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角膜・外眼部疾患

深層層状角膜移植術(DALK)

深層層状角膜移植術(DALK: Deep Anterior Lamellar Keratoplasty)は、レシピエント角膜のほぼすべての実質を切除し、ドナーの実質のみを移植する術式である。デスメ膜と角膜内皮はレシピエント自身のものが温存される6)

内皮を残した選択的角膜実質移植の概念は150年以上前に遡る。1959年にHallermanがデスメ膜近傍までの深層実質剥離を初めて行った。1974年、Anwarがドナーのデスメ膜と内皮を除去することで界面が滑らかになり視力予後が改善することを報告した。1984年、Archilaが空気注入法を導入し、現在のbig bubble法の基盤を築いた。

DALKの利点

内皮拒絶反応なし:ドナー内皮を移植しないため内皮型拒絶反応が生じない6)

移植片生存率の向上:特に若年者において長期生存率がPKより優れる

閉鎖系手術:術中の駆逐性出血や外傷性創離開のリスクが低い

ドナー要件の緩和:内皮細胞数が少ないドナー角膜も使用可能6)

ステロイド負荷の軽減:術後ステロイド点眼の期間が短縮できる

DALKの欠点

手技の難易度:PKより手技が困難であり、学習曲線がある6)

デスメ膜穿孔リスク:術中のデスメ膜穿孔により PKへの転換が必要になることがある

界面混濁:残存実質が視力制限因子となりうる

実質拒絶反応:内皮拒絶はないが、実質拒絶反応は2〜12%で生じる6)

全拒絶反応率はDALK 1.9%に対しPK 7.8%と報告されている。メタアナリシスではDALKの拒絶率がPKより有意に低い(OR 0.28、95%CI 0.15–0.50、P<0.001)6)

期間DALK全体PK全体DALK高リスクPK高リスク
1年95.8%94.4%84.6%90.3%
5年93.9%80.4%82.1%59%
10年93.9%72.1%82.1%48.7%

高リスク眼(深部血管新生、眼表面疾患、緑内障合併など)では、DALKの移植片生存率がPKより顕著に高い。

DALKの前提条件は内皮機能が正常であることである6)

角膜拡張症:円錐角膜が最も一般的な適応である。コンタクトレンズ不耐患者やCL装用でも十分な視機能が得られない患者が対象となる6)。ペルーシド辺縁角膜変性や屈折矯正手術後の角膜拡張症にも適用される。

角膜瘢痕:デスメ膜に及ばない実質瘢痕が適応となる。ヘルペス角膜炎後、外傷後、感染後の瘢痕などが含まれる。

角膜実質ジストロフィ:格子状、顆粒状、アベリーノ角膜ジストロフィが良い適応である。斑状角膜ジストロフィは術後の内皮減少リスクがあり適さない。

構造的(tectonic)目的デスメ膜瘤や角膜穿孔に対し、眼球の構造的保全と視力回復の両方を目的として施行される4)。小児の化学外傷後のtectonic DALKも報告されている4)。重度の周辺部潰瘍性角膜炎に対し、DALKと周辺部層状角膜移植を併用した報告もある5)

絶対禁忌:角膜内皮機能不全、内皮型角膜ジストロフィ

相対禁忌:急性水腫に伴うデスメ膜破裂歴、デスメ膜に及ぶ深い瘢痕、深部角膜血管新生、高度の角膜菲薄化6)

Q 斑状角膜ジストロフィにDALKは適しますか?
A

斑状角膜ジストロフィではDALKが推奨されない。グリコサミノグリカンの蓄積が角膜内皮にも及ぶため、DALK後に角膜内皮が進行性に減少する可能性がある。斑状ジストロフィに対しては全層角膜移植(PK)が選択されることが多い。

DALK image
DALK image
Domenico Schiano-Lomoriello, Rossella Annamaria Colabelli-Gisoldi, Mario Nubile, Francesco Oddone, et al. Descemetic and Predescemetic DALK in Keratoconus Patients: A Clinical and Confocal Perspective Study 2014 Aug 26 Biomed Res Int. 2014 Aug 26; 2014:123156 Figure 2. PMCID: PMC4160628. License: CC BY.
in vivo confocal microscopic image of a descemetic (D-DALK) interface with bright microdots

