術後斜視
乳児内斜視の手術後に最も多く認められる。2歳未満での手術例で発症しやすい。
長期予後への好影響:術後に本症候群を獲得した患者は、長期的な眼位維持の可能性が2倍に高まる。
外斜視術後にも生じうるが比較的まれである。

単眼視固定症候群(monofixation syndrome)は、1969年にMarshall M. Parksによって定義された概念である。以下の特徴の組み合わせで構成される。
本症候群は、中心暗点の存在下で複視を回避しつつ周辺融像を維持するための感覚適応と理解されている。患者は外見上正常で、通常は無症状である。精細な立体視の欠如、あるいは軽度〜中等度の弱視を契機に発見されることが多い。
厳密には疾患ではなく、中心暗点を有する状況下で複視を回避するための感覚適応状態である。多くの専門家は斜視手術後の良好な転帰として位置づけている。治療は通常不要であるが、弱視を伴う場合はその治療を行う。
単眼視固定症候群の患者は通常無症状である。外見上も正常であり、以下のきっかけで偶然発見されることが大半を占める。
複視の訴えはない。中心暗点による抑制が複視を防止しているためである。
以下の所見の組み合わせが特徴的である。
固視パターンの評価も重要である。斜視患者では非優位眼が固視を保持する時間を両眼視下で評価する。固視を保持しない、瞬間的に保持する、数秒間保持する、といった段階で評価する1)。微小角斜視や非斜視例ではinduced tropia testが有用で、10〜20PDの基底下方プリズムを片眼ずつにかけて固視行動を観察する1)。
単眼視固定症候群は、機能性または器質性の中心暗点を引き起こす様々な状態から生じる。
術後斜視
乳児内斜視の手術後に最も多く認められる。2歳未満での手術例で発症しやすい。
長期予後への好影響:術後に本症候群を獲得した患者は、長期的な眼位維持の可能性が2倍に高まる。
外斜視術後にも生じうるが比較的まれである。
不同視
屈折の左右差が片眼性の抑制暗点を引き起こす。
弱視を伴うことが多い。
黄斑病変
片眼性の黄斑病変が絶対暗点を引き起こす。
周辺融像に依存して眼位を維持する。
原発性
先天的な能力欠如により同様の黄斑像を融像できない状態。
明確な原因疾患がない場合に分類される。
このほか、濃い両眼性白内障により両眼中心窩融像が長期間遮断されることも原因となりうる。小児・成人いずれでも報告がある。
間欠性外斜視が乳幼児期に発症した場合、偏心固視による異常網膜対応を基盤として単眼視固定症候群を生じることがある。この場合、軽度の弱視が約5%の症例に認められる。
悪いことではない。むしろ多くの専門家が術後の良好な結果と位置づけている。本症候群を獲得した患者は周辺融像により眼位の安定性が高まり、長期的な眼位維持の可能性が2倍になると報告されている。
遮閉・非遮閉試験で8PD以下の斜位または斜視を認めた場合に本症候群を疑う。確定診断には、中心暗点の存在、立体視の低下、および周辺部での両眼単一視の存在を証明する必要がある。
主な診断検査を以下に示す。
| 検査法 | 評価項目 | 特徴 |
|---|---|---|
| プリズム遮閉試験 | 偏位角 | 8PD以下を確認 |
| 立体視検査 | 立体視能 | 67秒角未満 |
| 4PD基底外方試験 | 中心暗点 | 眼球運動反応で判定 |
| ワース4灯試験 | 融像・暗点 | 遠近で反応が異なる |
| バゴリーニレンズ | 中心暗点 | 光線の中央途切れ |
8PD以下の斜位または斜視を確認する。注意点として、両眼視条件下では周辺融像が偏位の制御に寄与するため、同時プリズム遮閉試験や遮閉・非遮閉試験では交互プリズム遮閉試験よりも小さな偏位角を示すことがある。
立体視の低下(67秒角未満、通常200〜3000秒角)を確認する。周辺融像があるにもかかわらず立体視が全く検出できない症例もあるため、その場合は以下の検査で周辺部の両眼単一視を別途確認する。
中心暗点の存否を評価する最も重要な検査の一つである。両眼で遠方視標を固視させた状態で、片眼に4PDの基底外方プリズムを置き、両眼の運動反応を観察する。
偽陽性(両眼中心窩固視があるのに輻輳努力を行わない場合)や偽陰性(固視眼を入れ替える場合)が生じうるため、解釈には注意が必要である。
偽陽性は、両眼中心窩固視を持つ患者が複視を認識しても補正のための輻輳努力を行わない場合に生じる。偽陰性は、本症候群の患者がプリズムを置くたびに固視眼を入れ替えるため、どちらの眼を検査しても再固視運動が見られない場合に生じる。
周辺融像の存在と中心暗点の欠如を同時に評価できる。赤緑眼鏡を装着し、近距離と遠距離で検査する。
患者から見て右眼に135度、左眼に45度の角度で線条が入ったレンズを装着し、近距離の点光源を観察する。抑制暗点がある眼では光の線の中央が途切れて見える。
固視異常の評価も診断の補助となる。ビズスコープによる直接観察法が最も一般的で、3歳以降に正確な検査が可能となる。幼児ではペンライトの角膜反射による方法が用いられ、反射光が瞳孔中心にあるかを確認し、片眼ずつ遮蔽して固視の持続を評価する。
単眼視固定症候群は複視を回避するための感覚適応であり、眼位の安定性を高める役割を果たす。そのため治療の主な方針は以下のとおりである。
単眼視固定症候群の患者で、優位眼の視力が低下して固視眼が入れ替わると、新たに複視を自覚することがある(固視スイッチ複視)2)。白内障手術後の左右差、モノビジョンの導入、屈折矯正手術後などが契機となる2)。
単眼視固定症候群の本質は、中心暗点の存在下で複視を回避しつつ両眼視の一部(周辺融像)を維持するための感覚適応である。
機能性暗点
抑制による暗点:両眼視条件下でのみ出現する。単眼条件では中心窩機能は正常である。
内斜視術後、不同視性弱視など、皮質レベルでの抑制が原因となる。弱視治療により視力は改善しうるが、暗点は両眼条件下で持続する。
絶対暗点
黄斑病変による暗点:単眼条件でも両眼条件でも存在する。器質的な網膜障害に基づく。
黄斑変性、黄斑円孔などの黄斑疾患が原因となる。暗点は不可逆的であり、周辺融像への依存は永続する。
中心暗点が存在しても、暗点の外側(3〜5度以遠)の網膜は正常に機能する。この周辺網膜を介して融像が成立し、眼位の制御が維持される。周辺融像により正常範囲の融像性輻輳・開散域が保たれるため、患者は日常生活で眼位の逸脱を生じにくい。
間欠性外斜視が乳幼児期に発症した場合、偏心固視を基盤とする異常網膜対応が成立し、単眼視固定症候群へ移行することがある。この場合の両眼視野は正位時でも20〜30度と、正常の40度より狭いとされる。