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網膜・硝子体

眼球穿通外傷・貫通外傷

1. 眼球穿通外傷・貫通外傷とは

Section titled “1. 眼球穿通外傷・貫通外傷とは”

眼球穿通外傷(penetrating injury)および貫通外傷(perforating injury)は、角膜または強膜の全層創を伴う眼球開放性外傷(open globe injury)に分類される。眼球壁の全層欠損が裂傷または破裂により生じたものと定義される1)

穿通外傷

定義:鋭利な物体が眼球内に刺入するが、眼球外には抜けていない状態。

入口創のみが存在する。

貫通外傷

定義:物体が眼球を貫通し、入口創と出口創の両方が存在する状態。

二重穿孔とも呼ばれる。

眼球破裂

定義:鈍的外力による眼球内圧の急激な上昇で、強膜または角膜が離開した状態。

鈍的外傷が原因である。

損傷部位は予後に影響し、以下の3ゾーンに分類される1)

ゾーン範囲特徴
I角膜〜角膜輪部前眼部に限局
II輪部後方5mmまで鋸状縁より前方
III輪部後方5mm以上網膜を含む後眼部

眼外傷の発生率は10万人あたり約3.5〜4.5と推定される1)。患者の大多数は男性であり、女性に比べ相対リスクは約5.5倍である。受傷時の平均年齢は約30歳である。

眼球破裂の場合、破裂創は眼球後方の外眼筋付着部に多い。ただし眼内レンズ挿入眼では白内障手術時の創部を含む前方の破裂が多い。

  • 眼痛:受傷直後から生じる。穿孔創の大きさや部位により程度が異なる。
  • 視力低下:角膜損傷、前房出血水晶体損傷、硝子体出血などにより生じる。
  • 複視:外眼筋や眼窩の損傷を合併した場合に出現する。
  • 異物感・霧視:軽微な損傷では主訴がこれらにとどまることもある。
  • 充血・羞明・流涙:眼球開放性外傷に伴う一般的な症状である。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”
  • 結膜下出血:広範な場合は眼球破裂を疑う。結膜下出血の位置の後極側に破裂創があることが多い。
  • 前房・前房消失房水漏出を示唆する重要な所見である。
  • 前房出血(前房蓄膿隅角離断や毛様体解離を伴うことがある。
  • 梨状瞳孔虹彩が創部に嵌頓した場合に生じる。
  • ブドウ膜脱出:裂創が前方にある場合、創よりブドウ膜が脱出・嵌頓する。
  • 低眼圧:穿孔性眼球外傷を示唆する。毛様体解離との鑑別も必要である。
  • 外傷性白内障:前囊下皮質混濁やVossius輪を認める。水晶体動揺・脱臼を伴うこともある。
  • 硝子体出血:後眼部への損傷波及を示す。
  • 外傷性網膜裂孔:上鼻側や下耳側に多い。受傷直後になくても後日に鋸状縁断裂として出現することがある。

フルオレセイン蛍光染色によるSeidel試験は全層創の評価に有用である。コバルトブルー光下で房水漏出により染料が洗い流される(Seidel陽性)ことで全層創を確認できる。

Q 前眼部所見が正常に見えても眼球開放性外傷を疑うべきか?
A

鈍的外傷の既往がある場合、一見正常でも極端な低眼圧や高度の結膜下出血、前房出血があれば開放性外傷を疑う必要がある。問診で何かが眼に当たった既往があれば、前眼部所見に異常がなくてもCTを撮影すべきである。

家庭や職場が最も頻度の高い受傷場所である。主な原因を以下に列挙する。

  • 鋭利な物体:ナイフ、ハサミ、ドライバー、釘、棒など。小児では鉛筆やペンなどの筆記用具が重要な原因である。
  • 高速飛来物:金属片(サンダー・溶接時の破片)、ハンマー打撃時の破砕片、コンクリート片、ガラス片など。
  • スポーツ関連:野球・ソフトボール(自打球、イレギュラーバウンド)、ゴルフボール(眼球と同じ大きさで破裂を起こしやすい)、シャトルコック、BB弾など。
  • 暴行・喧嘩:拳、鉄パイプ、バットなどによる。

眼内異物(IOFB)は穿通外傷の最大40%に合併する。金属片が最も多く、木片やガラス片も原因となる。

  • 男性:眼外傷の相対リスクは女性の約5.5倍である。
  • 保護具の不使用:リスクの高い作業やスポーツでの眼保護具の不着用。
  • 薬物・アルコール使用:外傷リスクを増大させる。
  • 小児の筆記用具:鉛筆やペンは無害と認識されがちだが、深刻な眼外傷を引き起こしうる。

