形態・分布
形状:C字型ハロー/円環状。連続構造として存在する。
好発部位:鼻側・上方に好発。
特徴的外観:「スキースロープ」様または「ブーツ型」外観。
サイズ:平均高さ399μm、平均幅721μm。

PHOMS(Peripapillary Hyperreflective Ovoid Mass-Like Structures)は、Enhanced Depth Imaging OCT(EDI-OCT)により視神経乳頭周囲に認められる構造物である。ブルッフ膜上に位置し、卵円形で高反射を呈する腫瘤様構造として定義される1)2)4)。
名称はその特徴を直接表している。
2011年にOCT上で初記述されたが、当初は「埋没型ODD(視神経乳頭ドルーゼン)」と誤認されていた1)2)。
2018年、ODDコンソーシアムのMalmqvistらが38例のEDI-OCT画像を解析し、PHOMSをODDとは別の疾患単位として定義した1)4)。
2020年にはPetzoldらがデルファイ法で診断基準を精緻化した2)4)。現行の診断基準は以下の3点である。
PHOMSの有病率は対象集団によって大きく異なる。
ODD患者の47%~90%にPHOMSが併存する1)4)。PHOMSとODDは共存するが、別個の構造物であることが現在の理解である。
PHOMSはブルッフ膜上に位置する乳頭周囲の高反射卵円形構造であり、OCTでは均一高反射・乳頭周囲に認められる。ODD(視神経乳頭ドルーゼン)は乳頭内に位置し、低反射コアと高反射辺縁を持つ。両者は共存することが多く(ODD患者の47~90%にPHOMSが併存)、異なる検査での鑑別ポイントについては「診断と検査方法」の項も参照。
PHOMSそのものは通常無症候性である1)2)。北京眼研究ではPHOMSを持つ成人に視機能低下は認められなかった。
まれに、PHOMS関連の自然発生的乳頭出血を生じる場合があり、飛蚊症や眼精疲労を主訴に発見されることがある5)。
PHOMS自体による視力低下は通常起こらない。北京眼研究において、PHOMSを有する成人で視機能低下は確認されなかった。ただし、PHOMSを伴う基礎疾患(IIH、視神経炎、NAIONなど)が視力低下を引き起こす場合がある。
乳頭縁のぼやけを呈し、鼻側に顕著なC字型またはO字型のハローを認める2)4)。
EDI-OCTはPHOMS診断のゴールドスタンダードである1)。主な所見は以下の通り。
形態・分布
形状:C字型ハロー/円環状。連続構造として存在する。
好発部位:鼻側・上方に好発。
特徴的外観:「スキースロープ」様または「ブーツ型」外観。
サイズ:平均高さ399μm、平均幅721μm。
反射特性
反射率:均一高反射。RNFLと類似した反射率。
内部高反射スポット:小児では93.8%に認められる。
位置関係:ブルッフ膜上に厳密に位置する。
PHOMSは軸索流停滞のマーカーである。軸索輸送が障害されると、神経線維が側方に膨隆・ヘルニアを起こし、PHOMSとして可視化される1)2)4)。
PHOMSは多様な視神経疾患に合併する非特異的な所見である。主要な関連疾患と合併率を以下に示す。
関係がある。近視小児(6~12歳、≥1.00D)では26%にPHOMSが認められ、近視は重要なリスク因子の一つである。近視度数が強いほど乳頭傾斜が生じやすく、ブルッフ膜突出と神経線維の屈曲によってPHOMSが形成されやすくなる2)4)。
EDI-OCTがPHOMS診断のゴールドスタンダードである1)。眼底鏡のみでは真の乳頭浮腫との鑑別が困難なため、EDI-OCTによる評価が不可欠である。
PHOMSとODDは共存することが多いが、各モダリティで異なる特徴を示す。
| モダリティ | PHOMS | ODD |
|---|---|---|
| 眼底検査 | C字型/O字型乳頭周囲ハロー | 乳頭内の結晶様構造 |
| OCT | 均一高反射・卵円形・乳頭周囲 | 低反射コア+高反射辺縁・乳頭内 |
| OCTA | 内部に微小血管網あり | 血管網なし |
| 自発蛍光 | 通常低蛍光 | 高自発蛍光 |
| 超音波 | 網膜レベル高エコー・シャドーなし | 深部高エコー+後方シャドー |
PHOMSは偽乳頭浮腫の主要原因であるが、真の乳頭浮腫と共存することもある。以下の点が鑑別に重要である。
PHOMSが存在しても、IIH等の緊急性の高い疾患の除外は必須である1)2)4)。
