DSEK/DSAEKの特徴
移植組織:後部実質(50〜150μm)+デスメ膜+内皮1)
ドナー準備:DSEK=手動切除、DSAEK=マイクロケラトーム
切開幅:4〜5mm(BUSIN glideやEndo-Inserter使用時はより小さい)
接着方法:前房内空気タンポナーデ

デスメ膜剥離角膜内皮移植術(DSEK: Descemet stripping endothelial keratoplasty)は、角膜内皮機能不全に対して行われる角膜内皮移植術の一種である。2005年にPrice & Priceが報告し、レシピエントのデスメ膜を剥離(Descemetorhexis)した上で、後部実質・デスメ膜・内皮からなるドナーグラフトを移植する手技として確立された1)。2006年にGorovoyがマイクロケラトームによるドナー組織の自動切除を導入し、DSAEK(Descemet stripping automated endothelial keratoplasty)と呼ばれるようになった1)。
DSEK/DSAEKの特徴
移植組織:後部実質(50〜150μm)+デスメ膜+内皮1)
ドナー準備:DSEK=手動切除、DSAEK=マイクロケラトーム
切開幅:4〜5mm(BUSIN glideやEndo-Inserter使用時はより小さい)
接着方法:前房内空気タンポナーデ
DMEKとの比較
DMEK:デスメ膜+内皮のみ(約15μm)を移植
DSAEK:後部実質を含むため操作が容易で展開が確実
視力回復:DMEKがやや優れるが差は縮小傾向2)
適応範囲:DSAEKは虹彩異常眼やcomplex eyesにも対応可能
その後、グラフト厚の薄型化が進み、ultra-thin DSAEK(UT-DSAEK: 100μm未満)やnanothin DSAEK(50μm未満)が開発された1)。米国では2022年時点で全角膜移植の約62%が内皮移植(EK)であり、DSAEK/DSEKはDMEKとともにEKの主流を占めている。
角膜内皮移植全般の利点として、角膜上が無縫合であり縫合関連合併症がない点、角膜前面のカーブが保たれるため惹起乱視がわずかである点、小切開で施行可能なため外傷に強い点が挙げられる。
DSAEKの適応は角膜内皮機能不全による水疱性角膜症全般である。
原則として偽水晶体眼が望ましい。角膜実質に瘢痕がある場合は内皮移植では視力改善が限られるため、全層角膜移植を考慮する。
虹彩角膜内皮(ICE)症候群:広範な虹彩前癒着により前房が高度に変形した症例では、近全切除虹彩切除による前房再建後にDSAEKを施行する報告がある5)。3眼の平均53ヶ月追跡で全グラフトが透明を維持した5)。
先天性無虹彩症:安定した虹彩−水晶体隔壁を欠く状況でもDSEKは施行可能である。先天性無虹彩症に対するultrathin DSEKで角膜浮腫の改善のみならず角膜全体の外観改善が得られた報告がある6)。無虹彩症ではDMEKより気泡管理が容易なDSEKが好まれる6)。
DMEKは標準的な内皮不全で前房の視認性が良好な眼に第一選択とされつつある。一方、DSAEKは以下のcomplex eyesで選択される。
また、FECDに潜在する円錐角膜(forme fruste keratoconus)がDMEK後に顕在化し、単眼性複視を生じた症例が報告されている7)。対側眼をDSAEKに変更したところ、後面角膜不整が補正され視覚障害は発生しなかった7)。DSAEKの実質成分が後面角膜曲率を安定化させるため、潜在性円錐角膜合併例ではDSAEKが望ましい7)。
視力回復ではDMEKがやや優れますが、虹彩異常・無水晶体・硝子体切除術後などではDSAEKが安全です。潜在的な円錐角膜がある場合もDSAEKの実質成分が後面角膜を安定化させるため有利です。術者の経験と眼の状態に応じた選択が重要です。
