むき運動(Versions)
方法:視標を眼前50cmに提示し、正面から左右・上下に動かす。スムースな追従と遅動の有無を観察する。最終地点で静止させ、制限と終末位眼振をチェックする。
9方向むき眼位検査:各方向での運動障害を系統的に評価する。可動性は0〜4スケール(0=正常、-=運動不足、+=過動)で記録する。
注意点:過動は下斜筋・上斜筋で見られやすい。正しい頭位で検査することが重要である。

感覚・運動機能検査は、眼位ずれ(斜視)や両眼視機能の異常を評価するための一連の検査法の総称である。
感覚機能検査は解離的検査手技(片眼遮閉やカバーテスト)の前に実施すべきである1)。立体視の評価は両眼位検査の重要な要素であり、高度な立体視は正常な眼位と関連する1)。
小児眼科では年齢・発達段階に応じた検査法の選択が必要である。乳幼児に施行可能な検査としては、赤色反射法(Brückner法)、屈折検査、瞳孔反応、固視・追視検査、眼位眼球運動検査がある。
感覚機能検査(立体視検査やWorth 4-Dotなど)を先に行うべきである。カバーテストなどの解離的検査は融像を破壊する可能性があるため、感覚機能の評価をその前に実施する必要がある。
乳児では小角度の外斜視が一過性にみられることがあるが、生後4〜6ヶ月でほぼ正位になる。この時期を過ぎても眼位のずれが持続する場合は精査が必要である。なお、乳児の感覚性斜視の原因に網膜芽細胞腫など早期診断が重要な疾患が含まれるため、注意が必要である。
感覚・運動機能検査の適応となる主な疾患を以下に示す。
先天性上斜筋麻痺では異常頭位(首のかしげ)が主訴となることが多い。
偏位の特性(どちらの目がどの方向にどの頻度でずれるか)、持続時間、遠距離・近距離での有無、発症時期を確認する。複視の有無、深径覚の問題、眼精疲労・頭痛の有無を聴取する。
むき運動(Versions)
方法:視標を眼前50cmに提示し、正面から左右・上下に動かす。スムースな追従と遅動の有無を観察する。最終地点で静止させ、制限と終末位眼振をチェックする。
9方向むき眼位検査:各方向での運動障害を系統的に評価する。可動性は0〜4スケール(0=正常、-=運動不足、+=過動)で記録する。
注意点:過動は下斜筋・上斜筋で見られやすい。正しい頭位で検査することが重要である。
ひき運動(Ductions)・輻湊
ひき運動:片眼を遮閉し一眼ずつ視標を追わせる。正常範囲は、外方視で角膜輪部が外眼角に、内方視で瞳孔内縁が涙点線に達する。むき運動で制限があってもひき運動で制限がなければ、制限なしと判断する。
輻湊検査:ボールペンか指を使用(ペンライトは不適当)。眼前50cmからゆっくり鼻先へ近づける。
乳幼児:むき運動・ひき運動は全乳児・小児で検査すべきである1)。人形の頭回転法でも評価可能1)。
ヒルシュベルグテスト
ペンライトを1/3mの距離で使用し、角膜反射の対称性を評価する。
| 角膜反射のずれ | 推定偏位量 |
|---|---|
| 1mm | 約7度(約15Δ) |
| 瞳孔縁 | 約30Δ |
| 虹彩中間 | 約60Δ |
| 角膜縁 | 約90Δ |
反射が鼻側にずれている場合は外斜視、耳側にずれている場合は内斜視を示す。
クリムスキーテスト:プリズムで角膜反射のずれを矯正する。外斜視にはBI、内斜視にはBO、上斜視にはBD、下斜視にはBUプリズムを使用する。
カッパ角:視軸と瞳孔軸の角度。正のκ角は外斜視様に、負のκ角は内斜視様にみえる。偽斜視の鑑別に重要。
Brücknerテスト:暗室で検眼鏡レンズ「0」を用い、両眼に45〜75cmから光を照射する。散瞳前に実施する1)。
