準備と染色
1. 患者の位置決め:細隙灯顕微鏡の前に座らせる。
2. 点眼麻酔:点眼麻酔薬を投与する。
3. 乾燥:漏出が疑われる部位をセルローススポンジ(推奨)または綿棒で慎重に乾燥させる。
4. フルオレセイン塗布:フルオレセイン試験紙を生理食塩水で湿らせ、疑われる部位に塗布する。溶液(0.5〜2%フルオレセイン溶液)の滴下でもよい。

サイデル試験(Seidel test)は、フルオレセイン染色液を眼表面に塗布しコバルトブルー光下で観察することで、角膜または強膜の全層欠損からの房水漏出を検出する検査法である。1921年にドイツの眼科医エーリッヒ・サイデル(Erich Seidel, 1882-1948)が報告した。
房水が欠損部から漏出すると、眼表面に塗布されたフルオレセイン染色液が希釈される。コバルトブルー光下では、フルオレセインの緑色蛍光の中に希釈された濃い青色の流れ(waterfall effect)が出現する。これがサイデル試験陽性(Seidel positive)である。
フルオレセイン染色液を塗布した眼表面をコバルトブルー光で観察し、房水の漏出を検出する検査である。角膜・強膜の全層欠損があれば房水がフルオレセインを希釈し、濃い青色の流れとして観察される。外傷、感染、術後の創閉鎖評価に用いる。

| 適応 | 臨床的意義 |
|---|---|
| 眼球損傷後の評価 | 開放性眼外傷の有無を判定する |
| 角膜・強膜裂傷 | 全層に及ぶかどうかを確認する |
| 感染性角膜穿孔 | 穿孔の発生を検出する |
| 術後の創閉鎖確認 | 適切な創閉鎖を確認する |
| トラベクレクトミー後 | ブレブからの房水漏出を評価する |
外傷性前房出血の診断において、角膜穿孔の有無を確認するためにサイデル試験が実施される。高度の結膜浮腫、低眼圧、結膜下出血を認めた場合は眼球破裂を疑い、画像検査(CT、MRI)を追加する。ただし金属性異物が疑われる場合MRIは禁忌である。
トラベクレクトミー後のブレブ評価においても重要な検査である。点眼麻酔薬を浸したフルオレセイン試験紙をブレブ表面に塗布し、ブルーフリーフィルター下で全体を観察する。いったん閉瞼させ開瞼直後から数秒間観察すると漏出が確認しやすい。代謝拮抗薬併用後のブレブでは壁が菲薄化し房水漏出リスクが高い。
フルオレセインは水溶性の蛍光色素である。最大吸収波長は490nm付近(青色光)、最大蛍光波長は520〜530nm(緑色光)である。コバルトブルーフィルターにより励起されると黄緑色の蛍光を発する。
正常角膜上皮は表層細胞のtight junctionがバリアとなるため、フルオレセインは細胞間を通過しない。上皮欠損部ではフルオレセインが入り込み染色される。この性質を利用して角結膜上皮障害の検出にも広く用いられる。
角膜・強膜の全層欠損がある場合、前房から房水が欠損部を通じて漏出する。漏出した房水は眼表面のフルオレセインを希釈し、コバルトブルー光下で濃い青色の流れ(waterfall effect)として観察される。これが陽性所見である。
ブルーフリーフィルターを併用すると、フルオレセインの蛍光波長(520〜530nm以上)のみを選択的に透過させるためコントラストが向上し、微細な漏出の検出精度が高まる。
準備と染色
1. 患者の位置決め:細隙灯顕微鏡の前に座らせる。
2. 点眼麻酔:点眼麻酔薬を投与する。
3. 乾燥:漏出が疑われる部位をセルローススポンジ(推奨)または綿棒で慎重に乾燥させる。
4. フルオレセイン塗布:フルオレセイン試験紙を生理食塩水で湿らせ、疑われる部位に塗布する。溶液(0.5〜2%フルオレセイン溶液)の滴下でもよい。
観察と評価
5. 観察:コバルトブルー光下で欠損部を観察し、暗い流れ(waterfall effect)の有無を評価する。流出速度を記録する。ブルーフリーフィルターの併用でコントラストが向上する。
6. 圧迫テスト:術後の創部など特定の症例では、欠損部に隣接する領域を軽く圧迫して流出を確認する。ただし眼内内容物の脱出リスクがある場合は避ける。
術後の創部やトラベクレクトミー後のブレブなど、緩徐な漏出が疑われる場合に軽い圧迫を加えて漏出を確認する。ただし眼内内容物の脱出リスクがある外傷例では圧迫を避けなければならない。
外科的介入
外傷性全層裂傷・穿孔:開放性眼外傷に該当し、迅速な外科的修復が必要である。
大きな角膜欠損:一次縫合閉鎖を行う。LASIK後の角膜ではフラップ下の裂傷が存在することがあり、フラップを持ち上げて残存実質の縫合を要する場合がある2)。
保存的管理
小さな穿孔(2mm未満):包帯コンタクトレンズと抗菌点眼薬で管理できる場合がある。
シアノアクリレート接着剤:小さな角膜欠損に対して使用される。
術後の緩徐な漏出:包帯コンタクトレンズと経過観察で自然閉鎖を期待する場合がある。
原因、部位、大きさにより管理が異なる。外傷性の全層裂傷や穿孔は迅速な外科的修復が必要である。小さな穿孔(2mm未満)や術後の緩徐な漏出は包帯コンタクトレンズと抗菌薬で管理可能な場合がある。シアノアクリレート接着剤も小さな欠損に使用される。
緑内障ドレナージデバイス(GDD)留置眼では、緑内障ドレナージデバイス周囲の上耳側結膜に涙腺管開口部が近接する。涙腺管からの分泌液がフルオレセインを希釈して緑内障ドレナージデバイス漏出と誤認される偽陽性(pseudo-Seidel sign)が生じうる1)。
フルオレセイン染色では液体の流出は検出できるが、その液体が房水か涙液かを区別することはできない。この限界を克服する方法として、前房内にトリパンブルーを注入し、漏出液が青色に着色するかどうかで鑑別する手法が報告されている1)。トリパンブルーは結膜・強膜・線維柱帯への親和性が高く、房水の流路を正確に追跡できる1)。
LASIK後の眼では鈍的外傷により角膜実質の全層裂傷が生じても、LASIKフラップが無傷のまま残存するため房水が眼外に漏出せず、サイデル試験が陰性となる場合がある2)。このような症例では前房とフラップ下の間にdouble chamberが形成され、角膜浮腫や眼圧低下として表れる2)。前眼部OCTがフラップ下の裂傷を描出し診断に至った報告がある2)。
角膜潰瘍で穿孔を起こした場合も、フルオレセイン染色により前房水の漏出を可視化できるが、穿孔部が自己閉鎖している場合や虹彩嵌頓により一時的に漏出が止まっている場合は偽陰性となりうる。
ある。LASIK後の眼ではフラップが無傷のまま実質の全層裂傷をカバーして房水漏出を防ぐため、偽陰性となりうる2)。また穿孔部への虹彩嵌頓や自己閉鎖でも偽陰性になることがある。臨床所見との矛盾がある場合は前眼部OCTによる追加評価が推奨される。