ドナー強角膜片を人工前房装置に固定し、マイクロケラトームで厚さ300〜350μmのフリーキャップを作成する。残りの約100μmの後部実質+デスメ膜+内皮をドナーグラフトとして使用する。内皮面から直径8mmのトレパンで打ち抜く。Eye bankでpre-cut済みの組織を使用することも多い。
球後麻酔またはテノン嚢麻酔で施行する。硝子体圧が高い症例ではホナンバルーンで術前に眼圧を下げておく。
FECD患者の白内障手術では角膜内皮への負荷を最小化する工夫が重要である。
手術手順
Descemetorhexis:逆シンスキーフックでレシピエントのデスメ膜を円形に剥離(BSS灌流下)
グラフト挿入:BUSIN glideまたはNS Endo-Inserter®を用い、4〜5mm切開から前房内へ挿入
センタリング:角膜外側タッピングと前房水流でグラフトを中央に位置させる
創閉鎖:10-0ナイロン2〜3針で縫合
空気注入と層間排液
空気注入:角膜輪部から32G針でグラフト直下に空気を注入し眼圧を十分に上げる
層間排液:stub incisionから層間の液を十分に排出
空気タンポナーデ:前房を空気で約10分間完全に置換してグラフトを接着
術後体位:仰臥位を維持し、気泡でグラフト位置を安定させる
アトロピン点眼を空気が残存する期間使用し、空気瞳孔ブロックを予防する。ステロイド点眼(プレドニゾロン)は術直後3時間ごとに開始し、1週後から漸減する。前眼部OCTでグラフトの接着状態と角膜厚の改善を経時的に確認する。
グラフト接着不良(detachment):DSAEK後の最も頻度の高い合併症である。接着不良が生じた場合、顕微鏡下で再度空気を注入する(rebubbling)。DSAEKはDMEKよりrebubbling率が低い傾向にある2)。
空気瞳孔ブロック:前房内の気泡が瞳孔を閉塞し急性の眼圧上昇を来す。予防策としてアトロピン点眼、術終了時の空気減量、6時の位置への虹彩切開がある。発症時はサイドポートから空気を少量排出する。
Primary graft failure:手術が問題なく終了しても移植片が一度も透明化しない状態。全角膜移植の約0.1%に発症し、再移植を検討する。
術後眼圧上昇:角膜内皮移植後の20〜30%にみられる。ステロイド緑内障か続発緑内障かの鑑別が治療方針を左右する。
拒絶反応:DSAEK後の約5〜10%に生じ、全層角膜移植(約15%)より低い。ステロイド点眼のみで寛解することが多いが、漸減は十分にゆっくり行う必要がある。
内皮細胞減少:DSEK後には周術期に中央値32%の細胞減少が予想され、その後年間約110 cells/mm²の線形速度で低下する。
ドナー由来単純ヘルペスウイルス感染と全身播種:DMEK後のドナー角膜由来単純ヘルペスウイルス-1伝播により壊死性肝炎・血球貪食性リンパ組織球症を発症し、生命を脅かした初の症例が報告されている8)。73歳男性でDMEK後10日目に発症し、前房液中の単純ヘルペスウイルス-1 DNA量は2.2億コピー/mLであった8)。早期のアシクロビル静注が奏効した8)。現行のドナースクリーニングでは単純ヘルペスウイルス検査は義務付けられていないが、移植後の原因不明の全身疾患では単純ヘルペスウイルス播種を鑑別する必要がある8)。
はい、rebubbling後のグラフトは多くの場合良好に機能します。グラフトは房水中に浮遊していたため、再接着後も内皮機能は通常維持されます。ただし、複数回のrebubblingが必要な場合は内皮細胞の追加損失が生じるため、グラフト不全のリスクが高まります。
Dunkerらの多施設RCT(54眼)では、術後12ヶ月の平均最高矯正視力(BCVA)(logMAR)はDMEK群0.08 vs UT-DSAEK群0.15で有意差はなかったが、20/25以上達成率はDMEK群66% vs UT-DSAEK群33%と有意差があった(P=0.02)3)。内皮細胞密度(12ヶ月)は両群で有意差なし3)。
