急性期の症状
眼痛:異物が角膜に刺入した直後から生じる。程度は異物の大きさと深達度に依存する
異物感:角膜上の異物が瞬目のたびに刺激を与える。異物除去後も上皮欠損が治癒するまで持続する
充血:結膜充血を伴う。炎症が強い場合は毛様充血も認める
流涙:角膜の三叉神経刺激による反射性流涙である

角膜異物(corneal foreign body)は眼科救急で頻繁に遭遇する疾患である。異物の種類は鉄粉などの金属片、ガラス片、植物片(葉・棘・木の切り屑)、石粉、土など多彩である。金物産地の眼科外来では新患の7.0%を角膜異物が占める。
角膜異物の88%は鉄粉である。瞼裂に飛入した異物の大部分は瞬目で排出されるが、幅0.5mm・厚さ0.02mm以下の微小異物は角膜上に残留する。鉄は30分で上皮に錆び付き、瞬目に耐えて角膜上に定着する。
| 異物の種類 | 頻度 | 男女比 |
|---|---|---|
| 鉄粉 | 88% | 27:1 |
| 植物片 | 3% | — |
| 砂・小石 | 2% | — |
| 炭・灰 | 2% | — |
| その他 | 5% | 7:1 |
鉄粉以外の異物では男女比は7:1と、鉄粉ほどではないが男性に多い。異物の数は瞼裂幅に比例し、大きさは角膜中心で小さく周辺で大きい傾向がある。
治療の目的は異物の除去と、創部の合併症なき治癒の促進である。異物の種類や経過時間によって病態は変化し、特に角膜深部の異物や穿孔を伴う異物では感染症の合併に注意を要する。

作業中や屋外活動中に異物が飛入し、以下の症状を生じる。
急性期の症状
眼痛:異物が角膜に刺入した直後から生じる。程度は異物の大きさと深達度に依存する
異物感:角膜上の異物が瞬目のたびに刺激を与える。異物除去後も上皮欠損が治癒するまで持続する
充血:結膜充血を伴う。炎症が強い場合は毛様充血も認める
流涙:角膜の三叉神経刺激による反射性流涙である
遷延する場合の症状
視力低下:瞳孔領の異物や錆輪が視軸にかかると視力に影響する。深層異物では不可逆的な視機能障害を残すことがある
羞明:前房内炎症や虹彩毛様体炎を合併した場合に生じる
眼脂:感染性角膜炎を合併した場合に認める
細隙灯顕微鏡検査で以下の所見を確認する。
フルオレセイン染色は上皮障害の確認に必須である。異物周囲の涙液層の乱れが染色で強調され、透明な異物やごく小さな異物の発見に役立つ。房水漏出がある場合はSeidel testで穿孔を確認できる。
初回の処置で完全に除去できなくても問題ない。数日経過すると角膜組織が融解して錆輪が除去しやすくなるため、複数回に分けて除去してもよい。ただし瞳孔領に及ぶ錆輪は除去後の実質の状態が視機能に大きく影響するため、慎重な対応が必要である。
角膜異物は金属・木材・プラスチックなどの製造加工業、建築業、農業、清掃業の従事者に多い。日常生活でも日曜大工、庭仕事、掃除などが契機となる。受傷時の状況を聴取し異物の種類を推測することが治療方針の決定に役立つ。
植物性異物は角膜実質内で強い異物反応を引き起こす。時間とともに膨化・腐食が進み、異物が折れたり砕けたりして取り残しの原因となる。さらに植物には細菌や真菌が付着しているため、感染性角膜炎の発症リスクが高い。真菌感染を助長するためステロイド点眼は禁忌である。
初見時は無理に開瞼させず、点眼麻酔薬で刺激症状を軽減してから診察する。穿孔性外傷の可能性も想定して慎重に取り扱う。
眼洗浄は粉や顆粒状の眼表面異物には有効な場合がある。しかし角膜に食い込んでいたり刺さっていたりする異物は洗浄では除去できない。眼科医が細隙灯顕微鏡で前眼部を十分に観察したうえで適切な処置を選択する必要がある。
点眼麻酔後、細隙灯顕微鏡下で以下の手技を行う。
異物除去の基本手技
異物針による除去:異物針をメス・鋭匙・スパーテルのように使い、異物を起こすようにして取り出す。先端を角膜の垂直方向へ向けてはならない
27Gニードル法:ディスポーザブル注射針で異物を起こして除去する。鉄粉以外の異物は角膜に載っているだけのことが多く、すくうだけで除去できる
鑷子による摘出:宝石鑷子(jewelers forceps)で異物の後端をつまんで引き抜く。周囲組織をかき混ぜないよう注意する
錆輪の除去
異物針による搔爬:上皮層錆輪を除去した後、実質表層に残る点状の錆を針先で搔き出す
ドリル(Alger brush)による搔爬:異物針による手技と比べ初回の取り残しが少ない。低速で先端を軽く当てる程度に加減すると削りすぎを防止できる
段階的除去:初回で完全除去できなくても、数日後に角膜組織が融解してから再度除去が可能である
手術用顕微鏡下で開瞼器を装着して行う。
異物除去後の創部は上皮バリア機能が破綻しており易感染性である。
ドリル(Alger brush)は異物針と比べて初回の取り残しが少ないという利点がある。一方で実質を削りすぎる欠点がある。低速で先端を軽く当てる程度に加減することが重要である。特に瞳孔領に及ぶ錆輪では除去後の実質の状態が視機能に影響するため、慎重に適応を検討する。
鉄粉が角膜に付着すると、水分と酸素の存在下で酸化が進行する。30分で上皮に錆び付き、12時間で上皮層に筒型の錆輪を形成する。ボウマン層に達した錆は鉄粉の容量に比例して円板状に広がり、さらに直下の実質表層にも筒型の錆輪を形成する。72時間を過ぎると錆輪の周囲組織が溶解し始めるが、この段階では感染症は通常生じない。
鉄粉異物の除去後に角膜実質に残留する小さな白色環状混濁である。鉄の沈着物であり、異物が角膜に存在した痕跡として残る。通常は無症状で治療の必要はなく、時間経過とともに退縮する場合もある。
角膜異物による上皮バリアの破綻が細菌・真菌の侵入経路となる。植物性異物は微生物を角膜実質内に持ち込むため特に感染リスクが高い。適切に処置されない場合、角膜潰瘍から虹彩毛様体炎、全眼球炎へと進行し、視機能は著しく損なわれる。
生体反応の少ないガラス片などで摘出が困難な場合、視力に影響せず化学的・物理的刺激症状がなければ放置も許容される。ただし経過観察は必要である。