PHOMSそのものに対する特異的治療法は存在しない1)2)4)。治療の原則は基礎疾患の管理であり、基礎疾患の治療によってPHOMSは消退する。
| 基礎疾患 | 消退の時期 | 治療内容 |
|---|---|---|
| 視神経炎 | 75%が1か月以内、残りも3~8か月以内に消失 | 標準的な視神経炎治療 |
| IIH | 体重減少・アセタゾラミドで消退 | 体重管理・内服治療 |
| NAION | 1~2か月で消失 | 経過観察 |
| LHON | 12か月以内に消失 | 基礎疾患管理 |
Aziriaら(2023)は視神経炎102例を対象とした研究で、視神経炎におけるPHOMSの有病率が7.0%であることを報告した3)。視神経炎の治療後、PHOMSは75%の症例で1か月以内に消失し、残りの症例でも3~8か月以内に消退した。
OCTによる定期的なモニタリングは、基礎疾患の活動性評価や治療効果判定として有用である2)。PHOMSの変化を追跡することで、乳頭浮腫の再燃や病勢の変化を非侵襲的に評価できる。
PHOMSそのものへの特異的治療は不要である。基礎疾患(特発性頭蓋内圧亢進症、視神経炎、非動脈炎性前部虚血性視神経症など)を適切に治療することでPHOMSは消退する。ただし、PHOMSの原因となる基礎疾患の中には特発性頭蓋内圧亢進症のように早期治療が必要なものも含まれるため、原因疾患の診断・治療が最優先となる。
PHOMSの組織病理学的所見として、膨化・空胞化した軸索のS字型ヘルニアが確認されている2)4)。S100免疫染色陽性所見は、これらの構造物が軸索由来であることを示す4)。放射性同位元素を用いた実験や電子顕微鏡観察でも、軸索輸送停滞のマーカーが検出されている2)4)。
PHOMSの形成機序は基礎疾患によって異なる。
ODD
機械的圧迫:石灰化沈着物(ドルーゼン)による乳頭内の機械的圧迫が軸索輸送を障害する。
部位:乳頭内のODDがPHOMSとして側方に突出する構造をとる。
特発性頭蓋内圧亢進症
圧勾配逆転:篩状板を貫通する圧勾配の逆転が軸索輸送を障害する。
可逆性:特発性頭蓋内圧亢進症治療により頭蓋内圧が正常化するとPHOMSは消退する。
TDS/近視
構造的変形:ブルッフ膜の突出と神経線維の屈曲が軸索流を機械的に障害する。
有病率:TDS小児の39.5%にPHOMSが認められる。
視神経炎
炎症性障害:脱髄および炎症細胞浸潤による軸索輸送の障害。
経過:炎症消退とともにPHOMSも消失する。
Borrelliら(2021)はOCTAを用いてPHOMS内部に花冠状血管複合体が存在することを初めて報告した6)。PHOMSのサイズが大きい(≥500μm)ほど血管密度が低下することも示された。このspace-occupying effectが血管密度低下のメカニズムと推察されている。
PHOMSがODDの前駆段階である可能性が提唱されている。軸索由来物質の蓄積がやがてカルシウム沈着を起こし、ODD(視神経乳頭ドルーゼン)へと移行するというカルシウム沈着仮説が存在する1)。ただし、この仮説は現時点では確立されていない。
Borrelliら(2021)は、PHOMSが単なる形態的構造物ではなく内部に血管複合体を含む可能性を示した6)。OCTA(光干渉断層血管造影)により初めて可視化されたこの知見は、PHOMSの病態理解を大きく前進させた。PHOMSと視神経血流の関係についてはさらなる研究が必要である。
Wangら(2024)はPHOMS内に自然発生した局所的な乳頭出血を2例報告した5)。いずれも無症候性または軽微な症状(飛蚊症・眼精疲労)での発見であり、OCTAが血管複合体の出血源同定に有用であった。PHOMS内出血の発生機序と臨床的意義は現在解明が進められている。
多発性硬化症(MS)患者でのPHOMS有病率は16%~19.7%とされ、縦断的研究によってPHOMSが再燃活動性や軸索傷害の非侵襲的バイオマーカーとなりうる可能性が検討されている2)4)。
PHOMSは近視小児の26%に認められ、眼軸延長に伴う乳頭形態変化のバイオマーカーとして近視進行のモニタリングへの応用が期待されている2)4)。
IIHにおける頭蓋内圧のモニタリングにPHOMSを活用する試みが進んでいる。PHOMSの変化が頭蓋内圧の変動を反映する指標となりうるか、前向き研究が必要とされている2)。