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角膜・外眼部疾患

帯状角膜変性

帯状角膜変性(Calcific Band Keratopathy: CBK)は、カルシウムハイドロキシアパタイトおよびリン酸塩・炭酸塩のカルシウム塩が上皮下、ボーマン層、前部実質に沈着する慢性の角膜変性疾患である1)。1948年にDixonにより初めて報告された1)。カルシウム以外の混合型物質の沈着を伴うこともあり、その場合はキレート剤への反応が不良となる1)

進行は一般に緩徐である。混濁が角膜周辺部にとどまっている間は無症状であるが、瞳孔領に及ぶと視力障害を来す。上皮の不整やびらんによる疼痛・異物感も生じうる。

Q 帯状角膜変性の再発率はどの程度か?
A

EDTAキレーション療法後の再発率は約17.8%と報告されている1)。再発はぶどう膜炎や角膜ヘルペスなどの基礎疾患が持続する症例で高い1)。治療的レーザー角膜切除術による治療は表面の平滑化と涙液安定性の改善を通じて再発率を低減できる可能性がある1)

軽症では無症状である。進行して瞳孔領を覆うと視力障害と羞明を来す。上皮びらんによる疼痛や異物感を生じることもある4)。カルシウムの結晶による光の散乱がグレアの原因となる1)

混濁は水平方向(3時・9時方向)の角膜周辺部から始まる。角膜輪部との間には透明帯が存在する。次第に中央部に向かって進行し、灰白色の帯状混濁を形成する。混濁中にはスイスチーズ様の透明小穴が散在するが、これは角膜神経のボーマン層貫通部に相当する。

進行例では上皮欠損を伴うことがある。コンフォーカルマイクロスコープでは沈着物が厚い入道雲のように高輝度に観察される。AS-OCTでは150μm程度のカルシウム沈着による高反射シグナルが確認できる1)

眼局所の原因

慢性ぶどう膜炎:最も一般的な眼局所原因であり、持続的な眼内炎症がカルシウム沈着を促進する2)

緑内障:長期経過の緑内障に続発することがある2)

角膜実質炎:慢性の角膜炎症が基盤となる

シリコーンオイル注入硝子体手術後の長期シリコーンオイル留置が原因となりうる

角膜曝露兎眼などによる角膜の持続的乾燥が関与する

全身性の原因

高カルシウム血症:副甲状腺機能亢進症に伴うカルシウム代謝異常が代表的である

慢性腎不全:カルシウム-リン代謝異常による転移性石灰化が原因となる5)

職業性曝露:水銀蒸気やクロム酸カルシウム蒸気への曝露が報告されている1)

リン酸含有ステロイド点眼:長期使用により角膜にカルシウムが沈着することがある

カルシウムが沈着する正確な機序は不明であるが、組織pHの上昇と涙液蒸発の亢進が関与すると推察されている。ドライアイも増悪因子の一つである。慢性腎不全では血清カルシウム-リン積の上昇がみられ、輪部血管からの血流によりカルシウム塩が角膜上皮下に沈着する5)

帯状の灰白色混濁とスイスチーズ様所見、輪部との間の透明帯が特徴的な臨床所見であり、細隙灯顕微鏡検査で診断可能である4)。AS-OCTは沈着物の深さと厚さの評価に有用である1)角膜トポグラフィーは角膜形態の不整度(CMI)の定量評価に使用される1)

原因不明の帯状角膜変性では全身的な原因検索が重要である。

検査項目目的
血中Ca・P値高カルシウム血症の評価5)
腎機能(BUN・Cr)慢性腎不全の有無
ACE値サルコイドーシスの除外

Vogt’s limbal girdleは加齢に伴う角膜周辺部のカルシウム塩沈着であり、健常者でもみられる。スフェロイド変性(climatic droplet keratopathy)はヒアリン様物質の上皮下沈着であり、帯状角膜変性と形態は類似するが沈着物の性状が異なる。

Q 帯状角膜変性の確定にどのような検査が必要か?
A

多くの場合、細隙灯顕微鏡による典型的な臨床所見のみで診断は可能である。AS-OCTは沈着物の深さの評価に有用であり、治療法の選択に役立つ1)。コンフォーカルマイクロスコープでは沈着物が高輝度に観察される。原因疾患の検索として血中カルシウム・リン値、腎機能、ACE値などの血液検査を行う。

視力障害や自覚症状がない場合は経過観察が可能である4)。症状が出現した場合に積極的な治療介入を行う。

最も広く用いられる治療法である4)。角膜上皮を機械的に除去した後、EDTA溶液を綿棒に浸してカルシウム沈着部に塗布し、沈着物を掻爬する。従来のNa2EDTAは米国FDAの承認撤回後に入手困難かつ高価となった3)

K2EDTA(採血管由来)

特徴:ラベンダーキャップの採血管内壁のK2EDTAコーティングから調製する簡便な方法である3)

利点:安価(100本あたり36〜47ドル vs Na2EDTA平均117ドル)で入手容易である3)

