眼窩炎症型

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)
ひとめでわかるポイント
Section titled “ひとめでわかるポイント”1. 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)とは
Section titled “1. 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)とは”好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EGPA)は、喘息と好酸球増多を伴う小~中型血管の壊死性血管炎である。1951年にChurgとStraussが初めて報告した。旧称はチャーグ・ストラウス症候群である。
EGPAは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)および多発血管炎性肉芽腫症(GPA)とともに、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)に分類される。ただし他のAAVとは臨床的・治療的に相違があり、米国リウマチ学会(ACR)のガイドラインでは個別に分類されている。
推定年間罹患率は100万人あたり4例である。有病率は100万人あたり18例と見積もられている。喘息患者における年間罹患率は100万人あたり約67例に上昇する。診断時の平均年齢は38~54歳であり、顕著な性差や民族差はない。小児での発症は極めて稀であるが、発症した場合はより重篤な経過をたどり、肺病変や心臓病変の頻度が高い2)。
EGPAは喘息と好酸球増多を特徴とし、好酸球による組織障害が病態の中心を占める点で他のAAVと異なる。ANCAの陽性率も約40%と多発血管炎性肉芽腫症やMPAより低い。治療選択にも相違があり、抗IL-5抗体メポリズマブがEGPAに特異的に使用される。
2. 主な症状と臨床所見
Section titled “2. 主な症状と臨床所見”EGPAの臨床経過は3つの病相に分けられる。
- 前駆期の症状:成人発症の喘息が最も一般的であり、EGPAの発症に中央値で5~9年先行する。鼻副鼻腔炎やポリープ症などのアレルギー症状を伴う。
- 全身症状:発熱、体重減少、倦怠感が喘息とともに出現する。
- 神経症状:四肢のしびれ・脱力が多く、下垂足や下垂手を伴う多発単神経炎として現れる。
- 眼症状:一過性黒内障や急激な視力低下がみられることがある。眼症状は喘息の診断から平均6年後に出現する。
臨床所見(医師が診察で確認する所見)
Section titled “臨床所見(医師が診察で確認する所見)”成人発症の喘息は90%以上の患者で認められる。神経障害は患者の約70%に達する。上気道症状(鼻ポリープ、鼻炎、中耳炎、顔面神経麻痺など)は最大96%の患者に出現する。
1984年にLanhamらが以下の3病相を提唱した。
- 前駆期:喘息とアレルギー性鼻炎が中心である。
- 好酸球期:末梢血および組織の好酸球が増加し、臓器障害を引き起こす。
- 血管炎期:小血管の壊死性血管炎が生じ、多臓器に障害が波及する。
眼所見は患者の6~20%に認められる。主に以下の2つのパターンに分類される。
虚血性血管炎型
網膜中央動脈閉塞症(CRAO):EGPAで最も多い眼症状である。
虚血性視神経症(ION):急性の視力低下を引き起こす。
一過性黒内障:一過性の視力喪失を呈する。
ANCA状態:陽性と関連する傾向がある。
ただしANCA状態と眼症状の相関は必ずしも一貫しておらず、ANCA陰性患者でもCRAOが報告されている。
全身の臓器病変
Section titled “全身の臓器病変”- 下気道:好酸球性肺炎、末梢性結節状陰影、肺胞出血、気管支拡張症
- 心臓:心内膜炎、心外膜炎、不整脈、弁膜症。完全房室ブロックによるAdams-Stokes症候群の報告もある4)。
- 腎臓:微小免疫型巣状分節性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎
- 皮膚:網状皮斑、触知可能な紫斑、結節
- 消化器:腹痛、出血
縦断的研究の集計によると、眼所見は患者の6~20%に認められる。CRAOが最も多く、次いで虚血性視神経症が報告されている。眼症状は喘息の診断から平均6年後に出現するため、疑わしい症状が現れた場合はベースラインの眼科検査が推奨される。
3. 原因とリスク要因
Section titled “3. 原因とリスク要因”EGPAの正確な病因は不明である。他の自己免疫性血管炎と同様に、環境因子と遺伝的素因の複合作用が示唆されている。
- アレルゲン・感染・ワクチン・薬剤への曝露:発症の契機となりうる。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:EGPA発症との関連が示唆されているが、ステロイド減量に伴い潜在していたEGPAが顕在化した可能性も指摘されている。
- デュピルマブ:IL-4/IL-13受容体阻害薬であるデュピルマブの使用後にEGPAが発症・増悪した症例が報告されている。欧州医薬品庁のデータベースでは、2022年3月までに61例のEGPA報告があった1)。
2018年のゲノムワイド関連解析(GWAS)により、MPO-ANCA陽性とMPO-ANCA陰性のEGPAでは異なる遺伝的関連が明らかになった。この知見は、ANCAの状態によって臨床像が異なる理由の一端を説明する。
