内科的治療
抗てんかん薬:薬剤抵抗性の場合が多いが、まず内科的管理を試みる。バルプロ酸などが使用される。
経過観察:臨床的に安定している場合は定期的な画像フォローで管理可能である。

胚形成不全性神経上皮腫瘍(dysembryoplastic neuroepithelial tumor; DNET)は、低悪性度の混合神経膠ニューロン腫瘍である。2021年のWHO中枢神経系腫瘍分類でグレード1に位置づけられている。1988年にDaumas-Duportらが薬剤抵抗性部分てんかんを有する若年患者39例を報告し、独立した疾患概念として確立された。2)
全原発性脳腫瘍の約1.5%を占める。小児の混合神経膠ニューロン腫瘍の約30%に相当する。てんかん症例の約6%がDNETに関連するとされる。6)薬剤抵抗性てんかんの手術例のうち約20%をDNETが占める。2)
好発年齢は10〜14歳にピークがあり、平均発症年齢は19歳前後である。1)2)男性にやや多く、ある症例シリーズでは男女比6:1であった。1)ヌーナン症候群との関連も報告されている。以前は過誤腫性病変と考えられていたが、現在は腫瘍性の性質が確認されている。
発生部位は側頭葉が最多で約66〜70%を占める。次いで前頭葉(約20〜29%)、頭頂葉(約11%)、後頭葉(約3%)の順である。1)まれに小脳6)や脳室内3)にも発生する。
全原発性脳腫瘍の約1.5%を占める稀な腫瘍である。ただし小児の混合神経膠ニューロン腫瘍に限ると約30%を占め、てんかん関連腫瘍としては比較的頻度が高い。好発年齢は10〜14歳で、男性にやや多い。
焦点発作(部分発作)がDNETの最も一般的な初発症状である。発作型は部分複雑発作が最多で、全般性強直間代発作、単純部分発作と続く。2)多くは20歳以前に初回発作を経験する。2)
DNETにおいて眼科的所見はまれである。大多数の腫瘍は天幕上(側頭葉・前頭葉)に発生するため、視覚系への影響は限定的である。
視索が障害された場合、障害側と対側の同名半盲および対側眼のRAPD(相対的入力瞳孔反応欠損)を呈する。障害側眼の視神経乳頭には砂時計様萎縮、対側眼には帯状萎縮が生じる。外側膝状体の障害では同名半盲を呈するが、対光反射の求心路は外側膝状体を経由しないためRAPDは生じない。
ほとんどのDNETは側頭葉や前頭葉に発生するため、眼科的症状はまれである。ただし後頭葉・視放線・視索・外側膝状体に位置する場合、対側の同名半盲を生じうる。脳幹近傍の腫瘍では複視を呈することもある。
DNETは胎生期の大脳皮質発達異常に由来すると考えられている。3)限局性皮質異形成(FCD)との合併が高頻度にみられ、隣接するグリア組織に皮質異形成を伴う症例は約29%と報告されている。1)
DNETの確定診断には以下の3要素が求められる。
MRIが第一選択の画像検査である。
視索障害が疑われる場合のOCT所見として、黄斑部網膜内層解析で障害側眼の耳側領域と対側眼の鼻側領域に選択的な菲薄化を認める。これは半盲性視神経萎縮に対応する特徴的な同名半盲パターンである。
DNETには3つの亜型が存在する。6)
| 亜型 | 特徴 |
|---|---|
| 単純型 | 神経膠ニューロン要素のみ |
| 複合型 | 神経膠ニューロン要素+グリア結節 |
| びまん型 | 神経膠ニューロン要素を欠く |
鑑別を要する主な腫瘍を以下に示す。2)
内科的治療
抗てんかん薬:薬剤抵抗性の場合が多いが、まず内科的管理を試みる。バルプロ酸などが使用される。
経過観察:臨床的に安定している場合は定期的な画像フォローで管理可能である。
外科的治療
完全切除:最善の治療選択肢であり、80〜100%の症例で発作が消失する。2)
皮質切除術:腫瘍周囲の異形成皮質を含めた広範切除が必要な場合がある。
完全切除が困難となる要因として、腫瘍境界の不明瞭さ、複数の脳回への進展、機能的皮質への近接、衛星病変の存在が挙げられる。しかし不完全切除であっても発作が消失する症例は少なくない。良性で成長が遅い性質から、大多数の患者は初回手術で治癒する。
放射線療法や化学療法は通常DNETの治療には用いられない。小児においてこれらの治療は長期的な有害作用をもたらす可能性がある。選択された症例でガンマナイフ放射線手術が使用された報告がある。
完全切除により80〜100%の症例で発作が消失する。2)不完全切除でも発作が改善する場合がある。ただし腫瘍周囲の皮質異形成が残存すると発作が持続するため、発作起始域を含めた広範切除が検討される。詳細は「標準的な治療法」の項を参照。
DNETの病理学的特徴は、皮質表面に垂直な柱状構造を形成する神経膠ニューロン要素と、粘液基質中に浮遊する「浮遊ニューロン(floating neurons)」である。乏突起膠細胞様形態を持つ均一な円形細胞が粘液性物質に囲まれ、多結節性病変を構成する。
分子レベルでは、FGFR1遺伝子変異がDNETの主要な分子ドライバーである。チロシンキナーゼドメイン(TKD)の内部タンデム重複が40〜60%に認められ、最も頻度の高い遺伝子異常である。1)FGFR1変異によりRAS/ERK、PI3K/AKT、mTORシグナル経路が活性化される。1)
転移性拡大や軟膜播種は極めてまれであるが、脊髄への滴下転移による致死例が2例報告されている。播種の経路としては以下が提唱されている。
Beauchampら(2021)は、10歳男児の左後頭葉DNETに対して5-アミノレブリン酸(5-ALA)蛍光ガイド切除を実施し、全摘出を達成した。従来、低悪性度腫瘍では5-ALA蛍光陽性は稀とされていたが、DNETでの蛍光陽性は初めての報告である。術後6ヶ月の時点で発作は消失した(Engel class I)。5)
Takitaら(2022)は、文献上14例のみが報告されているDNETの悪性転化を総括した。悪性転化例の65%は側頭葉以外に発生しており、93%で造影MRIにおける増強効果を認めた。悪性転化後の病理型は退形成性星細胞腫、膠芽腫、退形成性乏突起星細胞腫など多様であった。悪性転化例でもFGFR1変異が検出されている。4)
Habib Chorfaら(2024)は、19歳女性において右側頭葉DNETの完全切除3年後にグリア性腫瘍(WHOグレード2の皮質上衣腫)への転化を報告した。長期的な画像フォローの重要性が強調されている。7)
Stoyanovら(2023)は、2歳女児の小脳DNETを報告した。後頭蓋窩DNETは古典的なDNETとは異なる臨床像(歩行不安定・斜視・水頭症)を呈し、複合型の組織像を示した。今後、独立した分類としての分離が検討されている。6)
悪性転化は極めてまれであり、文献上14例の報告にとどまる。4)側頭葉以外に発生した症例や造影MRIで増強効果を示す症例では悪性転化の可能性を考慮する必要がある。長期的な画像フォローが推奨される。