RAPD
定義:swinging flashlight testで、光照射時に縮瞳ではなく散瞳が生じる状態(相対的瞳孔求心路障害)。
機序:患眼への光刺激が健眼より弱い信号しか脳幹に到達しないため、光刺激にもかかわらず散瞳が起こる。
代表疾患:視神経炎、外傷性視神経症、広範な網膜疾患。

反射とは、防御機能や調節機能に関わる不随意反応の総称である。眼に関連する反射は以下の9種に大別される。
瞳孔径は瞳孔括約筋(副交感神経支配)と瞳孔散大筋(交感神経支配)のバランスで決まる。両筋ともアドレナリン作動性とコリン作動性の二重支配を受ける。正常人の瞳孔は明室でほぼ一定のリズムで動揺(虹彩動揺 hippus)する。
瞳孔径に影響する主な因子を以下に示す。
| 因子 | 特記事項 |
|---|---|
| 年齢 | 乳児2〜2.5mm、10代後半が最大、高齢者で縮瞳傾向 |
| 個人差 | 正常範囲2〜6mm、室内平均4mm程度 |
| 生理的不同 | 正常人の20%、0.5mm程度の左右差は正常 |
| その他 | 屈折・調節・照度・音・色・日内変動・抗ヒスタミン薬など |
乳児では散大筋が未発達のため2〜2.5mm程度と小さく、10代後半に最大となる。高齢者では交感神経機能低下のため縮瞳傾向を示す。正常径の個人差は2〜6mmと幅広い。
各反射の異常時に生じる自覚症状を以下に示す。
医師が診察で確認する主要な反射異常所見を以下に示す。
RAPD
定義:swinging flashlight testで、光照射時に縮瞳ではなく散瞳が生じる状態(相対的瞳孔求心路障害)。
機序:患眼への光刺激が健眼より弱い信号しか脳幹に到達しないため、光刺激にもかかわらず散瞳が起こる。
代表疾患:視神経炎、外傷性視神経症、広範な網膜疾患。
対光近見反応解離
定義:対光反射が消失しているにもかかわらず輻凑反応が保たれている状態。
機序:毛様神経節の対光反射と調節反応の神経細胞比が3:97。EW核副交感線維の95%が毛様体筋(調節)へ、5%のみが瞳孔括約筋へ向かう。
代表疾患:Parinaud症候群、Argyll Robertson瞳孔、Adie症候群。
散大遅延(dilation lag):ホルネル症候群に特徴的な所見で、消灯5秒後の瞳孔不同が15秒後の不同より大きい。正常瞳孔は12〜15秒で最大散大となるが、散大遅延のある瞳孔は最大25秒を要する。5秒後と15秒後のフラッシュ写真比較で不同視の差が0.4mm超で陽性と判定する。
瞳孔エスケープ:持続光照射で一旦縮瞳した後に再散大する現象。網膜・視神経疾患側で出現し、中心視野欠損患者に多い。
橋性縮瞳:延髄傍正中網様体からEW核を抑制する上行性経路が障害されると、EW核が異常興奮して瞳孔径が1mm程度となる強い縮瞳を呈する。対光反射・近見反応は温存される。
甲状腺眼症性視神経症(DON)では、視力が6/6(1.0)に保たれていてもRAPDが陽性となる症例がある。EUGOGO調査ではDON確定例の45%にRAPDが認められ、50〜70%の症例で最高矯正視力(BCVA) 20/40以上が維持されていた1)。視力だけでなくRAPDの確認が重要である。
各反射異常を引き起こす代表的な原因疾患を整理する。
RAPD(相対的瞳孔求心路障害)の原因:
対光近見反応解離の原因:
ホルネル症候群の原因: 交感神経経路(視床下部→脊髄T1-T3→上頸神経節→瞳孔散大筋)のいずれかの障害による。軽度眼瞼下垂・散大遅延・顔面発汗異常を伴う。頭頸部疾患・縦隔内腫瘍・球後病変・先天性のものがある。
角膜反射異常の原因: 三叉神経病変、片側性眼疾患(神経栄養性角膜炎)、眼輪筋の衰弱。後頭蓋窩疾患(聴神経腫瘍・多発性硬化症・パーキンソン病・脳幹腫瘍・脊髄空洞症)でも生じる。
ベル現象消失の原因: 核上性麻痺(Steele-Richardson症候群・Parinaud症候群・二重上方視麻痺)では随意的挙上は不可だがベル現象は可能なことが多い。甲状腺眼症(下直筋拘束)・重症筋無力症・眼窩底吹き抜け骨折では消失する。
部屋をやや暗め(半暗室)にし、光源は左右同じ角度(正面)から当てる。斜めや上方から照射すると直接光と間接光の差が生じ、誤判定の原因となる。各眼へ2〜3秒照射し、光を当てた際の瞳孔の動き(縮瞳か散瞳か)を観察する。
明るい部屋の照明を消し、薄暗い光の中で両瞳孔を観察する。消灯5秒後と15秒後のフラッシュ写真を比較し、不同視の差が0.4mmを超えればホルネル症候群陽性と判定する。赤外線ビデオグラフィーが最も感度が高い。
