ADO(優性型)
発症時期:青年期〜成人期。比較的軽症。
別名:Albers-Schönberg病。CLCN7変異が主因。
主な問題:骨折、難聴、顔面神経麻痺、骨髄炎。

大理石骨病(Osteopetrosis)は、破骨細胞の形成・機能障害により骨のびまん性硬化をきたす遺伝性代謝性骨疾患群である。1904年にドイツの放射線科医Albers-Schönbergが初めて報告し、当初「marble bone disease」と呼ばれた。1926年に「osteopetrosis」と命名された。眼症状は主に頭蓋骨・眼窩骨の過成長に起因する。
ADO(優性型)
発症時期:青年期〜成人期。比較的軽症。
別名:Albers-Schönberg病。CLCN7変異が主因。
主な問題:骨折、難聴、顔面神経麻痺、骨髄炎。
ARO(劣性型)
発症時期:出生直後。重症型。
遺伝子:TCIRG1(約50%)、CLCN7、SNX10、OSTM1等。
主な問題:汎血球減少、肝脾腫、視神経萎縮、眼振。未治療では通常10年以内に致死。4)
その他の病型
主に常染色体優性型(ADO)、常染色体劣性型(ARO)、X連鎖型の3型に大別される。さらに中間型(小児期発症)、尿細管性アシドーシスを伴うカルボニックアンヒドラーゼII欠損症などのサブタイプがある。ADOは比較的軽症だが、AROは重症で早期治療介入が必要である。
破骨細胞の骨吸収障害により、未熟な骨組織が神経管(視神経管・上眼窩裂・頭蓋底孔)を圧迫する。視神経管が徐々に狭小化し、視神経への機械的圧迫が続くことで圧迫性視神経症が生じ、放置すると視神経萎縮・失明に至る。詳細は「病態生理学・詳細な発症機序」の項を参照。
大理石骨病は破骨細胞の形成・機能に関与する遺伝子変異を原因とし、現在23遺伝子が同定されている。遺伝形式や責任遺伝子により、治療の適否が大きく異なる。
大理石骨病の原因遺伝子は「破骨細胞が形成されるが機能しない型(osteoclast-rich型)」と「破骨細胞そのものが形成されない型(osteoclast-poor型)」に大別される。
| 遺伝子 | 型 | ARO中の頻度 |
|---|---|---|
| TCIRG1 | osteoclast-rich | 約50%4) |
| CLCN7 | osteoclast-rich(ADO-2の主因でもある) | 13〜16%3) |
| SNX10 | osteoclast-rich | 約4%1) |
| OSTM1 | osteoclast-rich | 2〜6%3) |
| TNFSF11(RANKL) | osteoclast-poor | 少数2) |
| TNFRSF11A(RANK) | osteoclast-poor | 少数3) |
早期診断と遺伝子型の同定が治療方針の決定に直結する。
全エクソーム解析(WES)による原因遺伝子同定は、治療方針決定に不可欠である。2,3,4)
汎血球減少(貧血・血小板減少・白血球異常)、ALP上昇、LDH上昇が認められる。1,3,4)
先天性サイトメガロウイルス感染は肝脾腫・汎血球減少・視神経異常が類似するため注意を要する。確定診断には遺伝子検査が必要である。4)
原因遺伝子によってHSCTの適応が異なるためである。RANKL(TNFSF11)変異やOSTM1変異ではHSCTが無効または有害であり、遺伝子型を確認せずに移植を行うと不要なリスクを負わせることになる。全エクソーム解析で原因遺伝子を同定し、治療方針を決定することが重要である。
乳児悪性型ARO(IMO)に対する唯一の根治的治療である。早期施行が視力維持・回復の可能性を高める。
HSCTが有効でない場合:
TNFSF11(RANKL)遺伝子変異による大理石骨病では、RANKLリコンビナント蛋白質の投与が治療の選択肢となる。HSCTが無効なこの病型では、分子診断に基づく個別化治療が求められる。
対症療法として、視神経管の骨組織を外科的に開放する手術。乳児悪性型で早期に施行することで視力悪化を食い止めた報告がある。神経症状の進行抑制のために早期診断が重要である。
そうではない。HSCTは乳児悪性型(ARO/IMO)に対して有効だが、RANKL(TNFSF11)変異やOSTM1変異など一部の遺伝子型では無効である。RANKL変異例に対してはRANKLリコンビナント蛋白質投与が選択肢となる。治療開始前の遺伝子診断が不可欠である。
