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網膜・硝子体

視神経毛様体シャント血管

1. 視神経毛様体シャント血管とは

Section titled “1. 視神経毛様体シャント血管とは”

視神経毛様体シャント血管(optociliary shunt vessels)は、視神経乳頭上に形成される側副血管である。網膜静脈系と脈絡膜静脈系(乳頭周囲脈絡膜静脈)を連結し、網膜からの血液を渦静脈・眼静脈系へ迂回させる。乳頭毛様短絡血管とも呼ばれる。

先天性のシャント血管は極めて稀であり、大部分は後天性である。慢性的な網膜静脈鬱滞が持続した結果、既存の吻合毛細血管チャネルが拡張・発達して生じる。

Q 先天性のシャント血管もあるのか?
A

先天性のシャント血管は存在するが極めて稀である。大部分は後天性であり、慢性的な網膜静脈鬱滞を引き起こす基礎疾患の結果として形成される。

シャント血管自体は症状を引き起こさない。患者が訴える症状はすべて基礎疾患に由来する。

  • 視力低下:CRVOや視神経鞘髄膜腫などの基礎疾患による。
  • 視野欠損:視神経圧迫や網膜虚血に伴う。
  • 無症状:偶発的な眼底検査でシャント血管が発見されることもある。

視神経乳頭上の蛇行した血管ループとして観察される。視認される本数は1〜数本であり、乳頭縁から発して蛇行する。

新生血管(NVD)との鑑別が臨床上最も重要な課題である。以下の特徴で乳頭新生血管と区別する。

所見シャント血管乳頭新生血管(新生血管)
走行ループ状・蛇行細かい血管網
管径比較的太い細く不規則
FA漏出なしあり(著明)

視神経鞘髄膜腫では、シャント血管・視力低下・視神経萎縮の三徴(Hoyt-Spencer徴候)を呈する。視神経鞘髄膜腫の約60%にシャント血管が認められる。

Q 乳頭新生血管とシャント血管をどう見分けるか?
A

最も信頼性の高い鑑別法は蛍光眼底造影(FA)である。シャント血管は蛍光色素の漏出を示さないのに対し、乳頭新生血管は著明な漏出を呈する。また、シャント血管は乳頭新生血管より管径が太く、ループ状の走行を示す。

シャント血管の形成には、慢性的な網膜静脈血流障害が必要条件となる。原因疾患は以下の通りである。

視神経乳頭での静脈鬱滞を慢性的に引き起こす疾患が原因となる。

頻度原因疾患
多いCRVO、視神経鞘髄膜腫
慢性緑内障視神経乳頭ドルーゼン、視神経膠腫、偽脳腫瘍

**CRVO(中心網膜静脈閉塞症)**は最も多い原因である。網膜静脈閉塞症(RVO)は糖尿病網膜症に次ぐ2番目に多い網膜血管疾患であり、高血圧・糖尿病・緑内障などが主要なリスク因子となる1)。CRVO患者の25%に虹彩新生血管が生じる1)

視神経鞘髄膜腫は全髄膜腫の1〜2%、全眼窩腫瘍の約10%を占める。球後部に発生した髄膜腫が中心網膜静脈を圧迫し、慢性的な静脈鬱滞を生じさせる。

シャント血管の診断は眼底検査を基本とし、複数の画像検査で確認・評価する。

眼底検査

細隙灯顕微鏡検査:視神経乳頭上の蛇行したループ状血管を確認する。

RAPD(相対的瞳孔求心路障害):虚血の程度と相関し、CRVOの虚血型判定に有用である1)