角膜反射は意識混濁・半昏睡患者における三叉神経知覚の評価に利用する。輻凑反応は固視目標を眼前に接近させて縮瞳相を確認し、その後遠方を見させて瞳孔が瞬時に戻ることで散瞳相を確認する。
各反射異常の治療は原因疾患に対して行うことが基本である。
求心路:網膜視細胞(W細胞)→ 網膜神経節細胞 → 視神経 → 視交叉 → 視索 → 外側膝状体の手前で視覚路から分岐 → 中脳視蓋前域(olivary pretectal nucleus)
視蓋前域からの投射:一部は同側EW核、一部は後交連を経由して対側EW核へ投射する。ヒトでは交叉・非交叉比はほぼ1:1。
遠心路:EW核(副交感神経節前ニューロン) → 動眼神経 → 海綿静脈洞・上眼窩裂 → 毛様体神経節(シナプス) → 短毛様体神経 → 瞳孔括約筋(M3ムスカリン受容体)
EW核からの副交感神経線維の95%は毛様体筋(調節)へ、5%のみが瞳孔括約筋へ向かう。この比率が対光近見反応解離の発症機序に直結している。対光反射の潜時は十分に明るい刺激光で約200ミリ秒。黄斑部刺激が最も有効で、周辺部ほど反応が減弱する。
求心路:網膜 → 視索 → 外側膝状体 → 視覚皮質
近見反応のEW核への核上性線維は、対光反射の求心線維が通る視蓋前域・後交連よりも腹側を走行する。これにより視蓋前域障害で対光反射のみが障害され、近見反応は保たれる(対光近見反応解離)。
遠心路(縮瞳)は対光反射と共通。遠心路(調節)はEW核 → 動眼神経 → 毛様体神経節 → 短毛様体神経 → 毛様体筋収縮 → チン小帯弛緩 → 水晶体屈折力増加という経路をとる。
錐体・杆体を介した古典的視覚系とは別に、メラノプシンを視物質とする内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)の存在が判明している。短波長の強い青色光刺激(470nm近傍)に対し、ゆっくりとした持続的な縮瞳をきたす。主として概日リズムの調整に関与し、対光反射制御機構にも関与する。
加齢に伴う水晶体混濁と老人性縮瞳により、短波長光の網膜到達量が減少する。これによりipRGC刺激量が低下し、対光反射にも影響する可能性が示唆されている4)。一方、メラノプシン機能は小児期から80歳代まで比較的安定しており、杆体・錐体密度の加齢性低下よりも耐性が高い4)。
対光反射(古典系)
光受容:錐体・杆体による光感受。
特性:短い潜時・速い収縮速度・急速な再散大。
応用:視神経・網膜疾患の検出(RAPD)。
PLR(メラノプシン系)
光受容:ipRGCによる青色光感受(470nm)。
特性:長い潜時・遅い収縮速度・持続性。
応用:概日リズム調節・神経疾患バイオマーカー研究。
EW核への副交感神経線維の95%は毛様体筋(調節)に向かい、瞳孔括約筋へ向かう線維は5%のみである。また毛様神経節の対光反射と調節反応に関わる神経細胞の比は3:97である。さらに近見反応の核上性線維は視蓋前域よりも腹側を走行するため、視蓋前域の病変では対光反射のみが障害される。
Dawidziukら(2025)の11研究を含むシステマティックレビュー&メタ解析では、PD患者の対光反射における最大収縮速度(VMax)の効果量 -0.92(p<0.01)、収縮振幅(CAmp)-0.58(p<0.05)、収縮潜時(CL)0.46(p<0.05)と有意な異常が示された3)。PLRが早期PD検出の有望なバイオマーカーとなる可能性がある。
PD患者はipRGCにも影響を受ける可能性があり、波長別PLR測定でPD患者と健常者を区別できる可能性が示唆されている3)。
心停止後の標的体温管理(TTM)患者において、入院0〜24時間で測定した%PLRが高い群は3か月後の良好な神経学的転帰と有意に関連した(SMD 0.87; 95%CI 0.70-1.05; I²=0%)5)。ただしエビデンスの質は低い。
Fengら(2025)の12研究1530例のメタ解析では、qPLR(OR 24.50; 95%CI 13.08-45.86)はNPI(神経瞳孔指数; OR 15.55; 95%CI 7.92-30.55)よりも高い神経予後予測精度を示した(qPLRのAUC 0.89 vs NPI 0.66)6)。
加齢による補償機構の存在も示唆されている。長期的な光環境への順応により、非視覚的光感受性が維持される可能性がある4)。子供から高齢者にかけてのメラノプシン機能の変化は、杆体・錐体の密度変化より緩やかであることが確認されている4)。