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神経眼科

反射と眼

反射とは、防御機能や調節機能に関わる不随意反応の総称である。眼に関連する反射は以下の9種に大別される。

  • 対光反射(pupillary light reflex; PLR):光刺激に応じた瞳孔収縮
  • 暗順応反射:暗所での瞳孔散大
  • 睫毛脊髄反射:顔面・頸部への痛覚刺激による瞳孔散大
  • 近接調節三徴:輻凑・調節・縮瞳の三者同時反応
  • 角膜反射:角膜への刺激による両眼瞬目
  • 前庭眼反射(VOR):頭部運動に対する代償的眼球運動
  • ベル現象:強制閉瞼時の上方眼球偏位
  • 涙液反射三叉神経刺激や感情による流涙
  • 視運動性反射(OKR):動く視覚刺激に対する緩徐追従眼球運動

瞳孔径は瞳孔括約筋(副交感神経支配)と瞳孔散大筋(交感神経支配)のバランスで決まる。両筋ともアドレナリン作動性とコリン作動性の二重支配を受ける。正常人の瞳孔は明室でほぼ一定のリズムで動揺(虹彩動揺 hippus)する。

瞳孔径に影響する主な因子を以下に示す。

因子特記事項
年齢乳児2〜2.5mm、10代後半が最大、高齢者で縮瞳傾向
個人差正常範囲2〜6mm、室内平均4mm程度
生理的不同正常人の20%、0.5mm程度の左右差は正常
その他屈折・調節・照度・音・色・日内変動・抗ヒスタミン薬など
Q 瞳孔の大きさは年齢で変わるのか?
A

乳児では散大筋が未発達のため2〜2.5mm程度と小さく、10代後半に最大となる。高齢者では交感神経機能低下のため縮瞳傾向を示す。正常径の個人差は2〜6mmと幅広い。

各反射の異常時に生じる自覚症状を以下に示す。

  • 対光反射異常:光照射時の瞳孔収縮不全。左右差を自覚することは少ない。
  • 調節障害:近くのものにピントが合いにくい(老視が最多原因)。
  • 角膜反射低下角膜知覚が鈍くなり、異物感が消失する。
  • VOR異常:頭部運動中に視界がぶれる振動視(oscillopsia)。
  • 涙液反射異常:流涙過多、食事中の流涙(「ワニの涙」)、または涙液減少。

医師が診察で確認する主要な反射異常所見を以下に示す。

RAPD

定義:swinging flashlight testで、光照射時に縮瞳ではなく散瞳が生じる状態(相対的瞳孔求心路障害)。

機序:患眼への光刺激が健眼より弱い信号しか脳幹に到達しないため、光刺激にもかかわらず散瞳が起こる。

代表疾患視神経炎外傷性視神経症、広範な網膜疾患。

対光近見反応解離

定義:対光反射が消失しているにもかかわらず輻凑反応が保たれている状態。

機序:毛様神経節の対光反射と調節反応の神経細胞比が3:97。EW核副交感線維の95%が毛様体筋(調節)へ、5%のみが瞳孔括約筋へ向かう。

代表疾患:Parinaud症候群、Argyll Robertson瞳孔、Adie症候群。

散大遅延(dilation lag)ホルネル症候群に特徴的な所見で、消灯5秒後の瞳孔不同が15秒後の不同より大きい。正常瞳孔は12〜15秒で最大散大となるが、散大遅延のある瞳孔は最大25秒を要する。5秒後と15秒後のフラッシュ写真比較で不同視の差が0.4mm超で陽性と判定する。

瞳孔エスケープ:持続光照射で一旦縮瞳した後に再散大する現象。網膜・視神経疾患側で出現し、中心視野欠損患者に多い。

橋性縮瞳:延髄傍正中網様体からEW核を抑制する上行性経路が障害されると、EW核が異常興奮して瞳孔径が1mm程度となる強い縮瞳を呈する。対光反射・近見反応は温存される。