大理石骨病の基本的な病態は、破骨細胞の形成・機能障害による骨吸収不全である。吸収されない欠陥骨組織が蓄積し、脆く過密な骨構造をきたす。骨髄腔が骨に侵食されると造血スペースが減少し、肝脾での髄外造血が生じる(肝脾腫の原因)。6)
osteoclast-rich型
主な原因遺伝子:TCIRG1、CLCN7、OSTM1、SNX10等。
機序:破骨細胞は存在するが骨吸収が機能しない。
TCIRG1:V-ATPase a3サブユニットの障害→吸収腔の酸性化不全→骨吸収不能。3)
CLCN7:Cl⁻/H⁺交換機能障害→TCIRG1による水素イオン輸送との協調が失われる。3)
osteoclast-poor型
主な原因遺伝子:TNFSF11(RANKL)、TNFRSF11A(RANK)。
機序:破骨細胞の分化・活性化自体が障害される。
RANKL:破骨細胞分化・活性化に必須の成長因子。受容体RANKの他、LGR4にも結合しGSK3-β経路を介して破骨細胞分化を抑制する。2)
治療上の意義:HSCTが無効。RANKLリコンビナント蛋白質が治療選択肢となる。
骨吸収障害による未熟骨の蓄積が神経管を狭小化させることが根本的な原因である。
胎児・乳児期の骨発達において、視神経管・上眼窩裂などの神経が通る孔は、破骨細胞による骨吸収で適切なサイズに形成・維持される。破骨細胞が機能しないと未熟な骨組織が吸収されずに蓄積し、これらの孔が徐々に狭小化する。視神経管が狭くなると視神経が圧迫され、圧迫性視神経症から視神経萎縮・失明に至る。
自家造血幹細胞遺伝子治療が、同種HSCTの代替として注目されている。移植前処置による合併症やGVHD(移植片対宿主病)のリスクを回避できる可能性がある。4)
Xianら(2020)は大理石骨病iPSCから遺伝子修正破骨細胞の生成に成功した。Moscatelliら(2020)はIMOの遺伝子治療の前臨床研究レビューにおいて、表現型逆転の概念実証を示した。4)
現在23の責任遺伝子が同定されているが、新規変異の報告が続いている。
Zhou T, Zeng C, Xi Q, et al. SNX10 gene mutation in infantile malignant osteopetrosis: A case report and literature review. J Cent South Univ (Med Sci). 2021;46(1):108-112.
Lertwilaiwittaya P, Suktitipat B, Khongthon P, et al. Identification of novel mutation in RANKL by whole-exome sequencing in a Thai family with osteopetrosis; a case report and review of RANKL osteopetrosis. Mol Genet Genomic Med. 2021;9(8):e1727.
Liang H, Li N, Yao R, et al. Clinical and molecular characterization of five Chinese patients with autosomal recessive osteopetrosis. Mol Genet Genomic Med. 2021;9(11):e1815.
Jin X, Wang W, Pan Z, et al. Osteopetrosis misdiagnosed as congenital cytomegalovirus infection: A case report and literature review. Medicine. 2025;104(45):e45583.
Lu K, Cheng B, Shi Q, et al. Anterior cruciate ligament rupture in a patient with Albers-Schonberg disease. BMC Musculoskelet Disord. 2022;23(1):719.
Khsiba A, Nasr S, Hamzaoui L, et al. Osteopetrosis: a rare case of portal hypertension. Future Sci OA. 2022;8(10):FSO817.