最も広く用いられる手法である6)

  1. トレパネーション:角膜厚の60〜80%の深さまで部分層トレパネーションを行う
  2. 空気注入:27〜30ゲージ針を実質内に刺入し、空気を勢いよく注入する
  3. バブル形成:後部実質とデスメ膜の間にType 1 bubble(プレデスメ層-実質間)またはType 2 bubble(デスメ膜-プレデスメ層間)が形成される
  4. 前部実質の除去:バブル前壁を穿刺し、実質を4分割して切除する
  5. ドナーの縫合:デスメ膜を剥離したドナーボタンをPKに準じた縫合法で固定する

big bubble法によるデスメ膜露出の成功率は47〜82%と報告されており、術者の経験に依存する6)。デスメ膜穿孔率は平均11.7%であり、PKへの転換率は平均2.4%である1)

Melles法(空気ガイド下深層実質剥離)

Section titled “Melles法(空気ガイド下深層実質剥離)”

前房内に空気泡を注入し、剥離ヘラの鏡像を利用して実質剥離の深さを把握する手法である6)。層状に実質を剥離する。

深い角膜瘢痕やデスメ膜瘢痕を有する症例では用手剥離が推奨される6)。クレセントナイフを用いて段階的に実質を切除する。不規則な実質床が生じやすく、界面混濁や乱視の原因となりうる。

フェムトセカンドレーザー支援

Section titled “フェムトセカンドレーザー支援”

フェムトセカンドレーザーは実質内トンネルの作成やサイドカットの精密な作成に使用される6)。インターロッキングパターンにより創傷治癒が促進される。

iOCTは実質剥離の深さの可視化に有用である1)。金属器具はOCTシャドウアーチファクトを生じるため、8-0ナイロン糸を実質トンネル内に通して深度マーカーとする手法が報告されている1)。Pentacamガイドでのbig bubble成功率84%、超音波角膜厚計ガイド81.8%、AS-OCTガイド70%との報告がある1)

PK後の角膜(hematocornea等)に対するDALKでは、PK移植片の層間接着が弱いためストロマルピーリング法が適用できる3)。空気注入等を要さず、プレデスメ層に沿った自然な剥離面を利用する3)

Q big bubble法でType 1とType 2の違いは何ですか?
A

Type 1 bubbleは後部実質とプレデスメ層の間に形成され、直径8mm以上の大きなバブルとなる。Type 2 bubbleはデスメ膜とプレデスメ層の間に形成され、直径が小さく(約6mm)壁が薄い。Type 2 bubbleはデスメ膜穿孔のリスクが高い。両タイプが混在する場合もあり、Type 2が確認された場合はType 1内の実質を先に除去し、デスメ膜穿孔を避けるよう慎重に操作する2)

デスメ膜穿孔:DALKで最も多い術中合併症である。約10〜30%の症例で発生する。小さな穿孔であれば手術を続行できるが、大きな穿孔ではPKへの転換が必要となる1)。穿孔率は術者の経験とともに低下する6)

二重前房(double anterior chamber):最も一般的な術後早期合併症である2)。デスメ膜とドナー実質の間に房水が貯留する。術中のデスメ膜穿孔がある症例で発生しやすいが、穿孔なしでも未認識のType 2 bubbleから生じることがある2)。通常は前房内空気注入(descemetopexy)で治療するが、自然消退する例も報告されている2)5)。Descemet膜剥離への空気タンポナーデは20%以上の内皮細胞喪失をきたしうるため2)、自然経過観察も選択肢となる。

実質拒絶反応:発生率は2〜12%と報告されている6)。通常はステロイド点眼で回復可能である6)。内皮拒絶反応は生じない。

内皮細胞喪失:DALK後の内皮細胞喪失は二相性を示す。術中操作(特にデスメ膜穿孔時)による急性喪失と、年約3.9%の慢性的な緩徐な減少がある。デスメ膜穿孔なしのDALKでは、PKと比較して内皮細胞喪失が有意に低い。