Q RAPDがあるのに視力は正常ということはあるか?
A

甲状腺眼症性視神経症(DON)では、視力が6/6(1.0)に保たれていてもRAPDが陽性となる症例がある。EUGOGO調査ではDON確定例の45%にRAPDが認められ、50〜70%の症例で最高矯正視力(BCVA) 20/40以上が維持されていた1)。視力だけでなくRAPDの確認が重要である。

各反射異常を引き起こす代表的な原因疾患を整理する。

RAPD(相対的瞳孔求心路障害)の原因:

  • 視神経障害:視神経炎、外傷性視神経症、圧迫性視神経症が最多
  • 広範な網膜疾患網膜剥離など広範な障害では陽性となるが、黄斑円孔では陽性とならない
  • 甲状腺眼症性視神経症(DON):両側非対称例でRAPDが早期指標となる。EUGOGO調査では確定DON患者の45%にRAPD1)
  • AZOOR(急性帯状潜在性外層網膜症):検眼鏡所見が乏しくても陽性となりうる
  • 一過性RAPD:セロトニン症候群に伴う一過性RAPDの報告あり。セロトニンの自律神経過活動が視蓋前域への求心路入力に影響した可能性2)

対光近見反応解離の原因:

  • Argyll Robertson瞳孔:古典的には神経梅毒(脊髄癆)。近年は糖尿病・脳血管障害・脱髄に伴うことも増加。病巣は中脳背側(視蓋前域)
  • Adie強直瞳孔:特発性の毛様体神経節・短後毛様体神経の節後ニューロン変性。中等度散大・脱円・文節的な麻痺が特徴。低濃度ピロカルピンで虹彩炎等との鑑別が可能

ホルネル症候群の原因: 交感神経経路(視床下部→脊髄T1-T3→上頸神経節→瞳孔散大筋)のいずれかの障害による。軽度眼瞼下垂・散大遅延・顔面発汗異常を伴う。頭頸部疾患・縦隔内腫瘍・球後病変・先天性のものがある。

角膜反射異常の原因: 三叉神経病変、片側性眼疾患(神経栄養性角膜炎)、眼輪筋の衰弱。後頭蓋窩疾患(聴神経腫瘍・多発性硬化症・パーキンソン病・脳幹腫瘍・脊髄空洞症)でも生じる。

ベル現象消失の原因: 核上性麻痺(Steele-Richardson症候群・Parinaud症候群・二重上方視麻痺)では随意的挙上は不可だがベル現象は可能なことが多い。甲状腺眼症(下直筋拘束)・重症筋無力症眼窩吹き抜け骨折では消失する。

  • 交互対光反射検査(swinging flashlight test):半暗室でペンライトを2〜3秒ごとに左右交互に照射し、各眼の瞳孔径変化を観察する。RAPD検出において最も簡便かつ診断価値が高い。対光反射が微妙なときはペンライトではなく細隙灯顕微鏡が有用。
  • 逆RAPDテスト:片眼の瞳孔が動眼神経麻痺などで収縮不能の場合に使用する。反応可能な瞳孔のみで直接反応と共感性反応を比較する。
  • NDフィルターによるRADP定量化:健眼前に neutral density フィルターを置いてswinging flashlight testを行い、RAPDが消失するフィルター濃度で定量化する。治療効果判定にも応用できる。
Q swinging flashlight testを行う際のコツは?
A

部屋をやや暗め(半暗室)にし、光源は左右同じ角度(正面)から当てる。斜めや上方から照射すると直接光と間接光の差が生じ、誤判定の原因となる。各眼へ2〜3秒照射し、光を当てた際の瞳孔の動き(縮瞳か散瞳か)を観察する。

  • Iriscorder Dual C-10641:青色(470nm)と赤色(635nm)の2色刺激で、視細胞由来とipRGC由来の対光反射を両眼同時記録できる。
  • プロシオンP3000:光学的遠方視の瞳孔径を両眼開放下で同時測定する。3種類の照度設定が可能。
  • 量的瞳孔計(automated pupillometer):NPi-200(NeurOptics社)等で%PLR(対光反射収縮率)を客観的に測定する。重症患者の神経学的予後予測に応用されている5)

