病態・機序
成分:カルシウム・ヒアリン・タンパク質の細胞外沈着物。
機序:軸索流の障害による細胞外沈着→ドルーゼン形成・軸索変性→乳頭隆起。
分類:表在型(乳頭表面に黄白色結節)と埋没型(乳頭浮腫様外観)の2型。
経過:先天性だが幼児期には目立たず、成人後に発見されることが多い。

仮性乳頭浮腫(偽乳頭浮腫、pseudopapilledema)は、視神経乳頭が異常に隆起して見えるにもかかわらず、網膜神経線維層(RNFL)の浮腫を伴わない状態である。視神経乳頭の形態異常であり、実際には浮腫はない。
真の乳頭浮腫(papilledema)は頭蓋内圧亢進を反映し、視力喪失・神経障害・死に至る疾患の初発徴候となりうるため、仮性乳頭浮腫との鑑別が臨床上きわめて重要である。乳頭浮腫が疑われた患者には腰椎穿刺・MRI・広範な検査が行われるが、仮性乳頭浮腫を正確に認識することで不要な侵襲的検査を回避できる。
仮性乳頭浮腫の主な原因を以下に示す。
乳頭ドルーゼンは視神経乳頭内の石灰化した粒であり、表在型と埋没型に分類される。表在型は乳頭表面に黄白色の結節として観察される。埋没型は乳頭浮腫状を呈するため鑑別が困難である。性差はなく、両眼性が多い。
仮性乳頭浮腫は視神経乳頭の形態異常であり、それ自体に対する治療は不要で予後良好である。ただし乳頭ドルーゼンは慢性進行性であり、年1.6%程度の視野狭窄悪化が報告されているため、定期的な眼科受診と視野検査が重要である。

真の乳頭浮腫では、進行性頭痛・悪心・嘔吐・一過性視力障害(TVOs)・拍動性耳鳴・両眼性複視などの随伴症状を伴う点が対照的である。
仮性乳頭浮腫の眼底所見は以下の通りである。
仮性乳頭浮腫と真の乳頭浮腫初期の鑑別点をまとめる。
| 所見 | 仮性乳頭浮腫 | うっ血乳頭初期 |
|---|---|---|
| 乳頭色調 | 黄色 | 赤色 |
| 生理的陥凹 | ない | 保存 |
| 血管異常 | 大血管系(3分岐・ループ) | 小血管系(毛細血管拡張) |
| 神経線維層 | 透明 | 混濁 |
| 静脈自発拍動 | あり | なし※ |
| 出血 | まれ | 神経線維層出血 |
| ドルーゼン | ときどき | なし |
※正常人でも20〜30%に欠如
多くの場合は長期にわたって視力が保たれる。しかし乳頭ドルーゼンのある眼の71〜75%で周辺視野欠損が認められ、まれに突然の視力低下を生じることもある。無症状でも定期的な視野検査が重要である。
乳頭ドルーゼンの主要な病態と関連疾患を示す。
病態・機序
成分:カルシウム・ヒアリン・タンパク質の細胞外沈着物。
機序:軸索流の障害による細胞外沈着→ドルーゼン形成・軸索変性→乳頭隆起。
分類:表在型(乳頭表面に黄白色結節)と埋没型(乳頭浮腫様外観)の2型。
経過:先天性だが幼児期には目立たず、成人後に発見されることが多い。
関連症候群
確定診断の決め手は、経過観察で視神経乳頭に変化がみられないことである。初診時は以下の検査を組み合わせて鑑別を進める。
OCTは仮性乳頭浮腫の診断において中核的役割を担う1)。
網膜神経線維層解析の鑑別精度については、7研究・510名のシステマティックレビューでAUC 0.78〜0.91、感度33〜91%、特異度65〜100%と報告されている2)。鼻側象限が最も鑑別精度が高く、側頭側が最も低い。真の乳頭浮腫では全象限で網膜神経線維層が正常ということはなかったが、仮性乳頭浮腫の32.3%は全象限正常網膜神経線維層を示した2)。
OCTの形状分析(V-Flat型 vs 前方変形パターン)・ひだの検出・網膜神経線維層解析・FA・超音波・腰椎穿刺など複数の検査を組み合わせる。眼底所見では乳頭周囲の血管の見え方(明瞭 vs 不明瞭)が最重要な鑑別特徴となる。
偽乳頭浮腫は視神経乳頭の形態異常であり、自覚症状も合併症もない場合は治療不要で予後良好である。管理は病因によって異なる。
乳頭ドルーゼンは慢性進行性疾患であり、年1.6%程度の視野狭窄悪化が報告されている。脈絡膜新生血管を合併することもあるため、眼科専門医による定期的な形態変化確認と視野検査が必要である。受診間隔は眼科医の指示に従う。