角膜反射のずれ1mmは約7度(約15プリズムジオプトリー)に相当する。瞳孔縁で約30Δ、虹彩中間で約60Δ、角膜縁で約90Δと推定される。ただしこれは概算であり、正確な偏位量の測定にはプリズム同時遮閉試験を用いる。
固視はCSM(central, steady, and maintained)で記録する1)。誘発斜視試験では10〜20Δプリズムで固視行動を観察する1)。嫌悪反射は片眼遮閉を嫌がる反応で、視力の左右差を示唆する。
後天性上斜視における麻痺筋の特定に用いる。3ステップで8つの周期性回旋筋から麻痺筋を絞り込む。Bielschowsky head tilt testでは頭部を傾斜させて上斜視の変化を観察する。
解離性上斜偏位(DVD)、斜偏位(skew deviation)、重症筋無力症などでも3段階テストが陽性となりうるため、結果の解釈には注意が必要である。臨床的に他の所見と総合的に判断する。
斜偏位の鑑別に用いる。仰臥位で偏位量が50%以上減少すれば陽性であり、感度80%、特異度100%と報告されている。
感覚・運動機能検査の結果に基づき、以下の治療法が選択される。
光学矯正・弱視治療
屈折矯正:内斜視では完全屈折矯正眼鏡が基本。調節性内斜視では眼鏡処方のみで眼位が改善することがある。
弱視治療:光学矯正、遮閉療法、アトロピンペナリゼーション1)。
プリズム治療:軽度麻痺性斜視に有用。眼鏡は4Δ以下、膜プリズムは強度数が可能だが見づらくなる。回旋性複視は7°以内ならプリズムで矯正可能で、8°超では手術適応。
手術治療
共同斜視手術:内斜視は両内直筋後転術、外斜視は両外直筋後転術が第一選択。間欠性外斜視は4歳以降、恒常性化等で手術適応。
先天性上斜筋麻痺:自然治癒はなく手術が必要。
眼振阻止症候群:内直筋Faden手術(小児で筋付着部から11〜12mm)が行われる。
一般に4歳以降が手術の目安とされ、恒常性化(常時外斜位)、立体視の悪化、コントロール不良(臨床コントロールスコアの悪化)などが手術適応となる。経過観察中は遠見・近見での偏位量の変化や融像の維持能力を定期的に評価する。
ヘリングの法則(等神経支配の法則)は、共同運動において両眼の拮抗筋に等量の神経支配が送られることを述べる。この法則により、麻痺性斜視では麻痺筋の作用方向に眼を向けたとき(第二偏位)の偏位量が第一偏位より大きくなる。
斜偏位(skew deviation)は耳石入力の不均衡により生じる両眼の垂直偏位で、末梢前庭から脳幹の病変で発症する。立位・仰臥位テストは耳石機能への重力入力の変化を利用して斜偏位と末梢性病変を鑑別する。
先天性上斜筋麻痺では上斜筋腱の低形成がみられ、MRI研究では70%以上で滑車神経の欠損が確認されている。
正常な感覚運動融像は両眼の協調運動と両眼視を統合する機能であり、弱視・斜視・屈折異常はこの融像機能を障害する1)。
Gurnaniら(2025)は、ハンドヘルド型SD-OCT(HH-SDOCT)が小児での網膜・視神経の画像化に有用であり、乳児眼振症候群や網膜ジストロフィーの診断補助に活用できると報告した2)。従来の据え置き型OCTでは協力が得られない乳幼児でも施行可能である。
二眼分離型デジタル療法(タブレットやVRヘッドセットを用いて両眼に異なる映像を提示する治療法)が弱視治療の新たなアプローチとして研究されている1)。
液晶偏光眼鏡による間欠的遮閉療法も開発されており、従来のアイパッチによる遮閉療法のコンプライアンス問題の解決が期待される1)。