開放性眼球外傷における眼内炎の頻度は2〜7%である。特に植物や土壌からの感染は高率に失明に至る。白内障術後眼内炎と異なり、Bacillus属菌などの強毒菌による眼内炎がある。眼窩内異物では嫌気性菌(破傷風菌)の感染も念頭に置く。

Q どのようなスポーツで眼外傷が起きやすいか?
A

野球・ソフトボール(自打球、イレギュラーバウンド)、ゴルフ(高速のボールが眼窩内に収まりやすく眼球破裂を生じやすい)、バドミントン(シャトルコック)、格闘技・球技での身体接触などが代表的である。詳細は「原因とリスク要因」の項を参照。

眼球開放性外傷の診断は、詳細な問診と慎重な診察、画像検査の組み合わせにより行う。

受傷時刻・機序・原因物体を詳細に聴取する。保護メガネや処方メガネの着用の有無、破傷風の免疫状態、最終食事時間(全身麻酔の可能性のため)も確認する。意識レベル低下のある患者では家族・関係者からの情報収集が重要である。全身麻酔下での緊急手術が想定される場合は、末梢血管を確保し絶飲食を指示する。

  • 視力検査:受傷初診時の視力は予後判定と書類作成のために必ず測定する。
  • 瞳孔検査相対的瞳孔求心路障害(RAPD)の有無を確認する。外傷性視神経症の検出に重要である。
  • 細隙灯顕微鏡検査:角結膜裂傷、前房出血、水晶体損傷の評価。フルオレセイン染色によるSeidel試験で房水漏出を確認する。
  • 眼底検査:外傷性網膜裂孔、網膜下出血(脈絡膜破裂の示唆)、硝子体出血の有無を確認する。透見不良時は画像検査で代替する。
検査法主な適応注意点
眼窩CT異物検出・眼球変形1mm薄切スライス推奨
超音波Bモード透見不良時の後眼部評価圧迫に注意
X線金属異物の検出2mm以上で確認可能
  • CT検査:すべての眼外傷症例で適応となる。眼内異物の位置、眼球変形、眼窩骨折、頭蓋内病変を同時に評価できる。植物性異物は水分含有量が少ないと描出困難な時期がある。
  • 超音波Bモード検査:前房出血・硝子体出血・外傷性白内障で眼底透見不能時に有用である。ただし眼球破裂が想定される場合はプローブを強く押さえないように検査するか、CT検査を選択する。
  • X線検査:眼内・眼窩内の金属の検出に有用である。金属片では長さ2mm、厚さ0.4mm以上で確認可能である。
  • 前眼部OCT:角膜裂傷や水晶体脱臼の検出に有用である。
  • MRI検査:金属異物が疑われる場合は禁忌である。非金属の異物が明確な場合にのみ使用可能であり、木片や深部の貯留液の検出に有用である。
Q なぜCT検査が全例で必要なのか?
A

眼内異物は穿通外傷の最大40%に合併する。前眼部所見が正常に見えても眼内異物が存在する場合がある。CT検査によって異物の有無・位置、眼球変形、眼窩骨折を同時に評価でき、見逃しは手術時期の逸失や失明につながりうる。

眼球穿通外傷・貫通外傷の治療は、感染と眼球内容脱出を防止するための**創閉鎖(一次修復)**が最優先である。

  • 眼球内容物が脱出している場合はすべて眼球内に完納する。
  • 眼瞼創部や結膜囊内が汚染されている場合は生理食塩水で十分に洗浄する。
  • ベッドサイドでの異物除去は行わない。硬性アイシールドを装着し、手術室での制御下の除去を計画する。

受傷後24時間以内の一次修復が推奨される。24時間以内の修復は、遅延修復と比較して眼内炎リスクを0.30倍に低減させることが報告されている1)

麻酔は基本的に全身麻酔を選択する。前房内異物などで眼球後方が正常であると確証がある場合に限り、局所麻酔を選択してもよい。

10-0ナイロンを用いる。水密縫合を目標とするが、糸を締めすぎると角膜乱視や不正乱視を生じるため、バイトを長めにとる。すべての糸の締め付けを同程度にし、房水漏出を防ぐ。

6-0〜8-0ナイロンを使用する。まず4直筋を確保して創を探す。創が深く直筋が邪魔な場合は一時的に切腱する。破裂創の一部を見つけたら、縫いやすいところから順に縫合し、閉鎖性を確保する。

角膜輪部の創は9-0ナイロンで先に縫合し、その後角膜創を10-0ナイロン、強膜創を9-0ナイロンで端々縫合する。

グラム陽性菌・グラム陰性菌をカバーする広域抗菌薬の全身投与を行う。バンコマイシンと第3世代セファロスポリン(セフタジジムなど)の併用が眼内炎発症率の低下と関連している。外科的修復時の予防的硝子体内抗菌薬投与がリスクをさらに低下させる。

