コンテンツにスキップ
角膜・外眼部疾患

アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜疾患(allergic conjunctival disease; ACD)は、I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で、何らかの自他覚症状を伴うものと定義される。

分類は、結膜増殖性変化の有無・アトピー性皮膚炎の合併・機械的刺激の有無によって行われる。

  • 結膜増殖性変化なし:季節性アレルギー性結膜炎(SAC)、通年性アレルギー性結膜炎(PAC)
  • 結膜増殖性変化あり:春季カタル(vernal keratoconjunctivitis; VKC)、アトピー性角結膜炎(atopic keratoconjunctivitis; AKC)
  • 機械的刺激による:巨大乳頭結膜炎(giant papillary conjunctivitis; GPC)

季節性ACの中でも花粉によるものを花粉性結膜炎と呼ぶ。代表的なものがスギ花粉性結膜炎である。

疫学については、米国NHANES調査において20,010人中6.4%が眼症状のみ、29.7%が眼+鼻症状を有し、人口の約40%が過去12カ月間に1回以上の眼症状を経験したと報告されている。春季カタルは5〜20歳の男児に多く、11〜13歳で発症ピークを迎え、男性は女性の約2倍の頻度で発症する。温暖乾燥気候で多く、冬季に軽減する傾向がある。アトピー性角結膜炎は10代後半〜50代に多く、患者の95%にアトピー性皮膚炎、87%に喘息の合併が認められる。

Q アレルギー性結膜炎の5つの型の違いは何ですか?
A

季節性/通年性アレルギー性結膜炎は結膜増殖性変化がなく比較的軽症で、主に環境アレルゲンへの反応である。春季カタル/アトピー性角結膜炎は巨大乳頭など増殖性変化を伴い、角膜合併症のリスクがある重症型である。巨大乳頭結膜炎はアレルギーよりも機械的刺激が主因で、CL・露出縫合糸・義眼が引き金となる。分類基準は増殖性変化の有無、アトピー素因の合併、機械的刺激の関与である。

アレルギー性結膜炎でみられる上眼瞼結膜の乳頭
アレルギー性結膜炎でみられる上眼瞼結膜の乳頭
Maffar NH, Mohamad SR, Tan YL, et al. Managing Bilateral Vernal Keratoconjunctivitis, Keratoconus, and Steroid-Induced Glaucoma: A Threefold Struggle. Cureus. 2025 Jan;17(1):e77901. Figure 1. PMCID: PMC11847309. License: CC BY.
上眼瞼結膜を翻転すると、両眼の上眼瞼結膜に大きな乳頭が密集して見える。重症アレルギー性結膜炎でみられる乳頭増殖と結膜肥厚を示している。
  • 掻痒感(かゆみ):ACDの最も特徴的な症状。マスト細胞から遊離されたヒスタミンがC線維を刺激して発生する。
  • 流涙:炎症による反射性涙液分泌亢進。
  • 異物感角膜上皮障害や多数の結膜乳頭が瞬目時に角膜に接することで生じる。
  • 眼脂:リンパ球・好酸球が主体のため、ほぼ純粋な線維素性眼脂となる。
  • 視力低下:春季カタル/アトピー性角結膜炎の重症例で角膜病変を伴う場合に生じる。
  • 眼痛:重症春季カタルでは掻痒感よりも眼痛を訴えることが多い。
  • 巨大乳頭結膜炎特有の訴え:かゆみや眼脂は少なく、異物感・レンズのずれやすさ・汚れやすさを主訴とすることが多い。

季節性/通年性アレルギー性結膜炎では、両眼性の結膜充血・結膜浮腫(chemosis)・水様性〜軽度粘液性分泌物が認められる。結膜充血は結膜円蓋部で最も強く、角膜輪部に近づくにつれ弱くなる表層分布を示し、鮮紅色で血管が明瞭である。

