強膜圧迫法
原理:強膜外から圧迫器具を当て、周辺眼底を動的に観察する。
適応:鋸状縁付近の裂孔検出に有用。閉鎖式マイクロサージェリー中の深い動的強膜圧迫として応用される。

裂孔原性網膜剥離の修復において、原因裂孔をすべて同定することが術後復位の前提条件となる。しかし、すべての症例で術前・術中に裂孔を視認できるわけではない。
裂孔原性網膜剥離の年間発生率は10〜18/10万人とされる。20〜40%が白内障手術後に発生し、10%が外傷後に関連する。1) 早期の修復ほど復位成功率および視力予後が良好である。1)
水晶体の状態と裂孔検出困難率の関係は以下の通りである。
このような潜在性(occult)裂孔を術中に検出するために複数の手技が開発されており、各手技の原理・適応・成功率の理解が求められる。
眼内レンズによる光学的散乱や後嚢の混濁が周辺眼底の観察を妨げるため、有水晶体眼より検出困難率が高くなる。加えて白内障手術後に生じる格子状変性や術後炎症の変化も視認性を低下させる要因となる。
強膜圧迫法
原理:強膜外から圧迫器具を当て、周辺眼底を動的に観察する。
適応:鋸状縁付近の裂孔検出に有用。閉鎖式マイクロサージェリー中の深い動的強膜圧迫として応用される。
シュリーレン現象
原理:屈折率の異なる液体が混合する際に生じる光学的筋状パターン。硝子体切除中に観察することで裂孔からの網膜下液(SRF)排出を可視化する。
適応:広範な裂孔原性網膜剥離で裂孔部位の特定が困難な症例。
冷凍凝固テスト
原理:鋸状縁〜赤道部に2列の連続冷凍凝固を施行。即時型(アイスボール内での不透明化)または遅延型(数分後の淡灰色変化)として裂孔を可視化する。
適応:周辺部裂孔の同定。冷凍凝固・レーザーによる裂孔処理も同時に行える。5)
内視鏡法
原理:ファイバーオプティック内視鏡を光源として眼内から観察する。
適応:強膜圧迫が困難な症例(強膜ブドウ腫など)。硝子体基底部シェービングと裂孔検出を同時に実施できる。
Rosenらが報告した閉鎖式マイクロサージェリー中の深い動的強膜圧迫法は、鋸状縁付近の裂孔検出に有用な基本手技である。硝子体手術中の標準的手順の一部として位置づけられる。2)
黄斑円孔手術においても、後部硝子体剥離誘導後に強膜圧迫により周辺部を精査する手順が推奨されている。4) 網膜前膜・内境界膜除去後にも裂孔の有無を確認する。3)
広視野観察システム(Resight、BIOMなど)および術中OCTの活用が裂孔検出の精度を向上させる。5)
シュリーレン現象(Schlieren phenomenon)とは、透明媒体内の光学的不均一性を指す。屈折率の異なる液体が混合する際に特徴的な「筋」状のパターンとして観察される。硝子体切除中にこの現象が認められれば、SRFの排出部位、すなわち裂孔の存在を意味する。
シュリーレン現象を利用する手技は2種類ある。各手法の比較を以下に示す。
| 手法 | 使用材料 | 成功率 |
|---|---|---|
| 重液法(PFO) | C8F18等の過フッ化炭素液体 | 44%(25眼中11眼) |
| DE-TECH 経網膜法 | トリパンブルー+41G針 | 80〜89% |
| DE-TECH 経強膜法 | トリパンブルー+30G針 | 80〜89% |
C8F18などの過フッ化炭素液体を用いて裂孔からSRFを排出させ、シュリーレン現象として可視化する手法である。Martinez-Castilloらが報告した成功率は25眼中11眼(44%)にとどまる。
色素(トリパンブルー; TB)を網膜下腔に注入し、色素排出によるシュリーレン現象のコントラストを増強させる手法である。
経網膜法:41G針を用いて後部網膜切開からTBを注入する。その後、過フッ化炭素液(PFCL)充填下に動的強膜圧迫を行い、裂孔から色素の排出を観察する。
経強膜法:30G針を最も胞状な(隆起の高い)部分に刺入してTBを注入する。以降の操作は経網膜法と同様である。
成功率は80〜89%と重液法を大幅に上回る。代表的な適用例として、82歳男性の全網膜剥離症例において、強膜ブドウ腫と網膜萎縮に隠蔽された乳頭周囲裂孔をDE-TECHにより発見した報告がある。
鋸状縁から赤道部にかけて2列の連続冷凍凝固を施行し、裂孔を可視化する手技である。
冷凍凝固自体が裂孔処理にもなるため、検出と治療を同時に進められる利点がある。ただし過剰な冷凍凝固は合併症のリスクを伴う。
ファイバーオプティック内視鏡を光源として眼内から硝子体基底部を直接観察する手技である。
20例中19例(95%)で裂孔が同定され、合併症は報告されていない。主な利点は以下の通りである。
裂孔を直接検出できない場合に、剥離の形態(液体の分布・隆起パターン)から裂孔が存在すると推測される象限にバックリングを行う。主裂孔の95%がその推測領域内に局在するとされ、最後の手段として位置づけられる。
剥離形態から裂孔が存在すると推測される象限に推測的バックリングを行う。主裂孔の95%がその領域内に局在するとされており、裂孔の直接同定が困難な場合でも有効な戦略となる。
潜在性裂孔の原因は光学的・解剖学的障害と局在的な問題に分類できる。
| 分類 | 要因 | 具体例 |
|---|---|---|
| 前眼部 | 光学的障害 | 角膜混濁、小瞳孔、眼内炎症 |
| 水晶体 | 媒体混濁 | 白内障、残存皮質片 |
| 後眼部 | 硝子体障害 | 硝子体混濁、硝子体出血、線維化 |
| 特定部位 | 解剖学的変異 | 強膜ブドウ腫、微小裂孔 |
Bスキャン超音波検査は術前評価に用いられるが、裂孔検出における感度は44〜100%と幅がある。1) 広角眼底写真は眼底検査の代替にはならない。1)
トリパンブルーは硝子体・網膜手術の各種染色に広く用いられるが、残留した場合に網膜毒性を生じうる。DE-TECH実施後は十分な眼内洗浄を行い、色素を可能な限り除去することが求められる。
裂孔原性網膜剥離は、網膜の全層欠損(裂孔)を通じて液化硝子体が網膜下腔に流入することで発症する。1)
後部硝子体剥離(PVD)は後部硝子体皮質と内境界膜(ILM)の分離により生じる。1) 裂孔原性網膜剥離の成因として中心的な役割を担う。
裂孔の自然経過と治療介入の効果は以下の通りである。
裂孔を見落とした状態で手術を終えると術後再剥離の直接的原因となる。このため潜在性裂孔の術中同定は、網膜剥離修復術の成否を決定する最重要要件のひとつである。
検出された裂孔にはエンドレーザー光凝固または冷凍凝固を施行して裂孔縁を眼底に接着させる。冷凍凝固テストでは検出と治療を同時に進められる。5) ガスタンポナーデや強膜バックリングを組み合わせて網膜の復位を図る。