ロイコトリエン受容体拮抗薬の使用とEGPA発症の関連が報告されているが、薬剤自体が原因というよりも、ステロイド減量により潜在していたEGPAが顕在化した可能性が高いとされる。また、デュピルマブ使用後にEGPAの発症や増悪が報告されているが、因果関係は確立されていない1)。
4. 診断と検査方法
Section titled “4. 診断と検査方法”2022年ACR/EULAR分類基準
Section titled “2022年ACR/EULAR分類基準”2022年のACR/EULARガイドラインでは、以下のスコアリングシステムに基づき6点以上でEGPAに分類される。
EGPAの分類基準スコアを以下に示す。
| 基準 | スコア |
|---|---|
| 閉塞性気道疾患 | +3 |
| 鼻ポリープ | +3 |
| 多発単神経炎 | +1 |
| 血中好酸球 ≥ 1×10⁹/L | +5 |
| 血管外好酸球主体炎症 | +2 |
| cANCAまたは抗PR3抗体陽性 | -3 |
| 血尿 | -1 |
検証データセットでの感度は85%(95%CI: 77-91%)、特異度は99%(95%CI: 98-100%)であった。
- 炎症マーカー:CRP・ESRの上昇
- 好酸球:末梢血好酸球1,500/mm³以上または10%以上
- IgE:上昇が診断の補助となる
- ANCA:MPO-ANCA(p-ANCA)が陽性となることがある。約40%の患者で陽性。
- エオタキシン-3:感度87.5%、特異度98.6%であり、疾患活動性の指標としても有用。
- 胸部X線:遊走性浸潤影がEGPAの特徴的所見である。
- 高分解能CT:すりガラス影(86%)、気管支拡張症・気管支壁肥厚(66%)、末梢性結節状陰影(25%)。
- 心エコー:心臓病変が疑われる場合に施行する。
- 下垂体MRI:稀な中枢神経合併症として下垂体炎の評価に用いられる3)。
生検の主要所見は好酸球浸潤である。以下の所見が特徴的である。
- フィブリノイド壊死:血管壁の壊死性変化
- 肉芽腫形成:柵状に並ぶ巨細胞を伴い、血管外にも認められる(73%の症例)
- 内弾性板の断裂:血管壁構造の破壊を反映する
臓器により組織像は異なり、末梢神経や腎臓の病変では好酸球浸潤を伴わないことが多い。
以下の疾患を除外する必要がある。
- 寄生虫感染症、薬物アレルギー
- ホジキンリンパ腫などの血液悪性腫瘍
- 急性・慢性好酸球性肺炎
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
- 特発性好酸球増多症候群(HES)
- IgG4関連疾患
- 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)
5. 標準的な治療法
Section titled “5. 標準的な治療法”EGPAの治療は寛解導入療法に続く維持療法が基本アルゴリズムである。
フランス血管炎研究グループが開発した5因子スコア(Five Factor Score: FFS)により、重症度を評価する。年齢、クレアチニン値、臓器病変などを考慮して重症・非重症を分類する。
寛解導入療法
Section titled “寛解導入療法”ANCA関連血管炎の治療原則として、副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬の併用で治療を開始する。
- 非重症例(FFS 0):グルココルチコイド単独で開始する。
- 重症例(FFS ≥ 1):グルココルチコイドとシクロホスファミドの併用で開始する。
維持療法・ステロイド減量
Section titled “維持療法・ステロイド減量”- アザチオプリン・メトトレキサート:寛解維持に用いられる。
- リツキシマブ:抗CD20モノクローナル抗体であり、B細胞を枯渇させる。本邦でも初発例を含む高活動性患者や既存治療で効果不十分な患者に使用されている。ある研究では治療6か月までに83%の患者で改善が認められた。ANCA陽性患者の80%、ANCA陰性患者の38%が寛解を達成した。
メポリズマブ
Section titled “メポリズマブ”抗IL-5抗体であるメポリズマブは、好酸球の増殖・活性化・生存を抑制する。MIRRA試験(2017年)では、メポリズマブ+漸減ステロイドの併用がプラセボと比較し累積寛解期間を有意に延長した。これによりメポリズマブはEGPAに対する初のFDA承認薬となった。ANCA陰性EGPAに対する優れた治療法として推奨されている。
心臓緊急病変への対応
Section titled “心臓緊急病変への対応”完全房室ブロックを呈する重症心臓病変では、一時的ペーシングと高用量メチルプレドニゾロンのパルス療法を同時に開始する。その後メポリズマブへの移行が報告されている4)。
メポリズマブは好酸球を標的とし、ANCA陰性EGPAに対する有効性が高い。一方、リツキシマブはB細胞を標的とし、ANCA陽性EGPAで高い寛解率(80%)を示す。ANCAの状態を考慮し、個別に治療選択を行うことが重要である。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
6. 病態生理学・詳細な発症機序
Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”好酸球を中心とした免疫応答