明るい部屋の照明を消し、薄暗い光の中で両瞳孔を観察する。消灯5秒後と15秒後のフラッシュ写真を比較し、不同視の差が0.4mmを超えればホルネル症候群陽性と判定する。赤外線ビデオグラフィーが最も感度が高い。

  • 人形の目現象(oculocephalic reflex):頭を左右に動かし、眼球が頭部運動を代償しない場合にキャッチアップ・サッカードが生じる。
  • 動的視力(dynamic visual acuity):頭部振動中に視力測定し、3行以上低下すれば異常と判定。
  • 温度刺激試験(caloric stimulation):外耳道への氷水注入で刺激側への持続的眼偏位を確認する。意識不明患者の橋機能評価に有用。

角膜反射は意識混濁・半昏睡患者における三叉神経知覚の評価に利用する。輻凑反応は固視目標を眼前に接近させて縮瞳相を確認し、その後遠方を見させて瞳孔が瞬時に戻ることで散瞳相を確認する。

各反射異常の治療は原因疾患に対して行うことが基本である。

  • RAPDの治療:原因疾患への対応が優先される。甲状腺眼症性視神経症(DON)ではメチルプレドニゾロンパルス療法(1g 3日間静注)→経口ステロイド漸減が行われる。パルス療法2日後に瞳孔反応の改善が得られた症例が報告されている1)
  • Argyll Robertson瞳孔の治療:梅毒の血清反応で原因を確認し、原因疾患に対して治療する。
  • Adie症候群:低濃度ピロカルピン(0.1%等)点眼で虹彩炎等との鑑別に利用する。治療的使用は限定的。
  • ホルネル症候群:原因精査が重要。頭頸部疾患・縦隔内腫瘍・球後病変などの原因疾患を治療する。
  • ベル麻痺における角膜保護:兎眼(lagophthalmos)に対する角膜保護が重要。人工涙液、眼帯、就寝時の眼軟膏使用などを行う。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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求心路:網膜視細胞(W細胞)→ 網膜神経節細胞 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体の手前で視覚路から分岐 → 中脳視蓋前域(olivary pretectal nucleus)

視蓋前域からの投射:一部は同側EW核、一部は後交連を経由して対側EW核へ投射する。ヒトでは交叉・非交叉比はほぼ1:1。

遠心路:EW核(副交感神経節前ニューロン) → 動眼神経 → 海綿静脈洞・上眼窩裂 → 毛様体神経節(シナプス) → 短毛様体神経 → 瞳孔括約筋(M3ムスカリン受容体)

EW核からの副交感神経線維の95%は毛様体筋(調節)へ、5%のみが瞳孔括約筋へ向かう。この比率が対光近見反応解離の発症機序に直結している。対光反射の潜時は十分に明るい刺激光で約200ミリ秒。黄斑部刺激が最も有効で、周辺部ほど反応が減弱する。

求心路:網膜 → 視索 → 外側膝状体 → 視覚皮質

近見反応のEW核への核上性線維は、対光反射の求心線維が通る視蓋前域・後交連よりも腹側を走行する。これにより視蓋前域障害で対光反射のみが障害され、近見反応は保たれる(対光近見反応解離)。

遠心路(縮瞳)は対光反射と共通。遠心路(調節)はEW核 → 動眼神経 → 毛様体神経節 → 短毛様体神経 → 毛様体筋収縮 → チン小帯弛緩 → 水晶体屈折力増加という経路をとる。

錐体・杆体を介した古典的視覚系とは別に、メラノプシンを視物質とする内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の存在が判明している。短波長の強い青色光刺激(470nm近傍)に対し、ゆっくりとした持続的な縮瞳をきたす。主として概日リズムの調整に関与し、対光反射制御機構にも関与する。

