活動期
灰白色の網膜下病変:色素沈着を伴う境界を持つ小型の病変として出現する。
網膜下出血:脈絡膜新生血管周囲にみられることが多い。
OCT所見:RPE上の境界不明瞭な高反射塊として検出される。網膜浮腫や漿液性網膜剥離はごくわずかである。

近視性脈絡膜新生血管(myopic choroidal neovascularization; 近視性CNV)は、病的近視眼の後極部に発生する脈絡膜由来の新生血管である。加齢黄斑変性に次いで脈絡膜新生血管の2番目に多い原因であり、50歳以下の脈絡膜新生血管では最大の原因疾患である。
強度近視は等価球面度数−6.0 D以下または眼軸長26.5 mm以上と定義される。病的近視は等価球面度数−8.0 D以下または眼軸長32.5 mm以上を指し、びまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有するか、後部ぶどう腫を有する眼と定義される(META-PM study、2015年)。
近視性脈絡膜新生血管は加齢黄斑変性とは異なり、若年期(10歳代)から発症する可能性がある。50歳以下の脈絡膜新生血管の最大の原因疾患であり、働き盛りの年代の両眼の中心視力を障害する重要な疾患である。
近視性脈絡膜新生血管が中心窩に及ぶ場合、以下の症状を呈する。
黄斑領域外に位置する場合は無症状のこともある。
近視性脈絡膜新生血管は主にtype 2 脈絡膜新生血管(RPE上)であり、比較的小型で滲出性変化も軽度であることが多い。病期は活動期・瘢痕期・萎縮期の3期に分類される。
活動期
灰白色の網膜下病変:色素沈着を伴う境界を持つ小型の病変として出現する。
網膜下出血:脈絡膜新生血管周囲にみられることが多い。
OCT所見:RPE上の境界不明瞭な高反射塊として検出される。網膜浮腫や漿液性網膜剥離はごくわずかである。
瘢痕期・萎縮期
Fuchs斑:脈絡膜新生血管退縮後にRPEと基底膜の過形成からなる色素沈着を伴った瘢痕病巣を形成する。
近視性脈絡膜新生血管関連黄斑部萎縮:長期経過で比較的急速に拡大し、高度の視力障害に至る。Bruch膜の断裂拡大と色素上皮・脈絡毛細血管板・網膜外層の萎縮として観察される。
OCT angiographyでは、活動期は円形状の血管ネットワークを示し、瘢痕期以降は脈絡膜新生血管が収縮して楔状になるが、内部血流は高頻度で保たれる(活動期100%、瘢痕期約80%、萎縮期約90%)。
近視性脈絡膜新生血管の発生には、Bruch膜の機械的断裂と脈絡膜循環障害の2つの機序が関与すると考えられている。
眼軸の進行性延長により脈絡網膜の伸展・菲薄化が生じる。その結果として以下の過程が起こる。
近視性脈絡膜新生血管の診断には、臨床所見と画像検査の組み合わせが重要である。単純型黄斑部出血(lacquer cracksに伴う出血)との鑑別が不可欠である。
近視性脈絡膜新生血管はほとんどがclassic 脈絡膜新生血管(type 2)の所見を呈する。造影早期に境界鮮明な過蛍光を示し、後期にかけて蛍光漏出が進行する。ただし若年近視患者での漏出は加齢黄斑変性に比べ軽度である。単純型黄斑部出血では蛍光漏出を伴わないため鑑別が可能である。
OCTのみで単純型黄斑部出血と近視性脈絡膜新生血管を鑑別することは困難な場合があり、FAが必須となる。
OCTAは非侵襲的に脈絡膜新生血管の血管構造を直接描出できる検査である。
Ricoら(2024)は、OCT-A Angio-Bモードにより構造OCTでは異常が明らかでない早期の近視性脈絡膜新生血管を検出し、ベバシズマブ2回投与で視力が20/40から20/20に改善した症例を報告した3)。OCTAは早期診断と治療効果のモニタリングの両面で有用と考えられる。
| 鑑別疾患 | 鑑別のポイント |
|---|---|
| 単純型黄斑部出血 | FAで蛍光漏出なし |
| 加齢黄斑変性 | ドルーゼン・RPE剥離を伴う |
| 点状脈絡膜内層症 | 中等度近視の若年女性 |
単純型黄斑部出血はlacquer cracksの形成時にBruch膜の断裂に伴い脈絡毛細血管が障害されて生じる出血で、2〜3か月で自然に吸収される。治療の必要がない。近視性脈絡膜新生血管は脈絡膜新生血管に伴う出血であり、FAで過蛍光(蛍光漏出)を示す点で鑑別できる。
