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小児眼科・斜視

一側性冠状縫合早期癒合症

1. 一側性冠状縫合早期癒合症とは

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一側性冠状縫合早期癒合症(Unilateral Coronal Synostosis; UCS)は、頭蓋骨の片側の冠状縫合が早期に癒合することにより生じる疾患である。出生約10,000人に1人の頻度で発生する。

多くは非症候群性であり、非症候群性頭蓋縫合早期癒合症の12〜24%を占める。一方、ミュンケ症候群や頭蓋前頭鼻形成異常など症候群の一部として認められることもある。

非症候群性UCSの約50%は散発的な遺伝子変異に起因する。FGFR3およびTWIST1遺伝子との関連が報告されている。家族歴は冠状縫合早期癒合症の8〜10%で認められる。環境要因としては催奇形性物質への曝露、母親の喫煙、子宮内での胎児頭部の拘束、羊水過少症がある。

UCSは小児の眼窩の成長、眼位、および視能発達に影響を及ぼす。

出生時から頭蓋の非対称が認められる。保護者が眼位のずれや左右の眼の大きさの違いに気づくことが多い。

臨床所見(医師が診察で確認する所見)

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UCSは「顔面スコリオシス(顔面の側弯)」を呈し、以下の特徴を示す。

  • 患側:前頭部の平坦化(後退)、耳の突出・前下方偏位、眼窩上縁の挙上
  • 健側:代償的な前頭部突出(frontal bossing)、眼瞼裂の縮小
  • 鼻根部:患側へのねじれ
  • 下顎:健側への偏位

ハーレクイン変形は患側の眼窩上縁および蝶形骨大翼の挙上により生じ、眉毛の挙上、眼瞼裂の拡大、軽度の眼球突出として認められる。

  • 斜視:有病率19〜71%。上斜筋麻痺パターン(癒合側の同側、87%)が特徴的。V型斜視への進展がみられる。下斜筋過動/上斜筋不全は50.8%に認められる
  • 不同視性乱視:54〜60%。癒合側の反対側の眼により高度の乱視が認められる。反対側の眼窩天蓋の下方偏位が角膜曲率を変化させるためと考えられている
  • 弱視:35〜38%。乱視と斜視の高い有病率が原因となる
  • 眼瞼・涙道異常:内眥贅皮(26%)、兎眼(7%)、外眥部ジストピア(14%)、鼻涙管閉塞(12%)
  • 乳頭浮腫:頭蓋内圧亢進(単一縫合で4〜42%)に伴い生じうるが、一側性冠状縫合早期癒合症では比較的稀
  • 視神経萎縮:慢性的な頭蓋内圧亢進に伴い生じうるが、孤立性の一側性冠状縫合早期癒合症では稀

変形性斜頭症(DP)は一側性冠状縫合早期癒合症と誤診されることがある。変形性斜頭症は出産時の圧迫や仰臥位の継続による頭蓋の非対称平坦化で、推定発生率は生後6ヶ月児の約20〜50%である。変形性斜頭症では頭部形状が平行四辺形を呈し、ハーレクイン変形や鼻根部のねじれを認めないことで鑑別できる。

UCSの原因は冠状縫合の早期癒合である。冠状縫合が癒合すると、癒合側の頭蓋成長が停止し、未癒合の縫合方向への代償的成長が生じる。

  • 遺伝的要因:FGFR3(線維芽細胞増殖因子受容体3)およびTWIST1遺伝子の変異が報告されている。これらの転写因子の早期活性化が頭蓋縫合の早期癒合を招く
  • 家族歴:8〜10%で頭蓋縫合早期癒合症の家族歴がある
  • 環境要因:催奇形性物質への曝露、母親の喫煙、子宮内での胎児頭部拘束、羊水過少症
  • 身体診察:頭蓋の非対称、ハーレクイン変形、顔面スコリオシスの評価
  • 頭部CT(3D再構成):癒合した縫合の確認と範囲の評価
  • 眼科検査
    • 屈折検査(調節麻痺薬下):不同視性乱視の評価。癒合反対側により高度の乱視が認められる
    • 眼位検査:上斜筋機能不全、V型パターンの有無
    • 視力検査:弱視のスクリーニング
    • 眼底検査:乳頭浮腫の有無
  • MRI:直筋の外旋、上斜筋滑車の位置異常の評価

治療の主な目的は、頭蓋内の拡張スペースを確保し正常な脳の発達を保証することである。

  • 内視鏡下縫合切除術(ESC):低侵襲な手技。通常生後3〜4ヶ月以内に施行する。手術時間の短縮、出血量の減少、入院期間の短縮に関連する。術後は矯正ヘルメットを装着する。生後6ヶ月を過ぎると通常効果的でないため、適時の紹介が不可欠である
  • 前頭眼窩前進術(FOA):開頭術を伴う再建。通常1歳前後かそれ以降に施行する。より侵襲的な手術であるが、頭蓋再建の自由度が高い
  • 屈折矯正:不同視性乱視に対する眼鏡処方
  • 弱視治療:遮閉療法やアトロピンペナリゼーション
  • 斜視手術:必要に応じて施行する
  • 定期的モニタリング:乳頭浮腫の出現、屈折異常の進行、斜視の悪化の有無を経過観察する

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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冠状縫合の早期癒合により、患側の眼窩上縁と蝶形骨大翼が挙上し、眼窩容積が減少する。これがハーレクイン変形の原因となる。癒合側の反対側では代償的な頭蓋成長が生じ、前頭部が突出する。

上斜筋麻痺パターンがUCSの特徴である理由として、以下の仮説が提唱されている。

  • 眼窩上縁の後退と眼窩天蓋の短縮により滑車が後方に偏位し、上斜筋の作用不全が生じる
  • MRI研究では、骨性眼窩内の直筋の外旋(excyclorotation)上斜筋滑車の位置異常が確認されている
  • 前頭眼窩前進術の手術中に滑車の偏位が医原性に発生することもある

癒合側の反対側で乱視が強い理由は、反対側の眼窩天蓋が下方に偏位し、眼球に直接圧力を加えて角膜曲率を変化させるためと考えられている。


  • MacKinnon S, et al. Unilateral coronal synostosis. J AAPOS. 2009.
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  • Levy B, et al. Refractive error and amblyopia in unilateral coronal synostosis. J AAPOS.
  • Samara SA, et al. Strabismus in unilateral coronal craniosynostosis. J AAPOS.
  • Tarczy-Hornoch K, et al. Amblyogenic anisometropia in craniosynostosis. J AAPOS.

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