FA/ICG造影

蛍光眼底造影(FA):シャント血管での色素漏出がないことを確認する。乳頭新生血管との鑑別に必須の検査である。

ICGアンギオグラフィー:脈絡膜循環から渦静脈・眼静脈へ流出する血流パターンを描出できる。

OCTA/画像検査

OCTA(光干渉断層血管造影):非侵襲的にシャント血管の血流を確認できる。

CT/MRI:視神経鞘髄膜腫ではtram-track sign(石灰化を伴う視神経鞘の肥厚)が特徴的所見として認められる。

シャント血管自体は治療を要しない。保護的な側副血行路として機能しており、これを除去・遮断することは禁忌である。治療は基礎疾患に対して行う。

髄膜腫の治療

定位放射線治療:視神経鞘髄膜腫の標準的な治療法である。治療後にシャント血管の退縮が報告されている。

経過観察:進行が緩徐な症例では定期観察を選択する場合もある。

頭蓋内圧亢進

視神経鞘窓形成術:偽脳腫瘍(特発性頭蓋内圧亢進症)に伴うシャント血管では、視神経鞘窓形成術後に退縮が報告されている。

内科的治療アセタゾラミドなど頭蓋内圧降下薬による管理も行われる。

Q シャント血管は治療する必要があるのか?
A

シャント血管自体は治療不要である。網膜から脈絡膜へ静脈血を迂回させる保護的な役割を果たしており、これを遮断することは有害である。管理の焦点は常に基礎疾患の治療にある。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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生理的状態では、中心網膜静脈が網膜からの静脈血を回収し、上眼静脈を経由して海綿静脈洞へと流出する。視神経乳頭への血液供給は短後毛様体動脈が担い、篩状板前領域を灌流する2)

中心網膜静脈に慢性的な閉塞・圧迫が加わると、篩状板前領域に存在する乳頭周囲脈絡膜静脈との間に側副路が発達する。

  • 既存吻合の拡張:健常眼でも篩状板前領域に微細な吻合チャネルが存在する。慢性静脈鬱滞により血流圧差が生じ、これらのチャネルが拡張・開通する。
  • 血流の迂回路形成:拡張した側副路を通じて、網膜静脈血が脈絡膜静脈へ流入し、渦静脈から眼静脈へと排出される。ICGアンギオグラフィーでは脈絡膜循環から渦静脈への流出が描出される。

球後部に発生した髄膜腫が中心網膜静脈を外部から圧迫することで、慢性的な静脈鬱滞が生じる。視神経萎縮が進行しても一定の視力が保たれる場合があり、これはシャント血管による静脈ドレナージ改善が寄与していると考えられる。CRVO後にも側副血管による静脈ドレナージ改善が視力回復に関与する1)

Q シャント血管が消えることはあるか?
A

基礎疾患の治療によりシャント血管が退縮する症例が報告されている。視神経鞘髄膜腫への定位放射線治療後や、偽脳腫瘍への視神経鞘窓形成術後に退縮が観察されている。ただし、すべての症例で退縮が期待できるわけではない。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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CRVOに対する抗VEGF療法の有効性は複数の大規模RCTで示されている。

COPERNICUSおよびGALILEO試験では、アフリベルセプト硝子体内注射を受けた患者の56%が24週後に15文字以上の視力改善を達成した(プラセボ群12%)1)

CRUISE試験では、ラニビズマブ0.5mg群でベースラインから6ヶ月後に平均14.9文字の視力改善が得られ、偽注射群(0.8文字改善)を有意に上回った1)。CRVOに対する抗VEGF療法の有効性を支持する重要なエビデンスである。

BVOSの長期データでは、CRVO患者の37%が2行以上の視力改善を自然経過で示し、34%が最終視力20/40以上、23%が20/200以下にとどまることが示されている1)

シャント血管の存在がCRVO予後を予測するかについては、現在も議論が続いている。シャント血管を形成できた症例では静脈ドレナージが一定程度保たれるため、比較的予後が良好である可能性が示唆されているが、確立したエビデンスは未だない。


  1. AAO Retina/Vitreous Panel. Retinal Vein Occlusions Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.
  2. Salvetat ML, Pellegrini F, Spadea L, et al. Non-Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy: A Comprehensive Review. Vision. 2023;7(4):72.

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