軸索流の障害によりカルシウム・ヒアリン・タンパク質が細胞外に沈着し、ドルーゼンが形成される。ドルーゼンは視神経線維への圧迫・視神経乳頭の虚血・軸索流障害を介して視野障害を引き起こす。ドルーゼンの大きさや局在と視野欠損のパターンは必ずしも一致しない。
正常数の神経節細胞・軸索が小さな乳頭・狭い強膜管に収束することで境界不明瞭化が生じる。
頭蓋内圧亢進による真の乳頭浮腫では、くも膜下腔から視神経周囲への圧力伝達が生じ、2つの主効果として軸索流停滞と篩板・乳頭周囲組織の前方変形が起こる。これがOCTでW型・S型・D型の前方変形パターンとして描出される。仮性乳頭浮腫はV-Flat型(正常型)を示すが、乳頭浮腫患者の約1/3もV-Flat型を示すことがあり、単独での判断には注意を要する1)。
乳頭浮腫では乳頭周囲皺(PPW)・外層網膜ひだ(ORF)・内層網膜ひだ(IRF)・脈絡膜ひだ(CF)の4種類のひだが生じる。IIH患者の73%の少なくとも片眼でひだが検出されており(写真では43%)、ひだの存在は乳頭浮腫を強く示唆し仮性乳頭浮腫を除外する1)。脈絡膜ひだは乳頭浮腫消退後も年単位で持続することがある。
高度眼球陥凹→視神経が後退した眼球の後極を圧迫→後部強膜平坦化・乳頭の硝子体腔内突出という機械的仮性乳頭浮腫の機序が報告されている。ERCC6遺伝子の病原性変異を確認した兄妹2例において、腰椎穿刺(髄液圧22.5 cm H₂O・24.2 cm H₂O)で正常髄液圧が確認され真の乳頭浮腫が除外されている。通常の仮性乳頭浮腫(狭い強膜管による前篩板軸索流停滞)とは異なる機械的機序である3)。
Eldiniaら(2025)による7研究・510名のシステマティックレビューでは、カスタムOCTパラメータ(Pardon 2019)の有用性が示された2)。MATLABプログラムによるカスタムアルゴリズムで乳頭周囲組織厚・視神経乳頭リム組織厚・ONH変位を測定したところ、感度が従来法の33%から57%へ(乳頭浮腫)、6.7%から53%へ(軽度乳頭浮腫)と改善した。Bruch膜開口部を基準とした最小リム幅(minimum rim width)は従来の円形網膜神経線維層スキャンでは測定されない新たな指標として注目されている。また小児では感度・特異度がやや低く(感度83%・特異度76%)、成人とは異なるアプローチが必要である2)。
Sibonyら(2021)は、30°内転位で乳頭周囲皺(PPW)が顕在化する内転位ストレステストを報告した1)。乳頭浮腫ではtilt angle 8°〜20°、正常・乳頭ドルーゼン(ODD)・NAIONでは2°〜4°と有意な差が認められ、一次眼位で認めないひだが内転位でのみ検出されるケースも存在する。仮性乳頭浮腫との鑑別感度を向上させる手法として期待される。
仮性乳頭浮腫の眼は通常血管密度が低く、OCTA(光干渉断層血管撮影)が乳頭浮腫との鑑別に役立つ可能性がある。また乳頭ドルーゼンと乳頭浮腫の合併頻度について、最近の2研究では成人19%・小児48%と高頻度が報告されているが、OCT診断基準が推奨基準を満たしておらず過大評価の可能性も指摘されている1)。
Sibony PA, Kupersmith MJ, Kardon RH. Optical Coherence Tomography Neuro-Toolbox for the Diagnosis and Management of Papilledema, Optic Disc Edema, and Pseudopapilledema. J Neuroophthalmol. 2021;41(1):116-131.
Eldinia LR, Badjrai RA, Anandi L, et al. The reliability of retinal nerve fiber layer analysis to differentiate between papilledema and pseudopapilledema: A systematic review. Indian J Ophthalmol. 2025;73(1):1-10.
Brodsky MC, Renaud DL. Pseudopapilledema in Cockayne syndrome. Am J Ophthalmol Case Rep. 2021;23:101141.