加齢に伴う水晶体混濁と老人性縮瞳により、短波長光の網膜到達量が減少する。これによりipRGC刺激量が低下し、対光反射にも影響する可能性が示唆されている4)。一方、メラノプシン機能は小児期から80歳代まで比較的安定しており、杆体・錐体密度の加齢性低下よりも耐性が高い4)

対光反射(古典系)

光受容:錐体・杆体による光感受。

特性:短い潜時・速い収縮速度・急速な再散大。

応用:視神経・網膜疾患の検出(RAPD)。

PLR(メラノプシン系)

光受容:ipRGCによる青色光感受(470nm)。

特性:長い潜時・遅い収縮速度・持続性。

応用:概日リズム調節・神経疾患バイオマーカー研究。

Q なぜ対光反射が消えても近見反応は残るのか?
A

EW核への副交感神経線維の95%は毛様体筋(調節)に向かい、瞳孔括約筋へ向かう線維は5%のみである。また毛様神経節の対光反射と調節反応に関わる神経細胞の比は3:97である。さらに近見反応の核上性線維は視蓋前域よりも腹側を走行するため、視蓋前域の病変では対光反射のみが障害される。


7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)

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PLRのパーキンソン病(PD)バイオマーカーとしての可能性

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Dawidziukら(2025)の11研究を含むシステマティックレビュー&メタ解析では、PD患者の対光反射における最大収縮速度(VMax)の効果量 -0.92(p<0.01)、収縮振幅(CAmp)-0.58(p<0.05)、収縮潜時(CL)0.46(p<0.05)と有意な異常が示された3)。PLRが早期PD検出の有望なバイオマーカーとなる可能性がある。

PD患者はipRGCにも影響を受ける可能性があり、波長別PLR測定でPD患者と健常者を区別できる可能性が示唆されている3)

量的瞳孔計による神経予後予測

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心停止後の標的体温管理(TTM)患者において、入院0〜24時間で測定した%PLRが高い群は3か月後の良好な神経学的転帰と有意に関連した(SMD 0.87; 95%CI 0.70-1.05; I²=0%)5)。ただしエビデンスの質は低い。

Fengら(2025)の12研究1530例のメタ解析では、qPLR(OR 24.50; 95%CI 13.08-45.86)はNPI(神経瞳孔指数; OR 15.55; 95%CI 7.92-30.55)よりも高い神経予後予測精度を示した(qPLRのAUC 0.89 vs NPI 0.66)6)

加齢による補償機構の存在も示唆されている。長期的な光環境への順応により、非視覚的光感受性が維持される可能性がある4)。子供から高齢者にかけてのメラノプシン機能の変化は、杆体・錐体の密度変化より緩やかであることが確認されている4)


  1. Gupta V, Das S, Mohan S, Chauhan U. RAPD as a clinical alert for early evidence of dysthyroid optic neuropathy. J Family Med Prim Care. 2022;11:370-375.
  2. Nichols J, Feldhus K. Neurological Insights: Transient Unilateral Relative Afferent Pupillary Defect in the Context of Serotonin Syndrome. Cureus. 2024;16(12):e75321.
  3. Dawidziuk A, Butters E, Lindegger DJ, et al. Can the Pupillary Light Reflex and Pupillary Unrest Be Used as Biomarkers of Parkinson’s Disease? A Systematic Review and Meta-Analysis. Diagnostics. 2025;15(9):1167.
  4. Eto T, Higuchi S. Review on age-related differences in non-visual effects of light: melatonin suppression, circadian phase shift and pupillary light reflex in children to older adults. J Physiol Anthropol. 2023;42:11.
  5. Kim JG, Shin H, Lim TH, et al. Efficacy of Quantitative Pupillary Light Reflex for Predicting Neurological Outcomes in Patients Treated with Targeted Temperature Management after Cardiac Arrest: A Systematic Review and Meta-Analysis. Medicina. 2022;58:804.
  6. Feng CS. Performance of the quantitative pupillary light reflex and neurological pupil index for predicting neurological outcomes in cardiac arrest patients: A systematic review and meta-analysis. Medicine. 2025;104(4):e41314.

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