現在、近視性脈絡膜新生血管に対する治療の第一選択は抗VEGF薬の硝子体内注射である。日本では2013年にラニビズマブ(ルセンティス®)、2014年にアフリベルセプト(アイリーア®)が保険適用となった。
Glachsら(2024)のネットワークメタ解析(34研究、2,098眼)では、抗VEGF薬は6か月以内に無治療群に比べ平均14.1文字(95% CI 10.8〜17.4)、PDT群に比べ12.1文字(95% CI 8.3〜15.8)の視力改善を示した(いずれもp<0.0001)1)。
ベバシズマブ・ラニビズマブ・アフリベルセプトの間で視力改善に有意差は認められていない1)。アフリベルセプトは中心網膜厚の減少がより大きいが、視力への影響に差はない1)。
活動性のある近視性脈絡膜新生血管では月1回のフォローアップが重要である。再発および脈絡網膜萎縮の拡大に注意する。脈絡膜新生血管が存在しても出血や滲出性所見がなく活動性がなければ経過観察となる。
近視性脈絡膜新生血管に対する抗VEGF薬は1回投与+必要時再投与(1+PRN)が標準レジメンである1)。加齢黄斑変性と比較して必要注射回数は一般に少ない。12か月で平均1.8回との報告がある1)。ただし再発や萎縮の拡大に対する長期経過観察は不可欠である。
近視性脈絡膜新生血管の発生機序には、機械的要因と循環障害の両面が関与する。
眼軸延長に伴う脈絡膜萎縮とBruch膜の弾性線維減少により、Bruch膜が機械的に断裂しlacquer cracksを生じる。この断裂部位を足場として創傷治癒反応としての脈絡膜新生血管を伴う結合組織が網膜下へ増殖すると考えられている。
病的近視眼では脈絡毛細血管板や血管層がほぼ消失し、脈絡膜大血管のみが残存する場合がある。EDI-OCTを用いた検討で、脈絡膜新生血管を生じる強度近視眼では脈絡膜が有意に菲薄化していることが報告されている。菲薄化した脈絡膜組織の循環障害がVEGFの産生を促し、異常な血管網の形成につながる。
近視性脈絡膜新生血管の由来血管は一般的な脈絡膜新生血管(脈絡毛細血管板由来)とは異なる可能性がある。swept source OCTとICGAを用いた検討で、短後毛様動脈が近視性脈絡膜新生血管近傍で強膜を貫通し脈絡膜新生血管に近接する所見が75.0%で確認されている。短後毛様動脈由来血管が脈絡膜新生血管に還流していると考えられる症例は、活動期100%、瘢痕期87.9%、萎縮期73.8%と高頻度であった。
近視性脈絡膜新生血管と近視性黄斑分離症(MF)の合併は稀であるが、重要な臨床的意義を持つ。
Sayanagiら(2023)は、近視性脈絡膜新生血管周囲にMFを伴う3症例を報告した2)。全例で経過観察中に黄斑部網膜剥離が増悪した。脈絡膜新生血管による網膜下液が向心性・遠心性の牽引バランスを破壊し、MFの進行を促進する可能性が示唆されている。
Pereiraら(2023)は、近視性黄斑分離症を伴う病的近視眼に発生した脈絡膜新生血管が全層黄斑円孔の原因となった症例を報告した4)。脈絡膜新生血管の滲出による機械的挙上が、脆弱化した中心窩のMüller細胞に応力を加え、裂孔形成に至ったと推察されている。
Carlàら(2025)は1,228眼の欧州コホートを対象とした15年間の自然史研究で、近視性黄斑症の57%が10年以上の経過観察中に進行したことを報告した5)。限局性萎縮を有する眼の47%が黄斑部萎縮に進行し(OR 4.21)、活動性の近視性脈絡膜新生血管は15%の眼に平均4.5年で発症した。近視性脈絡膜新生血管の発生は視力低下(p=0.001)および黄斑部萎縮への進展(OR 5.81)と有意に相関した。
抗VEGF薬により短期的には良好な視力改善が得られるが、5年以上の長期成績は短期成績に劣る。その原因は、脈絡膜新生血管が退縮しても長期経過で黄斑部萎縮が拡大し中心視力が障害される症例が存在するためである。萎縮の進展を抑制する治療法の開発が今後の課題である。
OCT-A Angio-Bモードは、構造OCTや蛍光造影では検出困難な早期の脈絡膜新生血管を検出できる可能性がある3)。非侵襲的かつ高感度な検査法として、強度近視眼のスクリーニングへの応用が期待される。