ベバシズマブ
一般名:ベバシズマブ(アバスチン®)
用量:1.25 mg/0.05 mL(未熟児網膜症では0.675 mg/0.03 mL)
分子形式:モノクローナル抗体(全長IgG)
備考:硝子体内注射は適応外使用。点滴静注用製剤を無菌的に分注して使用する。

硝子体腔内注射は、眼球内部のゼリー状組織(硝子体)で満たされた空間(硝子体腔)に直接薬剤を注入する手技である。
抗VEGF薬の登場以降、実施頻度は著しく増加した。現在では外来で実施可能な、最も頻度の高い眼科手技の一つとなっている。
血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした薬剤が抗VEGF薬の主体を成す。各薬剤の分子形式・用量・特徴は以下の通りである。
ベバシズマブ
一般名:ベバシズマブ(アバスチン®)
用量:1.25 mg/0.05 mL(未熟児網膜症では0.675 mg/0.03 mL)
分子形式:モノクローナル抗体(全長IgG)
備考:硝子体内注射は適応外使用。点滴静注用製剤を無菌的に分注して使用する。
ラニビズマブ
一般名:ラニビズマブ(ルセンティス®)
用量:0.5 mg/0.05 mL(加齢黄斑変性・網膜静脈閉塞症・病的近視に伴う脈絡膜新生血管)、0.3 mg/0.05 mL(糖尿病黄斑浮腫・糖尿病網膜症)
分子形式:Fab断片(抗体の抗原結合部位のみ)
備考:硝子体内での拡散が速い。
アフリベルセプト
一般名:アフリベルセプト(アイリーア®)
用量:標準製剤2.0 mg/0.05 mL、高用量製剤(アイリーア®HD)8 mg/0.07 mL
分子形式:デコイVEGF受容体(融合タンパク)
備考:VEGF-A・VEGF-B・PlGFに結合。
ファリシマブ
一般名:ファリシマブ(バビースモ®)
用量:6 mg/0.05 mL
分子形式:二重特異性抗体
備考:VEGF-AとAng-2(アンジオポエチン-2)の両方を同時に標的とする。
眼内炎の治療における標準的な投与量は以下の通りである。
抗VEGF薬の投与は通常、導入期と維持期の2段階からなる。
導入期:疾患活動性を十分に抑制するため、毎月固定で3〜4回投与する(疾患・薬剤により異なる)。
維持期の方法は以下の3種類がある。
病的近視に伴う脈絡膜新生血管では単回投与のみで寛解する場合もある。
刺入部位は眼の状態によって異なる。
| 眼の状態 | 輪部からの距離 |
|---|---|
| 偽水晶体眼 | 3〜3.5 mm |
| 有水晶体眼 | 3.5〜4.0 mm |
| 未熟児 | 1.0〜1.5 mm |
3種類の麻酔法が用いられる。
点眼麻酔
薬剤:テトラカイン、プロパラカイン(ベノキシール®)、4%キシロカイン
手順:消毒薬の僚眼飛散を考慮してベノキシールを両眼に投与後、4%キシロカインを注射眼に2回投与する。
特徴:ランダム化比較試験で総合的な疼痛スコアが最低であることが示されている。外来での標準的な麻酔法。
結膜下麻酔
薬剤:エピネフリン非含有の1〜2%リドカイン
特徴:注射時の疼痛は最少だが、結膜下投与そのものの疼痛がある。効果発現は1〜2分。結膜下出血のリスクが高い。
球後麻酔
適応:眼内炎など炎症が強い眼。複数回注射を要する状況。
備考:通常は結膜下麻酔で十分な鎮痛が得られる。リスクが高いため日常的な使用は推奨されない。
感染予防において最重要のステップである。
眼球固定リングと注射角度ガイドを組み合わせたデバイスを使用すると、以下の利点が得られる。
未熟児では通常手技と異なる点がある。
点眼麻酔(テトラカイン・4%キシロカイン)を行った上で施行するため、注射中の痛みは軽微である。ランダム化比較試験では点眼麻酔が最も総合的な疼痛スコアを低く保つことが示されている。消毒薬(ポビドンヨード)による刺激感を感じることはあるが、術後早期の疼痛にはヒアルロン酸Na点眼が有効である。
術前の抗菌薬点眼(3日前からの投与)は一般的に行われている。ただし術後の抗菌薬点眼については、複数の研究で眼内炎発生率を低下させないことが示されている。現時点では術後抗菌薬点眼の有効性に関するエビデンスは一致していないが、感染管理上の観点から術後3日間の投与が一般的に採用されている。
主な合併症の頻度と対処を以下に示す。
| 合併症 | 頻度 | 対処 |
|---|---|---|
| 眼圧上昇 | 100%(一過性) | 通常は経過観察 |
| 結膜下出血 | 高頻度 | 経過観察 |
| 眼内炎 | 0.027〜0.065% | 緊急硝子体内注射 |