眼内炎が疑われた場合は早期の観血的治療が推奨される。前房内に炎症が限局している場合は前房洗浄を行い、前房および硝子体内にバンコマイシン1mg/0.1mLとセフタジジム2.25mg/0.1mLの注入を行う。硝子体内に混濁が広がっている場合は緊急で硝子体切除術を施行する。

眼内組織の損傷程度により、水晶体切除・硝子体切除を二次手術として行う。ただし以下の場合は一次修復に連続して一期的に施行することも考慮する。

  • 水晶体の膨化がすでに進行している場合
  • 創口が直筋付着部を越えて後方に及ぶ場合
  • 眼内異物が残留している場合
  • 硝子体出血が高度で眼底透見不能の場合

可能な限り眼球形態を整復したのち、3ポート硝子体手術による混濁硝子体の切除と嵌頓硝子体の解除を行い、ガスタンポナーデまたはシリコーンオイルタンポナーデを施行して透見性を確保する。

眼内異物の存在を確認したら可及的速やかに摘出する。現在は主に経毛様体扁平部硝子体切除術により、マイクロ鉗子やダイヤモンド鉗子を用いて摘出する。

Q 受傷から手術までの時間はどの程度まで許容されるか?
A

受傷後24時間以内の一次修復が強く推奨されている。系統的レビューでは、24時間以内の修復が眼内炎リスクを有意に低下させることが示されている1)。ただし、24時間以内であれば修復のタイミングと最終視力との間に有意差は認められていない。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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穿通外傷は鋭利な物体が速い速度で眼球壁を貫く場合に生じる。角膜輪部や直筋付着部後方の赤道部など、強膜が最も薄い部位で発生しやすい。以前の眼内手術部位も医原性の組織脆弱性により損傷を受けやすい。

眼球破裂では、鈍的外力による急激な眼球内圧上昇が原因である。閉鎖空間内での圧上昇により強膜または角膜が破裂し、眼球虚脱に至る。破裂創は外眼筋付着部付近に多い。

開放性外傷に伴う網膜剥離の発生機序

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開放性眼外傷における網膜剥離には2つの機序がある。

  • 直接的裂孔形成:外力により直接網膜に裂隙を生じ、同部から網膜剥離が進展する。
  • 二次的牽引:強角膜裂傷部に嵌頓した硝子体ゲルが対側網膜を牽引し、網膜裂孔および網膜剥離を惹起する。

開放性外傷には鈍的外傷の要素も複合されることが多い。後者では硝子体基底部に比較的大きな網膜裂孔を生じ、鋸状縁断裂として出現する場合がある。

外傷の初期治療後に以下の二次的変化が生じうる。

  • 増殖性硝子体網膜症(PVR:外傷後の機能的・解剖的不良転帰の主要原因の一つである。
  • 外傷性白内障:水晶体の穿孔損傷や鈍的衝撃により生じる。
  • 続発緑内障:前房出血、隅角離断、虹彩前癒着などに起因する。
  • 眼内炎:開放性外傷の2〜7%に発生する。
  • 交感性眼炎:僚眼の前房内炎症や充血を後日に認めた場合に疑う。

7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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一次修復のタイミングに関する系統的レビュー

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Blanchら(2025)は、眼球開放性外傷後の一次修復のタイミングと視覚転帰・眼内炎発症率に関する系統的レビュー・メタアナリシスを実施した1)。受傷後24時間以内の修復は、24時間以降の修復と比較して眼内炎リスクを0.30倍に低減させた。一方、最終視力については修復時期による有意差は認められなかった。著者らは24時間以内の修復を強く推奨しているが、すべての対象研究が後方視的・非ランダム化試験であり、エビデンスの確実性は低いと評価している。

なお、24時間未満でのさらに早い時間帯(例:夜間緊急手術 vs 翌朝手術)での比較は十分なデータがなく、今後の前向き研究が必要とされる。

眼外傷スコア(Ocular Trauma Score)は、受傷直後の視力、眼球破裂の有無、眼内炎、穿通外傷、網膜剥離、RAPDの有無に基づいて視力転帰の確率を推定する予後予測ツールである。戦闘関連眼外傷93例の研究では、視覚的生存(光覚あり以上)の予測感度94.8%、光覚なしの予測特異度100%と報告されている。


  1. Blanch RJ, et al. Early versus Delayed Timing of Primary Repair after Open-Globe Injury: A Systematic Review and Meta-Analysis. Ophthalmology. 2025;132:431-441.

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