有効性:Na2EDTAと同等のカルシウム除去効果が確認されている2)3)

安全性角膜内皮への悪影響は報告されていない2)3)

治療的レーザー角膜切除術/PRK(エキシマレーザー)

適応:EDTA無効例、深部沈着例、非石灰化物質の混在例1)

治療的レーザー角膜切除術の利点:深部のカルシウム除去と表面平滑化を同時に達成できる1)

PRK併用:トポグラフィーガイド下PRKにより不正乱視の矯正も可能である1)

注意点:術後約3Dの遠視化と十分な角膜厚が必要である

K2EDTA調製法濃度調製時間
方法1(5本移送法)65mg/mL3)189秒3)
方法2(1本振盪法)35mg/mL3)38秒3)
方法3(綿棒溶解法)52mg/mL3)83秒3)

方法3が濃度・調製時間・簡便性の最良のバランスを示し、推奨される3)。標準的なNa2EDTAの濃度は30〜40mg/mLであり、方法3はこれを上回る濃度を達成している3)

PRK+治療的レーザー角膜切除術併用例では水銀蒸気曝露によるCBK患者(63歳男性)で、EDTA無効後に右眼裸眼視力(UCVA)20/100→20/20、左眼20/200→20/63と著明な視力改善が得られた1)。角膜形態不整指数(CMI)も右眼15→3μm、左眼21→11μmと改善した1)

Q K2EDTAの採血管からの調製は安全か?
A

K2EDTAを採血管から抽出して帯状角膜変性の治療に使用する方法は、複数の報告で安全性と有効性が確認されている2)3)。角膜内皮への悪影響や遅延治癒は報告されていない3)白内障手術や角膜内皮移植との同時手術も安全に施行できる2)

6. 病態生理学・詳細な発症機序

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カルシウムハイドロキシアパタイトが角膜上皮基底膜、ボーマン層、前部実質に沈着する1)4)。沈着物には非結晶性のリン酸塩・炭酸塩やエラストイド変性コラーゲンなどの混合型物質を含む場合がある1)。混合型物質の存在がEDTAキレート剤への反応不良の原因となる1)

沈着が瞼裂に沿った帯状分布を示す理由として、涙液のpH上昇と蒸発亢進が関与すると考えられている。瞼裂部では涙液が大気に曝露されCO2が放出されるためpHが上昇し、カルシウム塩の溶解度が低下して沈着が促進される。

カルシウムが高度に沈着するとボーマン層が障害・断裂し、角膜上皮の接着異常も生じる。この機序が再発性びらんの原因となる。慢性腎不全における帯状角膜変性は転移性石灰化と慢性炎症の双方が関与し、輪部血管からの血流によりカルシウム塩が上皮下に沈着する5)

Q 帯状角膜変性の沈着は角膜のどの深さまで及ぶか?
A

典型的には上皮下からボーマン層にとどまる。しかし進行例では前部実質にまで及ぶことがある1)。AS-OCTで約150μmの沈着が確認された報告がある1)。深部沈着例ではEDTAキレーションのみでは不十分であり、治療的レーザー角膜切除術などのレーザー治療が必要となる1)

トポグラフィーガイド下経上皮PRKと治療的レーザー角膜切除術の併用は、EDTA無効例に対する新たな治療選択肢として報告されている1)。レイトレーシングアルゴリズムにより前眼部・後眼部の収差を統合的に補正し、実質消費量を最小化しつつ視覚の質を最適化できる1)。術後6か月の経過で角膜透明性と視力改善が維持されている1)

K2EDTA採血管からの調製法の簡素化も進んでおり、より迅速かつ安価に治療が可能となっている3)。今後はEDTA、治療的レーザー角膜切除術、羊膜移植を組み合わせた個別化治療の最適化や、再発予防戦略の確立が課題である。


  1. Passidomo F, Addabbo G, Pignatelli F, Niro A, Buonamassa R. Combined Topography-Guided Trans-Epithelial PRK and PTK for Treatment of Calcific Band Keratopathy Unresponsive to EDTA Chelation Therapy. Int Med Case Rep J. 2025;18:187-194.
  2. Abusayf MM, Tobaigy MF. Blood tubes potassium ethylenediaminetetraacetic acid in comparison to calcium disodium ethylenediaminetetraacetic acid and disodium ethylenediaminetetraacetic acid for calcific band keratopathy. Saudi J Ophthalmol. 2025;39:407-409.
  3. Narvaez J, Chang M, Ing J, De Chance D, Narvaez JJ. Simplified, Readily Available Method for the Treatment of Band Keratopathy With Ethylenediaminetetraacetic Acid. Cornea. 2021;40:1360-1362.
  4. American Academy of Ophthalmology Corneal/External Disease PPP Panel. Corneal Edema and Opacification PPP. 2024.
  5. Markoulli M, Ahmad S, Engel L, et al. TFOS Lifestyle: Impact of the natural, built, and social environments on the ocular surface. Ocul Surf. 2023;29:226-271.

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