動脈血栓塞栓症(ATE:脳卒中・心筋梗塞)は理論上のリスクとして存在する。ラニビズマブ・アフリベルセプトの国内外第III相試験ではATEの発現率は0.6〜3%であった。
2021年に発表されたメタアナリシスでは、抗VEGF薬硝子体内注射は主要心血管イベントを増加させないことが示された。3)
網膜静脈閉塞症患者を対象としたRCT 8件・2,320人のメタアナリシスでも心血管リスクの有意な増加は認められなかった。4)
2011年の米国調査では、46%の網膜専門医が両眼同日注射を実施していた。患者の90%以上が同日注射を希望するとされる。
最大規模の研究(5年間・5,890人・101,932件)では眼内炎28例(0.027%)が生じたが、両眼性眼内炎は1例も発生しなかった。両眼同日注射を行う場合は、各眼に別々の器具・薬剤を使用することが必須条件である。
感染性眼内炎が最も重篤な合併症である。発生率は0.027〜0.065%と低いが、発症した場合には急激な視力低下・眼痛・充血が生じ、緊急の硝子体内抗菌薬注射(バンコマイシン+セフタジジム)が必要となる。発症予防の最重要策は5%ポビドンヨードによる眼球消毒であり、30〜60秒以上の十分な接触時間を確保することが必須である。
適切な手技を行えば安全である。5年間で10万件以上を対象とした最大規模の研究では、両眼性眼内炎(両眼同時感染)は1例も発生しなかった。ただし両眼同日注射を行う場合は、各眼に別々の器具・薬剤を使用することが絶対条件である。患者の90%以上が同日注射を希望するとされ、通院負担の軽減につながる。
血液網膜関門(blood-retinal barrier; BRB)の破綻は黄斑疾患の主要な病態である。
BRBの安定化と漏出減少において、VEGF-Aが最も重要な分子標的である。5) 開発された抗VEGF分子の形式には、モノクローナル抗体(ベバシズマブ)、Fab断片(ラニビズマブ)、一本鎖抗体断片(ブロルシズマブ)、デコイVEGF受容体(アフリベルセプト)がある。5)
硝子体内注射によりVEGFレベルが低下すると、血管透過性が低下し黄斑浮腫が改善する。5) ただし抗VEGF薬の効果は一時的であるため、定期的な再投与が必要となる。5)
薬液注入により硝子体腔の容積が急増し、急性の眼圧上昇が生じる。注入量依存性が明確であり、0.1 mL(高容量)の注入は0.05 mL(標準容量)より大きな眼圧変動をもたらす。1) このため薬液の緩徐な注入が推奨される。1)
抗VEGF薬は本来黄斑円孔の治療薬ではないが、糖尿病黄斑浮腫患者に対するアフリベルセプト単回注射後に全層黄斑円孔(FTMH)が閉鎖した症例報告がある。2)
推定されるメカニズムとして、黄斑浮腫の軽減により嚢胞状の液体が消退し、垂直方向への牽引力が減少する結果、網膜辺縁の再接着が促進されると考えられる。2) 逆説的に、抗VEGF注射後に新たなFTMH形成が生じる事例も報告されており、詳細な機序は未解明である。2)
導入期に集中投与を行う理由は、疾患活動性を早期に強力に抑制するためである。維持期の間隔延長(TAE法)は、硝子体内の薬剤濃度が治療域を維持できる範囲で再燃を許容しない枠組みを提供する。
アフリベルセプト高用量製剤(アイリーア®HD、8 mg/0.07 mL)は、投与間隔の延長(最長5か月)を目指した製剤として一部で導入が始まっている。治療負担の軽減が期待される。
ペグセタコプラン(Syfovre®)およびアバシンカプタド ペゴル(Izervay®)は、加齢黄斑変性の地図状萎縮(GA)進行抑制を目的とした補体阻害薬である。月1回または2か月に1回の投与が承認されている(米国)。
ラニビズマブやベバシズマブのバイオシミラーが登場しつつある。コストの大幅な低下により、治療継続率の向上が期待される。
1.25%ポビドンヨードの硝子体内注射は、眼内炎治療においてバンコマイシン関連出血性閉塞性網膜血管炎(HORV)のリスクを回避する代替法として研究が進められている。現時点では適応外使用であり、標準治療ではない。1)
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American Academy of Ophthalmology Retina/Vitreous Panel. Retinal Vein Occlusions Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2024.
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