| 項目 | DMEK | UT-DSAEK |
|---|---|---|
| 20/25達成率 | 66%3) | 33%3) |
| 12ヶ月最高矯正視力 | 0.08 logMAR3) | 0.15 logMAR3) |
| 遠視シフト | +0.22D3) | +0.58D3) |
Selaらのメタアナリシス(376眼)では、12ヶ月最高矯正視力はDMEKで有意に優れていた(平均差 −0.06 logMAR; 95%CI −0.10〜−0.02)2)。ただし70μm未満のDSAEKグラフトでは最高矯正視力に有意差がなかった2)。DMEKのrebubbling率はDSAEKより有意に高い(OR 2.76; 95%CI 1.46-5.22)2)。
UT-DSAEK(100μm未満)は標準DSAEKより視力回復が良好であり、さらに薄いnanothin DSAEK(50μm未満)はDMEKに匹敵する視力を提供する可能性がある。グラフト厚の薄型化は光学的インターフェースの改善をもたらすが、操作難度は高くなる。
内皮移植(DSAEK)は全層角膜移植術と比較して、惹起乱視が少なく、創傷安定性が高く、視覚リハビリテーションが速い4)。一方、一部の研究ではグラフト拒絶率や最高矯正視力改善に差がないとの報告もある4)。5年グラフト生存率は両術式で同等とされている1)。
UT-DSAEKでは約33%の眼が術後12ヶ月で最高矯正視力20/25以上に到達します。標準厚DSAEKではこの割合はやや低くなりますが、多くの患者で20/40以上の実用的な視力が得られます。角膜実質の瘢痕やその他の合併症がなければ、良好な視力回復が期待できます。
角膜内皮細胞はNa⁺/K⁺-ATPaseポンプにより角膜実質から前房へ水分を排出し、角膜の含水率を約78%に保っている。FECDやPBKではこのポンプ機能が破綻し、角膜実質に過剰な水分が貯留して浮腫・混濁を来す。
DSAEKではDescemetorhexisで病的デスメ膜と機能不全内皮を除去し、健常なドナー内皮+デスメ膜+後部実質をホスト角膜後面に移植する4)。空気タンポナーデでグラフトが接着すると、ドナー内皮がポンプ機能を発揮して角膜浮腫が改善する。
DSAEKグラフトの後部実質は角膜後面に付加される凹レンズとして機能し、遠視方向の屈折シフトを引き起こす。グラフトが薄いほど遠視シフトは小さく、DMEKでは最小となる1)。
グラフト厚の薄型化が急速に進んでおり、70μm未満のDSAEKではDMEKとの最高矯正視力差が消失する可能性がメタアナリシスで示されている2)。nanothin DSAEK(50μm未満)はDMEKと同等の成績をもたらす可能性があるが、依然としてadditive(付加的)移植であり真のreplacement surgeryではない。
ICE症候群の高度前房変形例に対する近全切除虹彩切除+DSAEKの報告5)、先天性無虹彩症に対するultrathin DSEKの報告6)など、DSAEKの適応はcomplex eyesへ拡大している。
FECDに潜在する円錐角膜がDMEK後に顕在化する症例が報告されており、DSAEKの実質成分が後面角膜曲率を安定化させることが確認されている7)。このような合併例のスクリーニングと術式選択の最適化が今後の課題である7)。
ドナー角膜由来の単純ヘルペスウイルス伝播は稀だが、全身播種という生命を脅かす合併症が初めて報告された8)。現行のスクリーニングには単純ヘルペスウイルス検査が含まれておらず、今後の検討課題となっている8)。
70μm未満の超薄DSAEKグラフトではDMEKとの最高矯正視力差が統計的に有意でなくなるというメタアナリシスのデータがあります。ただし、グラフトが薄くなるほど術中操作が難しくなるため、施設の経験と技術水準を考慮した術式選択が重要です。
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