。
Cheung ら(2019)は、アルツハイマー病患者において対照群と比較してFAZ面積が有意に拡大し、認知機能スコアと相関することを報告した8)。OCT-Aによる網膜血管の定量評価が、ADの非侵襲的バイオマーカーとなる可能性が示唆されている。
ICPはSCPとDCPの境界層として位置づけが曖昧なままであったが、近年のセグメンテーション技術の向上により独立した血管叢として認識されつつある。ICP虚血が黄斑浮腫の発症機序に独自の役割を果たす可能性が検討されている。
従来の6×6 mm の撮影範囲では周辺網膜の無灌流域評価が困難であった。12×12 mm 以上の広角OCT-Aにより、糖尿病網膜症・RVO における周辺部無灌流域の定量評価が可能となりつつある。これによりFAと同等の無灌流域評価をより低侵襲に実施できることが期待されている7)。
連続フレームを動画として解析するビデオOCT-Aにより、単なる血管構造の静止画ではなく血流動態(拍動性・灌流圧)の評価が試みられている。緑内障の早期診断への応用が研究されている。
Cheung ら(2019)は、OCT-A による FAZ 拡大・血管密度低下が認知症の早期バイオマーカーとなりうることを提唱した8)。網膜は脳の延長として同様の神経血管ユニットを持つことから、網膜の血管変化が全身の神経変性プロセスを反映する可能性がある。
パキコロイド疾患群では、OCT-Aによる脈絡膜毛細血管板の血流評価が病態解明・治療選択に有用とされており、更なる研究が進んでいる12)。
現時点ではFAの代替とはなれない。FAは血管の漏出・灌流遅延・広角の無灌流域評価に優れ、OCT-Aでは捉えられない動態情報を提供する。両者は相補的なモダリティとして使い分けるのが現在の標準的考え方である7)。
黄斑新生血管(脈絡膜新生血管)の検出・評価では感度97%を示し12)、加齢黄斑変性・ポリープ状脈絡膜血管症の病勢把握や抗VEGF治療の反応評価に有用である。また、糖尿病網膜症の早期毛細血管変化やRVOの無灌流域評価、緑内障の神経線維層血流評価にも活用される7)。
パキコロイド(pachychoroid)は脈絡膜の拡張・肥厚と脈絡膜毛細血管板の菲薄化を特徴とする疾患群の総称である。中心性漿液性脈絡網膜症・PCVなどが含まれる。OCT-Aはこのグループの脈絡膜血管異常の評価に有用とされている12)。