Section titled “好酸球を中心とした免疫応答”EGPAの病態はT細胞のTh2型への分化促進を基盤とする。炎症性サイトカイン(IL-4、IL-13、IL-5)が増加し、好酸球の動員・活性化・アポトーシス抑制が生じる。
活性化された好酸球は以下の細胞毒性顆粒を放出し、組織障害を引き起こす。
- 好酸球塩基性タンパク(MBP):直接的な組織傷害を引き起こす。
- 好酸球由来神経毒:神経組織の障害に関与する。
- 好酸球陽イオンタンパク(ECP):広範な細胞毒性を有する。
好酸球によるIL-25の産生がこのプロセスをさらに悪化させ、組織破壊において重要な役割を果たす。
ANCA陽性とANCA陰性の病態の違い
Section titled “ANCA陽性とANCA陰性の病態の違い”ANCA陰性EGPAはTh2駆動型の免疫応答と好酸球介在性炎症が主体であり、心筋障害や好酸球性肺炎を起こしやすい3)。一方、ANCA陽性EGPAでは古典的なAAV型の血管炎が前面に出て、末梢神経障害や糸球体腎炎を呈しやすい。
心臓病変の機序
Section titled “心臓病変の機序”活性化好酸球が心筋・伝導系に浸潤し、MBPやECPなどの細胞毒性タンパクを放出する。これにより心筋壊死・浮腫・動脈炎が生じ、伝導障害や心不全に至る4)。
血栓塞栓症の機序
Section titled “血栓塞栓症の機序”EGPAにおける動静脈血栓塞栓症のリスク増大には、好酸球を介した血管内皮障害、線溶活性の低下、好酸球細胞外トラップ(EET)による免疫血栓形成が関与するとされている2)。
7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)
Section titled “7. 最新の研究と今後の展望(研究段階の報告)”デュピルマブとEGPA
Section titled “デュピルマブとEGPA”デュピルマブ(IL-4受容体α鎖阻害薬)は喘息や鼻ポリープの治療に使用されるが、使用後にEGPAの発症・増悪が報告されている。
Kaiら(2023)は、デュピルマブ開始11か月後に大動脈周囲炎を伴うEGPAを発症した67歳女性を報告した。メポリズマブ+経口プレドニゾンへの切替により6か月後に完全寛解を達成した。デュピルマブは組織への好酸球遊走を抑制する一方で好酸球造血は抑制せず、血中に好酸球が蓄積する機序が部分的に説明されている1)。
下垂体病変への対応
Section titled “下垂体病変への対応”EGPA による中枢神経系の合併症は稀であるが、下垂体炎に続発する中枢性尿崩症が報告されている。
Zhangら(2025)は、多飲多尿を主訴とした19歳男性のEGPA症例を報告した。下垂体MRIで下垂体茎の腫大を認め、プレドニゾン+リツキシマブに加えメポリズマブ300mg/月を追加したところ、尿崩症状と下垂体炎が改善した。メポリズマブがEGPAの下垂体機能障害に有効であることを示した初の報告とされる3)。
血栓塞栓症に対する好酸球標的治療
Section titled “血栓塞栓症に対する好酸球標的治療”EGPA患者では動静脈血栓塞栓症のリスクが高く、好酸球を標的とした治療の有効性が検討されている。
Kucukaliら(2025)は、EGPA再燃時に大量肺血栓塞栓症を発症した17歳男性を報告した。抗凝固療法と免疫抑制療法の併用で良好な転帰を得た。今後はメポリズマブなどの抗IL-5療法が血栓塞栓症の予防にも有効であるかの検討が求められている2)。
8. 参考文献
Section titled “8. 参考文献”- Kai M, Vion PA, Boussouar S, et al. Eosinophilic granulomatosis polyangiitis (EGPA) complicated with periaortitis, precipitating role of dupilumab? A case report and review of the literature. RMD Open. 2023;9:e003300.
- Kucukali B, Yazol M, Yildiz C, et al. Massive pulmonary thromboembolism in a pediatric patient with eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: a case-based review emphasizing management. Pediatr Rheumatol. 2025;23:1.
- Zhang A, Liu X, Wu P, et al. Pituitary dysfunction with eosinophilic granulomatosis with polyangiitis presenting with diabetes insipidus: a case report and review of the literature. Front Immunol. 2025;16:1557555.
- Zhang H, Zhang M, Yu T, et al. EGPA presenting as sudden cardiac arrest: a case report and review of cardiac manifestations. Front Immunol. 2026;16:1749843.