重症型(春季カタル・アトピー性角結膜炎・巨大乳頭結膜炎)にはそれぞれに特徴的な所見がある。

春季カタル眼瞼型

石垣状巨大乳頭:上眼瞼結膜に硬い石垣状の乳頭増殖を形成する。

粘液性眼脂:糸状・粘液性の眼脂を多量に伴う。

角膜合併症:春季プラーク、シールド潰瘍、角膜新生血管・瘢痕を生じることがある。

春季カタル輪部型

輪部堤防状隆起:角膜輪部に堤防状のゼラチン様隆起を形成する。

トランタス斑:輪部にある白色点状の上皮性沈着物。好酸球の集積による。

アトピー性角結膜炎

湿疹性眼瞼炎:眼瞼皮膚の湿疹性変化。眼瞼肥厚・瘢痕化を伴い、重症例では睫毛消失。

乳頭増殖:上または下眼瞼結膜に認められる。

重症合併症:結膜瘢痕、円錐角膜、前嚢下/後嚢下白内障

巨大乳頭結膜炎

上眼瞼結膜の乳頭増殖:円形・境界鮮明・表面平滑で融合しない。隆起丈が低く春季カタルと鑑別される。

角膜合併症はほぼなし:機械的刺激が主因であり、炎症は軽度にとどまることが多い。

各型のアレルギー性結膜疾患は、原因アレルゲンと背景リスク因子が異なる。各型のリスク要因をまとめる。

主なリスク要因季節性
季節性アレルギー性結膜炎花粉(イネ科・雑草)あり
通年性アレルギー性結膜炎ダニ・カビ・動物のフケなし
春季カタル高温乾燥環境あり(春〜夏)
アトピー性角結膜炎アトピー素因・家族歴なし
巨大乳頭結膜炎CL・義眼・縫合糸なし

巨大乳頭結膜炎については、ソフトCL装用(交換頻度低い・長時間装用・衛生管理不良)、露出縫合糸、義眼が主な誘因となる。真のアレルギーではなく反復的な機械的刺激による反応と考えられており、IgE陽性率は高くない。アトピー性角結膜炎では眼こすりの繰り返しによる機械的外傷もリスクとなり、アトピー性皮膚炎患者に円錐角膜が多い原因の一つとする説もある。

Q 花粉症の時期に目のかゆみを軽くするためにできることはありますか?
A

花粉対策メガネの使用、人工涙液による洗眼(水道水は避ける)、帰宅時のシャワーが基本的な対策である。また花粉飛散2週間前から抗アレルギー点眼薬(初期療法)を開始することで、約30%の患者で花粉症症状の出現が抑えられ、症状発現の遅延・期間短縮が期待できる。

診断は、病歴・自覚症状・臨床所見・身体診察の総合評価に基づく。

  • 好酸球検査:結膜擦過塗抹標本をハンセル染色し、光学顕微鏡で好酸球の有無を判定する。I型アレルギーによる結膜炎の確定診断に有用である。
  • 涙液中IgE検査:局所のI型アレルギー反応を証明する。
  • 血清抗原特異的IgE検査:全身のアレルギー素因を確認し、原因抗原を同定する。
  • 皮膚テスト(プリックテスト/スクラッチテスト):膨疹径3mm以上で陽性。H1拮抗薬・三環系抗うつ薬の影響に注意が必要である。

春季カタルと巨大乳頭結膜炎の鑑別

Section titled “春季カタルと巨大乳頭結膜炎の鑑別”

春季カタルと巨大乳頭結膜炎はともに上眼瞼結膜の乳頭増殖を呈するため、細隙灯顕微鏡での鑑別が重要となる。巨大乳頭結膜炎の乳頭は円形・境界鮮明・表面平滑で融合せず、隆起丈が低い。角膜合併症はほぼ認められない。春季カタルの石垣状巨大乳頭と形態的に明確に異なる(「臨床所見」の項参照)。

感染性結膜炎(細菌性・ウイルス性)、眼瞼炎、ドライアイ、中毒性結膜炎、眼酒皶(ocular rosacea)、角膜炎、上強膜炎/強膜炎などとの鑑別が必要である。

季節性/通年性アレルギー性結膜炎

Section titled “季節性/通年性アレルギー性結膜炎”

第一選択:抗アレルギー点眼薬

抗アレルギー点眼薬は、メディエーター遊離抑制薬とヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1拮抗薬)の2系統に大別される。H1拮抗薬はメディエーター遊離抑制薬よりも早期に掻痒感を改善する。代表的な薬剤を以下に示す。