その他:界面混濁(残存実質による)、縫合関連合併症、感染、Urrets-Zavalia症候群(円錐角膜でより多い)、空気/ガスによる瞳孔ブロック、移植片離開がある。

合併症特徴
DM穿孔術中10〜30%。大穿孔はPK転換
二重前房術後早期。空気注入 or 自然消退
実質拒絶2〜12%。ステロイドで可逆
界面混濁残存実質≥80μmで視力低下
Q DALK後の二重前房は常に治療が必要ですか?
A

必ずしも治療は必要でない。前房内空気注入(descemetopexy)が標準治療であるが、20%以上の内皮細胞喪失をきたしうる2)。少量の液貯留で視力に影響しない場合は、3ヶ月程度の経過観察で自然消退した報告がある2)。デスメ膜穿孔がなく、未認識のType 2 bubbleが原因と考えられる非裂孔性デスメ膜剥離では、経過観察が合理的な選択肢となりうる。

角膜は前方から上皮層、ボウマン膜、実質層、プレデスメ層(Dua’s layer)、デスメ膜、内皮層の6層で構成される。DALKでは実質層をほぼ全層にわたって切除し、プレデスメ層またはデスメ膜面を露出させる。

プレデスメ層は実質最後層に位置する厚さ約10μmの無細胞性コラーゲン層である3)。PK後の角膜ではこの層に沿った自然な剥離面が存在し、ストロマルピーリング法の解剖学的根拠となっている3)

残存実質厚がDALK後の視力を左右する最大の因子である6)。デスメ膜が完全に露出された場合、PKと同等の視力が得られる。残存実質が厚いほどドナー-ホスト界面の散乱が増加し、コントラスト感度が低下する。

角膜拒絶反応の主たる標的は内皮細胞である。DALKではドナー内皮を移植しないため内皮拒絶が発生しない6)。これにより術後のステロイド負荷が軽減され、ステロイド緑内障白内障のリスクも低下する。

術中OCTの活用:iOCTは実質剥離の深さをリアルタイムで可視化し、big bubble法の成功率向上に寄与する1)。ナイロン糸を深度マーカーとして利用する手法など、金属器具のアーチファクト回避策が開発されている1)。Tectonic DALKにおいてもiOCTがドナー-ホスト界面の確認に有用である4)

ストロマルピーリング法:PK後の再移植においてDALKを選択する際、ストロマルピーリングは気体や粘弾性物質の注入を要しない安全な剥離手法として注目されている3)

適応の拡大:DALKの適応は拡大しつつある。小児の重度化学外傷に対するtectonic DALK4)、自己免疫性周辺部潰瘍性角膜炎に対するDALKと周辺部層状移植の併用5)など、従来PKが選択されていた領域でのDALK応用が報告されている。

高リスク眼(深部血管新生、眼表面疾患、緑内障合併)ではDALKの移植片生存率がPKを大幅に上回ることが示されており、適切な症例選択と術式の最適化が今後さらに重要となる。

  1. Lin CC, Lee WS. Intraoperative optical coherence tomography-guided deep anterior lamellar keratoplasty. Taiwan J Ophthalmol. 2023;13:106-109.
  2. Luangprasert P, Jongkhajornpong P, Lekhanont K, et al. Delayed spontaneous resolution of a double anterior chamber following deep anterior lamellar keratoplasty. BMC Ophthalmol. 2024;24:553.
  3. Scorcia V, Giannaccare G, Pellegrini M, et al. Stromal peeling for deep anterior lamellar keratoplasty in a post-penetrating keratoplasty eye with hematocornea. Am J Ophthalmol Case Reports. 2023;29:101808.
  4. Lata S, Bari A, Agarwal T. Tectonic deep anterior lamellar keratoplasty in severe ocular chuna particle injury in a child. Cureus. 2023;15(7):e41712.
  5. Yokoyama K, Nakamura R, Otsuka T, et al. Deep anterior lamellar keratoplasty and peripheral lamellar keratoplasty for a case of severe peripheral ulcerative keratitis. Case Rep Ophthalmol. 2022;13:9-16.
  6. American Academy of Ophthalmology Cornea/External Disease Preferred Practice Pattern Panel. Corneal Ectasia PPP — 2024. Ophthalmology. 2024.

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