薬剤名商品名点眼回数
オロパタジンパタノール1日4回
エピナスチンアレジオン/LX1日4回/2回
ケトチフェンザジテン1日4回
ペミロラストKアレギサール1日2回
クロモグリク酸Naインタール1日4回

エピナスチン(アレジオン)は塩化ベンザルコニウムを含有せず、CL使用者に有利である。治療効果はオロパタジン(パタノール)とほぼ同等とされる。

初期療法

花粉飛散開始の2週間前からメディエーター遊離抑制薬の点眼を開始する方法を初期療法と呼ぶ。約30%の患者で花粉症症状の出現が抑えられ、症状発現の遅延・期間短縮が期待できる。

重症例:ステロイド点眼薬の追加

抗アレルギー点眼薬のみで効果不十分な場合はステロイド点眼薬を追加する。基本は0.1%フルオロメトロン(フルメトロン)1日4回で、より重症な例には0.1%ベタメタゾンを使用する。ステロイドは第一選択にすべきでなく、短期間の処方とする。継続処方時は定期的な眼圧測定が必須である。

経口抗ヒスタミン薬

鼻炎など全身症状を伴う場合は経口抗ヒスタミン薬を併用する。第2世代は非鎮静性で受容体選択性が高い。

人工涙液

人工涙液には花粉のハッチアウト(「病態生理学」の項参照)抑制効果がある。ウェルウォッシュアイはソフトサンティアよりもハッチアウト抑制効果が大きいとされる。

春季カタルの基本は抗アレルギー点眼薬と免疫抑制点眼薬の併用療法である。治療フローチャートは、抗アレルギー点眼薬から開始し、効果不十分であれば免疫抑制点眼薬を追加、さらにステロイド点眼薬を追加する。改善時は逆順に減薬する。

免疫抑制点眼薬は現在のところ春季カタルにのみ保険適用がある。

シクロスポリン

商品名:パピロックミニ

用法:1日3回点眼

特性:輪部型春季カタルに効果的。効果発現に時間がかかる。角膜沈着の副作用あり。

費用目安:3割負担で約2,670円/2週間分(42本)

タクロリムス

商品名:タリムス

用法:1日2回点眼

特性:アトピー性皮膚炎合併型に効果的。比較的即効性あり。ステロイドからの直接切り替えが可能。

費用目安:3割負担で約2,940円/月

両薬剤とも点眼時に刺激感・熱感を伴うことがある。感染症(特に単純ヘルペスウイルス感染)への注意が必要である。シクロスポリン点眼による治療でステロイド減量・中止が可能となる症例が多い。

プロアクティブ療法:寛解後にタクロリムス点眼の回数を漸減(1日2回→1回→隔日)し、再燃を予防する維持療法として用いられる。

局所療法が無効な場合は、ステロイド内服、ステロイド瞼板下注射、巨大乳頭の手術切除を検討する。

春季カタルに準じた治療を行う。タクロリムス点眼は合併するアトピー性皮膚炎にも有用である。眼瞼皮膚病変に対してはステロイド軟膏(プレドニン眼軟膏)やタクロリムス軟膏を使用し、皮膚科との連携が必須となる。0.1%フルオロメトロンとプレドニゾン眼軟膏による1週間の集中治療で改善する例もある。

原因除去が最重要であり、CL中止またはワンデータイプへの変更、縫合糸除去を行う。薬物療法はアレルギー性結膜炎に準じ、0.1%フルオロメトロンを1日4回、1〜2週間点眼する。

症状が明らかな時期はCL使用を中止する。改善後は1日使い捨てタイプを選択する。CL装用前後に抗アレルギー点眼薬を点眼し、装用中は防腐剤無添加の人工涙液で洗眼する。CL上からの点眼は防腐剤のCLへの吸着とCL変形のリスクがあるため注意を要する。

妊娠初期(4〜14週未満)はH1拮抗薬の使用を勧めていない(動物実験での催奇形性懸念によるもので、ヒトでの証明はない)。抗アレルギー点眼薬は血中移行が微量であり、全身への影響は少ないとされる。

Q 抗アレルギー点眼薬にはどのような種類がありますか?
A

メディエーター遊離抑制薬(クロモグリク酸Na、ペミロラストKなど6種)と、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(オロパタジン、エピナスチンなど4種)の2系統がある。掻痒感に対してはH1拮抗薬が即効性に優れる。初期療法(花粉飛散前からの予防的点眼)にはメディエーター遊離抑制薬が用いられる。

Q 春季カタルではなぜ免疫抑制点眼薬が必要ですか?
A

春季カタルではI型アレルギーに加え、Th2細胞が病態の中心的な役割を担う。T細胞の機能を制御できない通常の抗アレルギー点眼薬だけではコントロール不能な症例がある。シクロスポリンとタクロリムスはT細胞の活性化を抑制し、好酸球浸潤や増殖性変化を抑える効果を持つ。

6. 病態生理学・詳細な発症機序

Section titled “6. 病態生理学・詳細な発症機序”

I型アレルギーの即時相と遅発相

Section titled “I型アレルギーの即時相と遅発相”

アレルギー性結膜炎の基本的な発症機序はI型(即時型)アレルギーである。

即時相(抗原曝露後約15分以内):アレルゲンが結膜マスト細胞表面のIgE抗体に結合・架橋すると、マスト細胞が脱顆粒を起こし、ヒスタミン・トリプターゼ・ロイコトリエン・プロスタグランジンなどの化学伝達物質が放出される1)。臨床的には、眼表面・眼瞼の掻痒感、羞明、水様分泌物、結膜充血、結膜浮腫、乳頭反応として顕在化する1)

遅発相(数時間後):サイトカインおよび接着分子が血管に作用し、好中球・リンパ球・好塩基球・好酸球の組織内浸潤が生じる1)。好酸球の放出する組織傷害性蛋白(主要塩基性蛋白など)が角膜上皮を障害し、点状表層角膜症を引き起こす。遅発相には鼻閉・結膜浮腫・角膜の傷が生じ、抗アレルギー点眼薬だけでは効果が不十分なことが多い。

スギ花粉は粒子径が大きく結膜上皮を直接通過できない。しかし涙液の水分を吸収した花粉が破裂(ハッチアウト)すると、抗原蛋白質が溶出して結膜上皮を通過し、深部のマスト細胞に到達してアレルギー反応を開始させる。人工涙液による花粉のハッチアウト抑制が予防に役立つのはこのためである。

春季カタル/アトピー性角結膜炎の特殊病態

Section titled “春季カタル/アトピー性角結膜炎の特殊病態”

軽症の季節性/通年性アレルギー性結膜炎と異なり、春季カタルおよびアトピー性角結膜炎ではI型アレルギーにTh2細胞が重要な役割を担う。動物モデルでは、I型アレルギー単独では強い結膜好酸球浸潤は誘導されず、Th2細胞の関与によって初めて高度な好酸球浸潤が誘導された。巨大乳頭の病理組織では、好酸球浸潤・線維芽細胞増生・細胞外マトリックス沈着・T細胞浸潤が認められる。涙液中の好酸球数は角膜障害の重症化指標として関連性が示されている。

巨大乳頭結膜炎はI型アレルギーとは異なり、CLやその沈着物、露出縫合糸などによる反復的な機械的刺激が主因である。IgE陽性率は高くなく、好酸球浸潤も軽度にとどまる。


アレルギー性結膜炎の研究は、従来のヒスタミン中心の病態から、Th2細胞やIL-4などのサイトカインの役割へとシフトしている。特に春季カタルおよびアトピー性角結膜炎ではT細胞制御が重要であり、タクロリムスやシクロスポリンなどの免疫抑制点眼薬の有効性がこれを支持している。

将来的には、より選択的にTh2反応を抑える生物学的製剤(バイオ製剤)の開発、あるいはプロトンポンプ阻害薬など既知薬剤の新たな適応がもたらされる可能性がある。また、好酸球の活性化経路の詳細な解明により、角膜合併症の予防戦略がさらに洗練されることが期待される。

花粉のハッチアウト抑制に関する研究も進行中であり、より効果的な予防法の開発は、重症化の防止につながるとともに、患者のQOL向上に直結する。

  1. Stapleton F, et al. The ocular surface and the ocular mucosa in allergy. Surv Ophthalmol. 2023. (1-s2.0-S1542012423000290-main.pdf)

記事の全文をコピーして、お好みのAIに貼り付けて質問できます